博麗 悠里SS1 のバックアップの現在との差分(No.1)


SS本文

「ふぅ……退屈ね」
 私は境内を掃きながらため息を一つ吐く。
 つい先日に幼馴染の九朗が九得烏に襲われて以来、これといって何も起ってはいない。本来であれば、それは平和な日常で好ましいのだろうが、私にとってはただ退屈なだけだった。
「それにしても……、この間の九得烏は確かにその名に恥じないだけの存在だったけれど、今まであれほどの妖怪に合ったことはないわね。……そうね。思えば今まで相手にしてきた妖怪は低位のものばかりだった。信仰を失った神々が力を失くすのはわかるけど、妖怪も力を失うのかしら?


……一度調べてみる必要がありそうね」

私は境内の掃除をそこそこに、神社の裏の倉庫に足を向かわせた。

私は、倉庫の中で様々な書物を漁っていたが、ふと一冊の手記が目に入った。著者は数代前の祖先らしい。とりあえず、私はその手記に目を通した。そこには、私の知りたかった答えはなかったが、代わりにとても興味深いことが載っていた。

なんでも、博麗大結界と言う結界一枚挟んだ先に、妖怪と一部の人間が住んでいる場所「幻想郷」と言う場所があるということだった。さらに、露木の一族はその結界を張る際に幻想郷の外を見守るという任を渡された博麗の血族だということ。他にも、様々なことが記載されていた。

 ……一度調べてみる必要がありそうね」

 私は境内の掃除をそこそこに、神社の裏の倉庫に足を向かわせた。

 私は、倉庫の中で様々な書物を漁っていたが、ふと一冊の手記が目に入った。著者は数代前の祖先らしい。とりあえず、私はその手記に目を通した。そこには、私の知りたかった答えはなかったが、代わりにとても興味深いことが載っていた。

 なんでも、博麗大結界と言う結界一枚挟んだ先に、妖怪と一部の人間が住んでいる場所「幻想郷」と言う場所があるということだった。さらに、露木の一族はその結界を張る際に幻想郷の外を見守るという任を渡された博麗の血族だということ。他にも、様々なことが記載されていた。
「幻想郷……面白そうね。それと、その幻想郷の中を見守り、その結界を支える博麗の巫女。興味が出るわね」
 私は即座に準備することにした。手記を片手に自分の部屋まで戻り、携帯で九朗に遠出の準備をしてこっちに来るように連絡した。独鈷鈴、護符、後は適当に使えそうな武器を巫女服のポケットに入れておき、着替えを数着、後はカロリーメイトとライト、他にも使えそうなのを適当にかばんに入れておく。そして、幾重にも呪布で包まれている木箱の封を解き、中から一本の刀を取り出す。
「準備は……こんなものね。後は九朗から連絡が来るのを待つだけね」
 そう思った矢先に携帯が震えた。表示を見ると九朗からだった。私は携帯に耳をあてがう。
「今どこにいるの?」
『今、境内についたところだ。で? お前の部屋まで行くのか?』
「今からそっちに行くわ。ちょっと待っていて」
『ああ、わかった』
 携帯を切り、私は手荷物を持って境内へと向かった。
 境内には、黒の学ランにマントという怪しげな恰好をした九朗とその肩の上に一羽のカラスが乗っていた。
「ん? ああ、来たか露木。で? いきなり呼び出して何用だ?」
「それよりもその格好は何よ。コスプレでも始めたの?」
「これか? 壱余(ひとよ)に渡された。これならある程度の霊撃は防げるらしくてな」
 壱余とは、この間の九得烏の名である。まぁそれは置いといて本題に入る。
「幻想郷に行くわよ」
「は? 幻想郷? どこだよ?」
「何っ!? 幻想郷じゃと!?」
 九朗は疑問を返したが、烏は勢いよく狼狽した。それで確信する。
「予想通り知ってたわね烏。ちょうどいいから博麗神社の位置も教えなさい」
「おいおい露木。まず幻想郷って何なんだ?」
「後で説明するわ。それよりも烏、貴女知ってるのでしょう?」
「ぬ、ぬぅ……。確かに知ってはおるが、あそこに何用じゃ?」
「興味があるのよ。幻想郷と博麗の巫女に」
 烏はしばらく思案していたが、やがて諦める。
「仕方があるまい。主の事じゃから語らんかったら襲ってくるじゃろうしの。しかし、知っておろうの? あそこには結界があるということは」
「勿論よ」
「どうするんだ?」
 九朗が問うてくる。だから私はきっぱりと答える。
「当然…………破るわ」
「ちょっと待てい」
 すぐさま九朗が突っ込みに入る。私は別にボケたつもりはないけれど、日に日に突っ込みが速くなっていくわね。もしかしたら芸人の素質があるのかも。
「失敬な事を言うな」
「地の文にまで突っ込むのね。まぁともかく、別に完全に破壊するわけじゃなくて、ちょっとした綻びをつくってそこを突くだけよ。せいぜい人が二人くらい通れる穴をあけるだけよ」
 そこまで言うと、九朗も納得した。ここにいる者が全員納得したのを見届けてから私は言う。
「じゃあ、今から行くわよ。烏は博麗神社までの道案内よろしくね」
 今度は反対の声も突っ込みもなかった。


 出発してから数日経った日の夜。私たちはとある山奥の寂れた神社の前にいた。
「ここが博麗神社なのね?」
「そうじゃ。ここはもう人がこんようになってから久しいからの。そして、ここが境界面じゃ」
「ちなみに、結局聞かされてなかったが、幻想郷っていったいどんなところなんだ?」
「妖怪が沢山いる所よ」
「妾よりも強い妖怪がおるところじゃな。ふむ、下手をすると九朗は死んでしまうかも知れんの」
「……ちょっと待て露木。これはどういうことだ?」
「別に、私の目の届く範囲だったら今まで通り私が守ってあげるわよ。全く、九朗は私がいないと本当に駄目ね」
「……もういい」
 九朗が何やらいじけているような気がしたが無視しておいて、私は境界面に干渉し、結界の一部を抉じ開けた。
「それじゃあ行くわよ」
「ああ」
 私たちは結界の穴を越える。すると、そこにあったのは森だった。
「森……だな」
「そうね」
 手記によれば、博麗神社は幻想郷に属していないため、博麗神社から直接結界を抜ければ、そのまま幻想郷の博麗神社につけると思っていたのだが、どうも当てが外れたらしい。
「ぬっ! 来るぞ!」
 烏が虚空を見て叫ぶ。次の瞬間、虚空に一本の線が走り、そこから派手な服を着た女が現れる。
「直接結界を破り、境界面を渡るなんて珍しいわね。いったい何者かしら?」
「貴女こそ誰よ? 見たところ怖気がするほどの妖怪だっていうことはわかるけれど?」
「あやつは境界の大妖怪、八雲紫じゃ。考えてみれば、このような方法で来れば眼をつけられるのは当然の事じゃった。迂闊じゃ」
「あら? 私の事を知っているのね。それに……、面白いわね。露木の血族が幻想郷に何のようなのかしら?」
「……そっちこそ、私の事を知っているみたいじゃない。そう言えば、初期に書いてあったわね。大結界を作る際に境界を操る大妖怪が手を貸したとか。
 まぁいいわ。私が幻想郷に来た理由は明白よ。幻想郷と、博麗の巫女に興味があったからよ。邪魔をするなら容赦はしないわ」
「無理じゃ!! 主が強いのは妾も知ってはおるが、あやつは桁違いじゃ。あやつの境界を操る能力には防御法も弱点も存在せぬのじゃ! あやつの知覚範囲内であれば、どこにでも出来る境界から弾幕が張られ、こちらの弾幕は境界に阻まれる! 一体どうやって倒すつもりじゃ!?」
 烏が大声で捲し立てる。ん? 私は烏の言葉に違和感を感じた。と言うかあまり耳にしないような単語が並んでいたような……。そう思っていると、九朗が烏に対して問いかけた。
「壱余? さっきから弾幕って言ってるが何のことだ? 妖力を弾のようにして放つのは見たことがあるが、あれは牽制だろ? 基本的には接近戦ばかりだったし……」
 そうだ。九朗の言葉でわかった。弾幕って何よ弾幕って。確かに私も護符を避け場の無いように展開して放つことはあっても、別にそれがデフォじゃないのよ?
「あら? 貴女はスペルカードルールを知っているのね。もしくは、少なからずこの幻想郷にいた……と」
「そうなのか?」
 九朗が烏に問いかける。烏は渋々ながらに答える。
「そうじゃ。妾はここで敗れ、住処を失ったから異変の隙を突き、外の世界に逃げたのじゃ。妖怪拡張計画についても知っておったから、引っかからんように気を配りながらの」
「すまん。さっきから次々と新しい単語持ち出されて流石に困るが」
「そうね。でも今一番重要なのは、目の前にいるこの妖怪が私たちの邪魔をするか否かでしょ?」
 私は境界の大妖怪を見据える。どこにも隙が見当たらない。こうやって会話しているにも拘らず。恐らくはこれが自然なことなのだろう。別に私たちを警戒しているから隙がないわけじゃない。
「面倒ね。それで? ここに来た理由は告げたわよ? 後は貴女の反応次第でこっちの行動も決まるんだけれど?」
 私の言葉に境界の大妖怪が笑う。
「そうね。私の暇潰しに耐えれたら見逃してあげようかしら。境符「四重結界」」
 境界の大妖怪は一枚の札のようなものを取り出し言葉を紡いだ直後、私たちを囲う様に四つの結界が現れた。それぞれが各次元に対応し、恐らく四つが正しく重ねられれば、時の流れにも干渉出来るだろう。
「境界を操る。なるほど、結界は互いの境界を阻むものだから、扱えて当然。むしろ、私の知らない域まで扱うのでしょうね」
「んで? どうするんだ露木?」
 九朗がこっちを見て尋ねる。烏もこっちを見ている。
「わかりきってることを聞かないで。そんなの勿論……落して、破る」
 結界に対して通じるかどうかはわからないが、私は自身の異能――あらゆるものを落とす能力で結界を私より下位の存在に落とす。無事、結界にも通用したため、私は独鈷鈴で結界を砕く。
「その能力……そう、貴女が霊夢の対極なのね。いいわ、今回は見逃してあげましょう。ついでに博麗神社まで案内してあげるわ」
「……対極? それに霊夢って?」
「今代の博麗の巫女よ。対極と言うのは博麗の血族には稀に、正反対の能力を持つ者たちが生まれることがあるのよ」
「正反対……つまり」
「霊夢は空を飛ぶ能力よ。さて、立ち話はこれくらいにしていきましょうか」
 境界の大妖怪――八雲紫は虚空に線を一本引き、その境界に入り込んだ。
「……」
「……烏、道案内よろしくね」
「うむ、心得た」
 その後、すぐさま戻って来た紫を無視して、私たちは烏の案内の下博麗神社へと向かった。


「別に悪気があったわけじゃないわよ?」
「無意識でやった分なお悪いわよ」
 紫と会話しながら歩いてしばらく、ようやく博麗神社についた。
「随分と閑散としてるな。と言うかこんなところに参拝客なんて来るのか?」
「妖怪は来るわよ。主に宴会目的だけれど」
「それにしても、人の気配がないわね。博麗の巫女もいないんじゃないの?」
 私はそう言いながら神社に入る。そこには血まみれの女性が倒れていた。
「……なにこれ? 猟奇事件の現場かしら?」
 私はとりあえずボケてみた。
「霊夢? 霊夢っ!?」
 しかし、突っ込みはなく、紫は倒れている女性を抱き起した。ん? 今、霊夢って言ってたわね。
「うるさいわよ紫。と言うより揺らさないで、血が抜けるわ」
「貴女が博麗の巫女?」
 私はとりあえず疑問をぶつける。女性は首だけこっちに向けて、
「誰?」
 訊ねてきた。やむなく私は答える。
「私は露木悠里。外の巫女よ。後こっちが九朗で、そっちが烏よ」
 後ろで九朗と烏が文句を言ってたが無視しておく。
「外の? 紫、またアンタ面倒なことしたの?」
「私は何もしてないわよ。彼女達は自前で結界破ってきてたし」
「外の巫女はどうしてこんなにもアグレッシブなのばかりなのかしら?」
「他にもいるのね。外の巫女って。それよりも博麗の巫女、治療するから服脱がせるわよ?」
「霊夢でいいわよ。まぁ、御言葉には甘えさせてもらうけれど」
 私は霊夢の服を脱がせる。裂傷が激しく、一部骨まで届いている傷がある。いったい何と戦ったらこんな傷が出来るのだろうか?
「それで? 異変は解決できたみたいだけど随分な傷を受けてきたじゃない?」
「うるさいわね。まさかあんなのが異変を起こしてるなんて誰が予想できるのよ。おかげでこの体たらくだわ」
「とりあえず私は戻るとするわね。霊夢は無理をしないようにね」
 紫はそう言って境界を操りどこかに行く。九朗は気付いたら外の境内であさっての方向を見ていた。まぁ、ここで霊夢の裸を見てたら私がしばいてたわけだが、
「見たところしばらくは絶対安静にしなければならないようだけれど?」
「身体が動くんだったら、巫女として最低限の仕事はするわよ」
 どうやら霊夢は意外と頑固者らしい。
「絶対安静と言ったわよ。霊夢が動けない間は私が代わりに博麗の巫女としての仕事をこなすわ」
「いや、あんた博麗と関係ないじゃない。流石に無関係なのを勝手に――」
「私も博麗の血族だけど?」
 霊夢は目を丸くしていた。まぁ確かに、いきなり外から来たのが博麗の血族ですよ。と言ったら驚くかもしれないなと思った。まぁ、それはさておき、
「そう言う訳で、霊夢が傷を治している間は私に任せなさい。もとより興味のあったことだし、まぁちゃんとやるわよ」
 そういい、しばらくの間、私は博麗の巫女としての仕事を励んだ。境内の掃除、霊夢の知り合いに挨拶(弾幕ごっこ)、人里の守護者に事情説明、妖怪退治と様々なことをやった。


 そして、ある日。
「悠里、ちょっと話したいことがあるわ」
「どうしたの霊夢? こんな時間に」
 夜も更けたころ、私は霊夢に呼ばれ、寝室にいた。
「ここ最近の悠里の仕事ぶりを見てね。筋もいいようだし、次代の博麗の巫女にならないかしら?」
「突然どうしたの?」
「この怪我もあるし、ちょうどいいタイミングなのかもしれないと思ってね。それに元々私は博麗の巫女になりたくてなったわけじゃないし。
……それで、どうかしら?」
「じゃあ、お願いするわ」
 考えるまでもなかった。元々、興味があったし、霊夢の代わりに博麗の巫女の仕事をしているうちに、可能ならば続けていきたいと思っていた。
「それじゃあよろしくね。とりあえず、私はしばらく紅魔館に行ってくるから」
「じゃあ、レミリアによろしく言っといて」
 霊夢はそのまま紅魔館へと飛んでいった。実はもう普通に治ってるのではなかろうか?まぁ、ともかくひょんなことでなった博麗の巫女。明確に何をするのかは知らないが、それはおいおい知っていけばいいだろう。とりあえず、ここだと退屈はしなくて済みそうだ。
「じゃあ、とりあえず、手始めに博麗姓でも名乗ろうかしら。露木って幻想郷去る前に勝手につけた姓で、実際の姓は博麗らしいし」
 じゃあ、明日はその旨を全員に伝えることにしよう。後の事は後で考えればいい。とりあえず面倒事は後回しにして今日は眠ろう。来たるべきこれからの日々を過ごす体力を得るために……。


End.

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