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っぽい第四弾_二面ボス_REDMOON_SS の変更点


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■[[僕○第22回]]
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Stage2 流るる3つの黒風
 日が傾き始めたころ、小川を遡るように飛翔している二つの影があった。
「ところで先ほどからまっすぐ進んでいますが、何か当てでもあるんですか?」
 妖夢はわずかに前方を飛ぶ小町に対して問いかけた。
「ああ。これは神隠しって話だ。つまりは誰もいない場所に向かえばいいのさ」
「……それは、結局誰とも会わないのでは?」
「あたい達の目的は調査さ。何もないならそれに越したことはないさ」
 妖夢は少し考え、思ったことを口にする。
「もしかして、体よくさぼろうとかしてませんよね?」
「ぎくっ! そ、そんなことあるわけないだろう? 勿論こっち側に何かあるから来ているわけさ」
 妖夢はいぶかしげな眼で小町を見ていたが、小町は続ける。
「はたから考えれば、怪しいのは祭囃子の聞こえる方だ。だが、そんな状況だからこそ隠れるのにはうってつけな場所があるのさ。わかるか?」
「祭囃子の聞こえない……一見何もないような場所ですか?」
「そう言うことさ。あたいの勘ではこの先に何かあると思っている」
「なるほど……そう言うことだったんですか。疑ってすみませんでした」
「なぁに、気にする必要はないさ。実際これは勘だからね」
(まぁ、何事もないのが一番楽なんだがねぇ)
 本音を隠して適当な口八丁で妖夢を言いくるめ、川を遡る。道中妖精や妖怪が襲ってくるが二人がかりで何とかいなして進む。
「先ほどから妖精や妖怪の数が増えてきましたね」
「そうだな。ひょっとしたら当たりを引いたやも知れないな」
 小町は苦虫をかみつぶしたような顔をしたが妖夢は気付かずに妖精を倒していく。
「ちょいなぁ!! ――――ふぎゃっ!」
 突如疾風が起きたかと思うと、漆黒の影が妖夢に向かって突っ込んできていた。妖夢は咄嗟に楼観剣を引き抜き迎撃する。漆黒の影――背中に鎌と書かれた法被を着た長ズボンの少女はその一撃をもろに受け、数メートル先まで吹き飛んだ。
「何者ですか!?」
 妖夢の問いに答えるかのように少女は身を起こす。
「あいたたたぁ。まさか、こんなにもあっさりと止められるなんて……。でも、これで済むと思ったら大間違いだ! 喰らえっ!!」
 少女は弾幕を繰り出す。だが、それはとてもとても微弱な弾幕で、威力も密度も速度も有さないようなささやかな弾幕だった。
「何というか胡散臭いことこの上ないねぇ」
「全くです。罠かも知れませんので注意を。私が先行します」
 妖夢は宙を蹴り疾走する。弾幕の間を潜り抜け、少女へと一瞬で距離を詰める。
「妖怪が鍛えし楼観剣に、切れぬ物など……殆どないっ!!」
「はえっ?」
 少女が知覚するよりも早く、妖夢の斬撃が少女を斬り飛ばす。受けた衝撃をそのままに、少女は小川にその身を落とした。
「ぷはぁっ! つ、強い」
「お、お姉ちゃん大丈夫っ!? ひとまず逃げよう!」
「あ、ああ。治亥、ありがとう」
 少女は上流から駆け付けた治亥と呼ばれた少女に引っ張られて上流の方へと逃げだした。
「小町さん。追いますよ!」
「ん? 流石にあれは関係ないと思うが?」
「いいから追います!」
「やれやれ、真面目なのはいいことだが、思い込んだら一直線ってのは少し問題だねぇ。まぁ、本筋から離れるのは悪いことじゃあないか。あたいは楽できるし」
 逃げていった二人の少女を高速で追いかける妖夢を見ながら小町はゆっくりと追いかけ始めた。
 逃げる二人を追いながら立ちはだかる妖精を蹴散らし、幾度となく姿を見失いながらも川の源流にて、ついに二つの影を追い詰めることに成功した。
「ここまでです。もう逃げれませんよ」
「そうね。でも、人違いじゃないの? 貴女が追ってたのは、こんな鎌を持ってたかしら?」
 二人の少女が振り返る。背の小さい方は、先ほど助けに入った治亥と呼ばれたので間違いはなかったが、背の高い方は先ほどの少女ではなかった。どこか似たような雰囲気を纏ってはいるが、視線は鋭く、その手には身長を超す大鎌を持っていた。
「その鎌!? まさか死神ですか!?」
「いや、あれは違う。こいつらは恐らく――」
「ちょいなぁー!!」
 妖夢の疑問に小町が答えている最中、川の中から先ほどの少女が妖夢に接敵、足払いを掛けてくる。
「なっ!?」
 完璧に反応が遅れた。少女が放った足払いは妖夢の足を狩り――とったが、そこは空中、どこそこに体重を掛けているわけでもない為足が少し後方に押されただけで済み、妖夢は返し刃で少女を弾き飛ばした。
「ふぎゃん」
 少女は後方に控える二人の処間で弾かれる。その一部始終を見ていた鎌を持つ少女が一喝する。
「姉さんのこの――役立たず!! 折角隙まで作ってあげたのにこのざまなんて。それに、こんな面倒な相手を引っ張ってくるなんてね」
「ね、姉様。祓お姉ちゃんだって悪気があってやってるわけじゃないからそんなに言わないで上げて」
「そうよ。薙刃は固いんだから。って痛いっ!」
「姉さんは調子に乗らない。治亥、悪気がないから問題なの。悪気があったらしばけば終了。でも、無いから次はしないようにと説得する必要があるの。わかった?」
「うん。わかった」
「さて、こっちの話が終わったところで次はそっちね。姉さんが面倒したみたいだけど気にしないで……って言っても無理よね」
 薙刃と呼ばれた少女は妖夢たちを見てそう言う。
「小町さん。先ほどの続きですが、あれはいったい?」
「ああ。恐らく鼬さ。鎌鼬。風を操る3柱の悪神さ」
「神……ですか。一応倒して神隠しについて尋ねるとしましょう」
「まぁいいか。少しは身体を動かさないとなまるしね」
「そっちの話も済んだみたいね。まぁ、仕方がないから……蹴散らせてもらうわ!」
 薙刃が鎌を振り上げ襲ってくる。大ぶりに振るうことにより、完成の流れを産み、それを巧みに操る事により、大振りながらに隙のない連撃を生みだす。
「くっ! 中々速い……しかしっ!」
 それに対し妖夢は、楼観剣を左手に持ち替え、右手で白楼剣を引き抜き二刀を以て迎撃する。
「速く、鋭く、正確。随分腕が立つみたいね。だったら! 切符 『西国の風鎌』!!」
 薙刃はいったん距離を取り、大鎌を振るい抜くことによって幾重ものかまいたちを生み出す。そのうちの一つが川原の大岩を透過し、斜めに裁断した。
「それではこちらも行きます。人符『現世斬』」
 次の瞬間には、妖夢は薙刃の後方に佇んでいた。一拍の間の後、全てのかまいたちが絶たれ、薙刃も吹き飛ばされた。だが、すぐに体制を耐え直し、鎌を構える。
「思っていたよりも強いわね。そっちのは参加しないのかしら?」
 薙刃の言葉に小町は即座に答える。
「一対一の勝負に手出しをするほどあたいは野暮じゃないさ」
「そう? じゃあ、すぐに参加するということなのね。今から私達の三位一体の技を使う訳だから」
 小町のはただのサボリの言い訳だったのだが、まるでそれに合わせたかのように祓と呼ばれた少女と治亥が姿を出す。
「喰らいなさい。3柱の悪神が織りなすコンビネーションを。『かまいたちの夜』」
 祓が弾幕を張ると同時に薙刃が突っ込んでくる。妖夢は咄嗟に防御したものの、辺りを飛び交う弾幕が邪魔で思うように動けない。
「小町さん! すみませんが援護をお願いします!」
「あぁ〜。まぁ、自分で言ったことぐらいは守るとするかね」
 小町の支援も加わり、妖夢は薙刃に斬撃を決める。浅かったものの、右肩口を切り裂いたため、大鎌を振れなくなった……はずだった。
「治亥、傷の手当てを」
「うん。姉様」
 治亥の手に持つ壺から取り出した液体を傷口に当てると、驚くことに、見る見るうちに傷口がふさがってしまった。
「ああ。やっぱりそうだったか」
「何か知っているのですか?」
「3匹目の鎌鼬が持つ薬とは仙人の霊薬なのさ。これは、死者と呪い以外何でも直すといわれているものでね。非常に貴重なものだから、一昔前には鎌鼬の乱獲なんかもあったわけさ」
「じゃあ、あれを倒さない限りは」
「文字通りイタチごっこだね。まぁ、対応としてはこうさな」
 小町が手を前に伸ばし、そして引くと、そこには治亥が掴まれていた。
「えっ? 今何をやったんですか?」
「距離を操っただけさ。あたいとこのこの間の距離をないと同じ程度にすれば持ってくるのも容易いってわけさ」
 一拍の間を置き、薙刃たちも状況を理解した。
「って!? ええ!? お、お姉ちゃん助けて!!」
「貴様ら!! 治亥を離せっ!!」
 薙刃が憤怒の形相で接近し、鎌を振り下ろす。小町は片手で操る鎌で受け止めるが、さすがに片手では抑えきれずに少しずつ押され始める。また、祓が放つ弾幕も怒りで先ほどよりも威力が増してきている。
「小町さんっ! 大丈夫ですか!?」
「あたいは大丈夫だ。それよりも先に向こうのを蹴散らしてくれ。あたいはまだしばらくは――」
 小町の言葉は最後まで続かなかった。薙刃が突然鎌を手放し体制が崩れたところに、薙刃の両腕の手甲の仕込み刃で斬撃を入れられたからである。咄嗟に後ろに飛んだものの、避けきれず、左腕を浅く切られたと同時に治亥を奪い返されてしまった。
「大丈夫ですかっ!?」
「ああ、面目ないね。啖呵を切った直後にこの様とは」
「仕方がありません。多少消費が激しいですが」
「構わないさ。あたいが前を行く」
 小町が前、妖夢が後ろに立ち陣形を組む。薙刃たちは警戒し、防御陣を組む。だが、すぐにそれが無駄である事を知る。
「一気に決めます!」
「その気概さ!」
「「断界剣『閻王斬』!!」」
 薙刃たちがそれを認識するより早く決着がついた。3刀から繰り出された神速の一撃が、防御陣すらを越えて3人を戦闘不能にした。
「神隠し? 私達は知らないわよそんなの」
 気絶からいち早く目を覚ました薙刃は妖夢から事の推移を聞かされたが、返せる言葉はそんな物だけだった。ちなみに、妖夢と小町は治亥の薬で傷は完全にふさがっている。
「神だって聞きましたからもしかしたら……と」
「はぁ? それじゃあ、貴女のところでは付喪神も神隠しを行う訳? 私達の神って呼び名もそれみたいなものよ? ただの人間の畏怖なんだから」
「そうでしたか。何かここ最近で起こった変なことや、おかしなものなどでもいいんですが」
 薙刃はしばし熟考する。治亥や祓を交えて、姉妹会議を行うこと30分。
「ないわね。さっきの話的にはやっぱり祭囃子追った方がいいと思うわよ?」
「そうですね。では、小町さん行きますよ」
「ん? ああ。そうするとするか」
 妖夢と小町は3人と別れ、祭囃子のなる方へと飛び直すことにしたのだった。
go to next stage
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