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紅美瞬SS の変更点


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* SS本文 [#y65ff19c]
「またきたぜ。という訳でここを通してほしいわけだが」
そう言ってこの紅魔館の門にまるで知人の家に来たみたいな様子で来たのは魔法の森にすむ魔法使いの霧雨魔理沙である。
「いえ、今日ばかりはここを通すわけにはいきません!」
その魔法使いの前に立ちはだかるのは我らが紅魔館の門番長紅美鈴である。
「ん? どうしてだ? 私は霊夢と違ってお嬢様に用はないぜ? ただ図書館に少し用があるだけだ」
「その図書館のパチュリーさまから通すなと言われているのです! そういう訳なので今日は引き取ってください!」
「だったら力ずくで通してもらうだけだぜっ!」
「でしたら力ずくでお引き取り願うだけです!」
少女弾幕中
「まぁいつも通りの結果だったぜ。しかし本当にこんなのが門番で大丈夫なのか?」
そう言って霧雨魔理沙は奥の図書館に向かっていった。私はそれを見届けてから美鈴さんに近づき体を起こす。
「大丈夫ですか? 美鈴さん?」
「ああ、ありがとうございます美瞬さん。う〜ん……。相変わらずあの人たちは人間離れしてますねぇ。はぁ、またお嬢様に叱られてしまいます。ああ……、今回はパチェリーさまにも怒られてしまいます」
そう言いながら弾幕ごっこで負けた直後だとは思えないほど身軽に立ち上がると美鈴さんはそう言った。私はそんな彼女を見て常々の疑問を問いかけることにした。
「それにしても美鈴さんはどうして手を抜かられんですか? 美鈴さんが実力を出せば確実に勝てるとは言いませんが、あそこまで一方的にやられることはないはずです」
「魔理沙さんの手前ああ言いましたが、パチュリーさまは本心では魔理沙さんに会いたがっていらっしゃるようでしたし、本日は特に集中して行う実験はなかったはずです。ですから今日くらいは少し息抜きをしていただこうかと」
「なるほど……、そこまでは考えが至りませんでした。いらぬ配慮失礼しました」
「いえいえ。そんなにかしこまらないでください。それより他に何か言いたいことがあるようですね
~
彼女は私の表情を見てそう言った。
「流石に美鈴さんには隠し事はできないようですね。……はい。現在とある人物を筆頭に美鈴さんが門番長に相応しくないと思っている者たちがいるようです。確かに紅魔異変からしばらく博麗の巫女や霧雨の魔法使いが来るようになって突破されることも多くなりましたが……。
しかし、私は美鈴さんが門番長に相応しくないとは思いません! 私だと拾ってもらった恩などによって贔屓目で見てしまうかもしれませんが、ほかの多くの門番隊員もそう思っているはずです!!
そう、私こと紅美瞬(ほん めいしゅん)はかつて記憶を失ってさまよっていたところを美鈴さんに拾われたという経緯を持つ。私は人間なのだが美鈴さんが取り計らってくれたおかげで私は今も紅魔館で働くことができているのだ。
「え、ええと……さすがにそこまで言われると恥ずかしいですね。まぁ大丈夫ですよ。こういうことはなるようにしかなりませんから」
彼女は照れたように笑いながらそう言った。私はそんな彼女を見て「そうでしたらいいんですが……」と呟く。
「門番の仕事は、許可のないもの・通さないようにと厳命されたものを外内問わずに門から通さないことよ。そこに私情は持ち込むべきではないわ」
まるでタイミングを狙ってたかのように話題にした門番隊員がやってきた。漆黒のゴスロリ調の服を着た彼女の名はアバター・ソロモン。彼女は紅魔館が現れる以前の湖の周辺を縄張りにしていた悪魔らしく、レミリアお嬢様に敗北して以来紅魔館の門番として働いているものらしい。以前彼女と手合わせしたことがあったがその時は手も足も出ない状態で完敗してしまったほどの圧倒的な実力者である。
そして、彼女が先ほど言った美鈴さんが門番長に相応しくないと言っている者たちの筆頭である。
「紅美鈴。貴女にどれほどの実力があるのかは知らないわ。普段は手を抜いているのかもしれない。それ自体は別にかまわないわ。ただし、門番としての責を全うできないのであれば貴女は門番長にはふさわしくないわ」
アバターさんは冷徹なる瞳で美鈴さんを射抜きながらそう言った。そんな彼女の一方的な物言いに私はカッとなって言い返していた。
「ちょっと待ってくださいアバターさん。私はあなたの言を否定はしませんが、そのような一方的な物言いは許容できません。確かに美鈴さんは侵入者に合わせ力の出力を変え、追い返すだけしかしていませんが、結果としては博麗の巫女などの一部の者以外の侵入を許してはいません。
……ともあれば、あなたならば博麗の巫女も容易く追い返すことが可能だとでも? あのレミリアお嬢様に弾幕ごっこで勝利したことのある者たちに」
私は毅然とした態度で彼女を正面から見る。そんな私の様子に彼女はため息を一つ吐き、
「紅美瞬。貴女は人間的な考えをするのね。そうね……それならば力を示してほしいわね。私たちには妖怪と悪魔との違いはあれど、その根本的な部分は変わらない。他者を納得させるには、他者をひれ伏させるにはそれを――相手の信念を叩き潰すのみよ。紅美瞬。こちらは貴女達二人がかりでもかまわないわよ」
「問題ありません。あなたの言う信念同士のぶつかり合いでしたら一対一が相応しいでしょう」
「いい度胸ね。それでは決闘は深夜零時、場所は邪魔が入らないように湖でいいわね?」
「望むところです」
「ちょ、ちょっと……。何やら不吉な感じのが聞こえてたんですが?」
私たちの間で発生している剣呑な空気にヤバそうな何かを感じたのか、美鈴さんがおずおずと口を挟んできたが……、
「紅美鈴。すでに決闘は互いの間において受理されました。後はわたしたち悪魔のルールにのっとってどちらかが明確な敗北を得るまで反故にすることはできません。大丈夫ですよ。殺しはしません。ただ身の程を今一度再認識させるだけですよ」
アバターさんはそう言って図書館のほうに向かって行ってしまった。その後ろ姿を見ながら美鈴さんが困った顔で私を見た。
「全く……美瞬さんも無茶ばかりしないでください……」
「大丈夫です! 勝つことは恐らく無理でしょうが美鈴さんへの言は取り消してもらいます!!」
「いえ……、だからそうではなくて。私は別に気にしていませんから……」
「いいえっ!! 私が気にします!! ……あっ、つい熱くなってしまいました。すいません。でも、これは私の問題です。私に任せてください」
私がそう言うと、美鈴さんは諦めて「わかりました。でも無理だけはしないでくださいね」と言ってくれた。
さて、その後私は美鈴さんと別れてアバターさんとの決闘の対策を練ろうと紅魔館をさまよっていたが少々困っていた。
「う〜ん。深く考えたら私前回の手合わせのときにアバターさんに手も足も出ずに負けているんですよね」
そんな相手にどうやって勝てばいいんでしょう? もちろん私も何もせずに今まで過ごしてきたわけではありませんがそれは相手にも言えることでしょう。修行したら追いつけるというのはある意味では夢物語のようなものです。もちろんそれを理由にして修行しない人は強くならなくて当然ですが……。
「困りました。すごく困りました」
「どうしたんですか? 美瞬さんがここに来るのは珍しいですね?」
「えっ? 小悪魔さん? っていつの間に私は図書館まで……」
考えながら歩いていたらいつの間にか図書館の前まで来ていたらしかった。でもちょうどよかったので小悪魔さんに相談することにした。
「確かアバターさんはよくここに来ていたはずですよね?」
「はい。司書の仕事を手伝いいただけているのでその間に美鈴さんのところに行けるので感謝してます」
「……門番が司書の仕事をして、司書が門番の仕事を手伝うのは色々間違っているような気が……。まぁいいです。それよりもアバターさんと決闘することになったのですが何か対策とか弱点とか思いつきませんでしょうか?」
私がそう言うと小悪魔さんは困ったような顔をした。
「あの人と戦うんですか? 正直に言いますが緋蜂を開放しないと勝てる気がしませんよ私は」
「やっぱりそうですか。とはいえ、今回は無理に勝つ必要はないんです。彼女を納得させればいいんですから
「はい? 納得ですか? あの人と決闘なんでどうしてかと思ってたんですがやはり何か理由があったんですね?」
「はい。実は……」
私は事の事情を小悪魔さんに説明する。小悪魔さんはしっかりと最後まで話を聞き私のほうを向き、
「なるほど。事情はよくわかりました。私でよければできる限りの手伝いはしましょう。しかし、問題はどうするかですね。今から多少特訓したところでたかが知れています」
「はい。それで悩んでいたんです。とはいえ、私のアバターさんは管轄が違うからどういうスタイルをとっているのかよく知らないんです。過去に一度だけ手合わせしたことがありますがその時は手も足も出せずにやられてしまいましたし……」
「私自身はあの人と手合わせしたことはありませんが、狙撃銃で遠方の敵を撃っていましたね。って言われてもわかりませんよね。とはいってもどのように説明したらいいんでしょうか? あのですね。銃というのは……」
「ああいえっ! 銃がどんなのかはわかりますから大丈夫です!! そうですか。アバターさんは狙撃銃を使うんですか。でも、今回の決闘では使えませんね。確か狙撃銃ってそこそこの大きさがあって持って運ぶだけでも苦労するそうですし」
小悪魔さんが慌てて身ぶり手ぶりで銃について説明しようとしていたので思わず口を挟んでしまった。小悪魔さんは「なんで知っているのか?」というような顔をしていたが気にせずに続けた。
「はい。それで殆ど見敵必殺という感じでしたね。気配察知や機動予測が優れているんだと思います。うぅん、いっその事五行印でも刻みますか? あの人の属性がわからないから属性有意では刻めませんが」
「五行印って……小悪魔さんのですか?」
五行印とは小悪魔さんの「五行を操る能力」によって、五行に対応した四聖獣と中央の座からその属性を強化する印を刻むというものである。
「確かにそれはいい考えですが……、いいんでしょうか? 一応これは私の戦いなわけですし……」
「いえ、それは構わないと思いますよ? これはあくまでも護符みたいな感じなわけですから。そうですね。どうせですから五行全てを刻みましょう!」
「え? きゃぁぁあぁぁーー!!?」
その後、私は小悪魔さんに五行印全てを刻まれ、それが体に馴染んだのは11時40分を超えたころだった。
~
~
日は完全に没し、夜に生きる者の時間が近づくころ、湖には二つの影が佇んでいた。
「紅美瞬。来ましたか。予定よりも少々早いですが……始めますか?」
闇の中、漆黒のゴスロリ調の服を着ているアバター・ソロモンが決して逸らすことの許さない視線でこちらを射抜く。それに対し、私も毅然とした態度で
「構いませんよアバターさん。 そして、認めさせます」
アバターさんが構える。それに対し私も相手との間合いを測り、踏み込む地面を確認する。そして互いが動き出すその刹那――
「決闘ならば証人がいるんじゃないかしら?」
「レミリア様!? こんなところで何をしているんですか!?」
「レ、レミリアお嬢様!? い、いったいどうしてこのようなところに!?」
突然現れたレミリアお嬢様に私もアバターさんもひどく慌てふためいてしまう。
「アンタ達は主人を何だと思ってんのよ。まぁ最近は暇だから面白そうなものが視えたから見物しに来ただけだけどね。さぁ思う存分やりなさい」
「そ、そうは言われましても……」
「紅美瞬。こちらは構わないわよ。それとも貴女の覚悟はこの程度で折れるものだったのかしら?」
「!? そんなことはありません! 私は私の信念のためにもここで貴女を討ちます!!」
私はそういうと同時に大地を蹴って前方に跳躍する。アバターさんとの距離はそれほどない。この程度ならば後2歩で間合いまで入れる。だが――
「それを許すはずがないでしょう?」
彼女の周囲に魔法陣が複数展開され、そこから苦無弾がばら撒かれる。さらにそれに合わせるように彼女は複数本のレーザーを放つ。私は咄嗟にかわすものの、まるでそこに行くのがわかっているかのように放たれる追撃に少しずつ逃げ場を失っていく。
「くっ、このままでは詰められてしまう。だったら! 『五行印 逝流』!!『五行印 百虎』!!」
自らに刻まれた五行印を起動させる。速度と反応を強化し一瞬でほぼ詰み状態だった弾幕を潜り抜けて彼女に肉薄する。
「この距離なら!」
私は破山剣を鞘ごと振り被り彼女を薙ぐ。彼女は咄嗟に後方に飛ぶものの避けきれずに弾き飛ばされる。私はこの隙に無数の苦無弾とナイフを精製し体勢を立て直し切っていない彼女に向かって放つ。
ガキィン!!
「そういうことね。五行印を刻んでいたの。この程度の深度だとラプラスも完全ではないし私までの間に時間がかかる。不意打ちとしては最高だったわね。ただし惜しむべきはそれで止めを刺せなかったこと。どうせならば凄駆も開放すればよかったのに。もしくは破山剣を撃つか。だけど貴女は初手だからという理由でそれを行わなかった。残念ね。凄く残念。じゃあ次は私の番ね。来たれバアル。66の軍団を支配する大いなる王よ。我が存在を現世から失せよ! 『憑依 バアル』!!」
突如彼女の姿が消えうせる。それと同時に先ほどまで感じられていた彼女の気も感じ取れなくなる。
「姿を消した!? それならば先んじて『五行印 黄流』!!」
黄流の起動と同時に私は周囲に気を張り巡らせながら防御の型を取る。一発は敢えて受けよう。ただし、その一撃を受けた瞬間に反撃を取る構えである。
ガァン! ギィン!
私は自身に被弾する2発の弾を感知した。そしてそこに向かって数本のナイフを全力で投擲する。例え被弾しなくても、回避行動をとれば風の流れの変化で相手の位置がわかる。私が彼女の反応を待っていると、
「残念ね。そっちはブラフよ。吹き飛びなさい。ノヴァインパクト!!」
背後からの声に反応し振り返ろうとした瞬間、爆炎を纏った掌底が腹部にめり込み、次の瞬間には爆風に煽られ遠方に吹き飛ばされていた。
「銃に撃たれた瞬間に周囲の対する意識が散漫になったわ。予測警戒は大事。ただし、一点だけではなく他の警戒はしないとこうなるわよ紅美瞬」
彼女の進言を聞き私は確信した。この人は油断している。最初の一撃を与えた時と同じ状況にある。もし、今一度彼女の隙をつくことができれば……あるいは彼女を倒すこともできるかもしれない。チャンスは一度だけ、ならばとる手はおのずと絞られる。
「『五行印 凄駆』『五行印 厳武』」
これで自身に刻まれたすべての五行印は解放した。ただし、私は本家である小悪魔さんと違ってこの先にある緋蜂を解放することはできない。だから策謀を練る。どのような方法を使ってでも今一度彼女の裏をかく。私は踏み込む。そして、それと同時に破山剣の鞘を外す。
「そう。破山剣を使うつもりね。でもこの弾幕の中でどう出るつもり? 『憑依 マクスウェルの悪魔』」
彼女は複数の魔法陣と周囲の水を凍結させることによって精製した氷の弾幕を展開する。
「そんなもの、気にもしません!!」
だが、私はその弾幕の中を突っ切り彼女へと駆ける。幾重もの弾幕を受けながらも一歩を踏みしめ、彼女に向かって破山剣を放つ。
圧倒的なほどの衝撃が彼女を襲う。確実に決まったかに思えたが、
「残念。外れよ」
冷酷なほどに無慈悲な声が背後から聞こえる。五行印も限定的なものだったのでもう効果は失われている。もし、今先ほどのような一撃を受ければ私は倒れるだろう。ただし、手はもう打ってあった。
「貴女自身が間合いに入ってくるのを待っていました。貴女はなぜだがわかりませんが気配察知や機動予測がとても優れています。だからこっちから接近して仕掛けるわけにはいきませんでした。かといって、そちら側が接近するのは確実に攻撃を入れられる時か後方まで届く広範囲攻撃を行ったときだけ。どちらにしてもすぐに逃げられます。ですが、今回は逃がしません! 『武装結界 千本桜』!!」
私の周囲に展開していた約1000近い結界呪具が彼女と私を包む結界を精製する。
「この結界の中では弾幕を精製することはできません。そして、内部から出る方法は私が結界を破壊するか、私を倒すほかありません!」
「なるほど。結界呪具による結界精製のスペルですか。しかし、貴女が私に弾幕なしの通常戦闘で勝てるかしら?」
彼女が魔力を込めた右腕を構える。そして彼女がその腕を振り下ろした瞬間――私は自ら結界を砕く。
「隙を見せましたね! この一瞬。この一撃で決めます!! 『絶華 零式破山砲』!!!」
私は勝利を確信した。この位置、このタイミングならば例えスペルによる相殺がされたとしても十二分なダメージを与えることができるだろう。そこからの追撃の手を構成しながらもその拳を振りぬ――。
「来たれマルバス。36の軍団を従える総裁よ。虚実入り乱れた姿を我に課せよ。『憑依 マルバス』
~
私が拳を振りぬく直前。彼女の姿が歪んだかと思うや否や美鈴さんの姿が現れた。
「えっ!?」
私は思わず拳を逸らした。放たれた衝撃が湖に被弾し濃い水の霧を生み出したが私はそれに反応できなかった。
「貴女は甘いわね。そんなのでよく欺けると思ったものね。とりあえず、貴女は身の程をわきまえなさい。貴女は弱い。ほんのふとした事故のようなことでも死にかねないほどに脆弱。でも、もしそんなことで貴女が死んだらまず最初にだれが悲しむと思ってるの?」
私はその言葉にとても納得できる何かを感じた。言っているのが他ならぬ美鈴さんだからなのかもしれないが、その言葉はひどく納得できた。
「はい。ごめんなさい美鈴さん」
「ここまで行くと純真なのか単純なのかわかりませんね。とりあえずこれ以上の説教は本人にしてもらってください」
「はい?」
美鈴さんがそう言うと同時にその姿がぶれ、アバターさんの姿になる。そして同時に掌底を入れられて私の意識は昏倒した。
~
~
後日談1 美瞬がやられた直後(アバター視点)
「ずいぶんと気にかけてるじゃない」
「それはどういった冗談ですかレミリア様」
私は後ろで見ていたレミリア様に対しそう言う。
「わざわざそんなのまで用意して用意周到じゃない」
レミリア様は私に憑いている悪魔を見て言う。悪魔フォルネウス。ソロモンの72柱の1柱にして29の軍団を支配する公爵。それが持つ権能は信用付与。人世に紛れて過ごすのに重宝する悪魔だが、これでも使わないと恐らく紅美瞬は私の話など聞きはしなかっただろう。あくまで必要措置だ。他意などはない……はずである。
「レミリア様はご存じだったんですよね?」
「ん? そこの門番のこと? それならば当然だけど?」
「何故にお認めに?」
「ただの気まぐれよ。それに門番も無駄に頼み込んでたしね」
「そうですか……。それでは私はこれで。後、メイド長が捜されてますので神社にはいかないでくださいね」
「う〜。咲夜が……、今日は諦めるか〜」
「後、絶対に昔より減ってますよね。レミリア様のカリスマ」
私の言葉に反応しレミリア様が紅い瞳をこちらに向ける。
「この間の続きを今ここで行いたいの?」
「いえ、今日は疲れたので遠慮させてもらいます。第一ラプラス頼みの私ではレミリア様には勝てませんよ」
「よくもまぁ抜け抜けと言うわね。まぁ好きにしなさい」
「はい。それではレミリア様。良い夜を」
「退屈しないようにするわ」
そう言い、レミリア様は紅魔館に戻っていく。私は……少し話でもつけに行こうか。そう思い私も門に向って歩いて行った。
紅魔館の門には紅美鈴がいた。まぁラプラスで分かっていたことではあるが彼女は妖怪にしてはいろいろ心配性なところがある。問題はどっちを心配したかによるが。
「こんな夜遅くまでごくろうさまですね紅美鈴。それで? 貴女はどちらの心配をしていたんですか?」
「えっ? それはもちろん両方ですけど?」
紅美鈴は「何をあたりまえなことを?」というような顔でこっちを見ている。はぁ、これはやはり一度じっくり話す必要があるだろう。
「紅美鈴。話があります。少し顔を貸してください。門については普通に夜勤組を呼べばいいでしょう。本来ならば貴女は今勤務時間じゃないでしょうに」
私はそう言い紅美鈴を引っ張っていく。門番用宿舎から適当に夜勤担当を外に放り出し紅美鈴を自分の部屋に連れ込む。門番長である紅美鈴のほうが部屋は広いがこっちのほうが近い。棚からワインを取りグラスに注ぎ紅美鈴の前に置き話を始める。
「単刀直入に言いますが。紅美瞬のしつけはしっかりしてください。今回は相手が私でしたからよかったですが、あの性格ですといつ死んでもおかしくありませんよ」
「は、はい! 面目ありません」
「とりあえず先にいろいろ言い含めておきましたので後は貴女にお任せします。別に私は彼女自身が悪いとは言いません。しかし、自身の立場や周囲をもう少し確認・認識して行動しても遅くはないはずです。彼女はいろいろと先走りすぎなのです」
「ですがそこが彼女のいいところなんですから、そうそう強くは言えませんよ」
「わかっています。わかっていますとも。ですから今すぐどーしろという訳ではありません。ですが、あらかじめ対応を取っておかないといつ取り返しのつかないことになるかわからないと言っているのです」
「なんだかんだで彼女のことを心配しているんですよね」
「彼女も門番として同じ職場のものですから死なれると困るだけです」
「わかりました。彼女のことについては任せてください」
「頼みましたよ。紅美鈴。それでは私は外周の見回りのついでに紅美瞬を回収するとしますか」
「はい。お願いしますね」
「貴女の甘さは門番としては向いていませんが、私はそういうのは嫌いではありませんよ」
私は紅美鈴が何か言うよりも早く外に出た。紅美瞬を回収するのはもう少し後にしよう。ラプラスによれば私の顔は今ものすごい赤いらしい。こんな姿を見られた日にはどういう対応を取ればいいのかわからない。だがまぁ、昔ならばそんなことを考えることもなかった。ならばそんな風に考えられるようになったのはきっといいことなのだろう。
私はそう思いながら紅美瞬を回収しい向かうことにした。
~
いろいろ投げっぱなしのまま終わる。
~
~
~
fin

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