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* 本文 [#uf604c65]
■[[僕○第72回]]
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【登場人物】
・林田智子・・・天声大学文学部国文学科に通う大学生。周囲の評判は「真面目で清楚」だが、実態は腐女子。中学以来の親友二人と共に、同人サークル「ヴェルサイユの魔女」を結成、活動していたが、冬コミを目前に自殺する。PNはマリー。
・前田美緒・・・短大を卒業後、県内の地方銀行に勤める。智子同様腐女子。中学以来の親友二人と共に、同人サークル「ヴェルサイユの魔女」結成、活動している。PNはルイ。
・北条圭子・・・桜鈴大学文学部歴史学科に通う大学生。智子同様腐女子。中学以来の親友二人と共に同人サークル「ヴェルサイユの魔女」を結成、活動している。PNはカトレア。
・恵実・・・智子の友人。
・奈央・・・智子の友人。
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【ストーリー(SS?)】
ある地方都市の大学に在籍する林田智子は、レポートの提出期限を一週間後に控え、執筆に追われていた。
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周囲からは「真面目で清楚」と見られている智子には、大学では隠している顔があった。
実は、中学時代の同級生であり親友の前田美緒、北条圭子(共に20)と共に、サークル「ヴェルサイユの魔女」で活動する同人作家なのであった。
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時は十二月半ば。レポートの提出期限と共に、冬コミ新刊の締め切りが迫っていた。
昼は講義とレポートに追われ、帰れば原稿に没頭する。そんな生活が一週間ほど続いたある日のことだった。
その日、智子は体調不良を訴えて大学を休んだ。翌日には、何の連絡もなかった。さらに翌日、心配した友人の美恵が連絡してみたが、携帯にも自宅にも連絡がつかない。明日はレポートの提出期限。本当に大丈夫なのだろうか。
そして翌日。遂に智子は来なかった。美恵は、同じく友人の奈央を連れて教授の研究室を訪れ、「智子が体調不良で出てこない。連絡もつかない。」と説明し、智子のみ特別措置で三日間の締め切り延長を許された。
研究室を出た二人は、智子の住むマンションへ行ってみることにした。
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その頃、締め切りは明日だというのに一向に連絡がつかないことを不審に思った美緒と圭子も、智子の住むマンションへと向かっていた。
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智子の部屋の前に立った美恵はチャイムを鳴らした。しかし、反応はない。
「いやな予感がする。」最悪の場合も想定しながら、美恵と奈央は管理人室へと向かった。
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その頃、美緒と圭子もマンションに到着した。
管理人室の前を通ると、ふと中から「・・・号室の林田さんに連絡が・・・」という声が聞こえた。
は思わずエントランスの小窓を開けて聞いた。
「やっぱり、智子に何かあったんですか!?」
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管理人は四人を連れて智子の部屋へ向かい、マスターキーで玄関を開け、中へと踏み込んだ。
荒らされた様子はない。だが、最悪の光景があった。リビングの天井からぶら下がる人影、それは紛れもなく、林田智子の息絶えた姿であった。
~
~
時は過ぎて十二月の終わり。世間では「年末」などと呼ばれる、一年で最もあわただしい時期の一つだ。
そして同時に、年二回の大イベントの時期でもある。
前田美緒と北条圭子は、有明にいた。もう一人いるはずのメンバーを欠いて・・・。
会場で本を売りながら、美緒は他の参加者に忌事を悟られない様、ポーカーフェイスに努めていた。
その傍らで、圭子は携帯をいじっていた。
twitterを使って、他のサークルと状況を報告しあっていた。
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ひとまず目前の列を裁き切り、落ち着いた美緒は、圭子の携帯を覗いた。
フォローしていたサークルのいくつかで、新刊が完売したらしい。とか、スペースから遠く離れた通路でまた血栓が起きているらしい。とか、そんな情報を見ていく中に、一つだけ場違いなつぶやきがあった。
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マリー>復帰なうw
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マリー、それは、智子のPNだった。
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「嘘、でしょ・・・?」
美緒は思わずつぶやいた。無論、言葉として。
智子が、こんなんところにメッセージを書き込むなんて、もう二度とないはずなのに。いったい誰が?質の悪い悪戯か?
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「な、何言ってるのよ。こんなの、悪戯に決まってるじゃない!」
「そ、そうよね。誰かの悪戯よね!」
恐怖を押し殺し、言い聞かせる二人。
~
「さて、新刊裁かないと!」
「そうね。どうぞー、見ていってくださーい!」
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そして、顔馴染みから差し入れを受け取ったり、スケッチブックを描いたりしているうちに、twitterのことなど、すっかり忘れてしまっていた。
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『以上をもちまして、コミックマーケット77、一日目の日程を終了します。』
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二人はスペースを撤収し、そのまま帰路に就いた。
そこでふと携帯を開くと、
~
マリー>復帰なうw
~
まただ、また「マリーを騙る何者か」が呟いている。
二人の背筋を、何か冷たいものが走った。
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「なんだか気味が悪い・・・。」
「そうねぇ。それもあるし、もう疲れたでしょ?今夜はうちに泊まっていかない?」
圭子は、ふと、そう切り出した。
「そうさせてもらうわ。なんだか一人じゃ心細いし。」
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圭子宅に着くと、一日の疲れがドッと出てきた。
交互に買い出しに出て買ってきた戦利品は明日に回し、今晩はゆっくり眠ることにした。
~
~
マリー>コミケお疲れ様!
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美緒がふと携帯を覗くと、再び「マリーを騙る何者か」のつぶやきがあった。
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マリー>いまね、綾川駅に着いたところよ。
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綾川駅、圭子の住むマンションの最寄り駅だ。
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マリー>いまね、市民体育館のところよ。
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市民体育館は、駅とマンションの間にある。こっちに来ているのか?
二人は、もう恐怖で一杯だった。
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マリー>いまね、商店街を抜けたところよ。
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市民体育館の近くにある商店街。ここを抜ければ、マンションはすぐそばだった。
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マリー>いまね、あなたたちのいるマンションの下に着いたわ。
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もう、二人には時間の感覚など無い。
「綾川に着いた」というつぶやきから、もう何時間も立っているようにも思えたし、数分前のようにも思えた。
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マリー>いまね、圭子の部屋の前にいるわ。開けてくれないかな?
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「ねぇ・・・。」
あれから、はじめて口を開いたのは美緒だった。
「開ける訳ないでしょ?本物の智子なわけないんだから!」
「ひょっとして、新手のストーカーか何かかな?」
「あたしをストーキングするなんてどこのモノ好きよ・・・。あぁ、どっちにしても嫌だわ・・・。」
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マリー>いまね、二人の後ろにいるの。なんで、開けてくれないの?
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二人は、後ろを振り向く。
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そこには・・・・・・。

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