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留鳥 鵠_SS の変更点


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■[[僕○第76回]]
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「さて……と、今日のノルマはこんなものですかねぇ?」
 私――留鳥鵠は機織りで織った布を確認し、外見等に特に問題がないのを確認して家から出る。
 ここは幻想郷。外の世界から隔絶された世界。私はもともとは外の世界にいたのですが、気が付いたらこの幻想郷にいました。外の世界に比べて、幻想郷は自然が多く、また、ほとんどいなくなっていたと思われてた私の仲間たちもいたので、結果的には良かったかなと思ってます。
「誰に向かって話しているのですか鵠さん」
「あら? 文さんじゃないですか。今日はどちらへご取材に?」
 こちらの方は天狗の射命丸文さん。妖怪なんて人が嘯くただの幻想だと思ってましたが、この幻想郷では普通に生息してるのです。
 それで文さんは新聞記者を生業としていて、いつも幻想郷を飛び回って取材をしています。していないときは山の警備をしているらしいです。
「貴女にですよ鵠さん。貴女が来た外の世界について是非是非取材させてほしいのですよ。最近は事件がなくて皆の気を引く記事が欲しいところなのです」
「なるほどですねぇ。ですが紫さんに濫りに口外しないようにと釘を刺されてしまっていますので……」
 境界の大妖怪と呼ばれる八雲紫さん。力の無い私からすれば、特に畏怖すべきモノすら見抜けない相手ではありますが、他の人たちが恐れているからそれはもうきっと危険な人なのでしょう。
「そこを何とか! ほらっ! 同じ鳥類のよしみでっ!! お願いしますよ〜」
「そうですねぇ。私としてもやはり同じ鳥類のよしみですし、出来る事なら手伝いたいものですが……」
「やっぱり無理ですか。こちらとしても無理にとは――」
「……わかりました」
「はい?」
 取材を諦め、代わりの記事を考えようとしている文さんを呼び止めます。
「お答え出来る範囲でお答えしましょう。後で問題になったら私が八雲さんに弁明します」
「い、いえ……もしもそんなことになったら鵠さん即死してしまいますよっ!! 流石にそんなことになったら目覚めが悪いどころじゃありませんからそれはちょっと……」
 文さんは申し訳なさそうに見てきて、私は文さんにそんな顔をさせたかったわけではないので、少し心が痛みながらも何とか取材をしてもらおうと頑張ります。
「大丈夫ですよ。それほど危険な内容ではなかったら紫さんも気にしませんよきっと」
「鵠さんがそこまで言われるのであれば……私が引くのも悪いですね。それでは早速いきますよ?」
「はい。どんと来て下さい」
「前に紅魔館の人たちが付きに行く為の外の知識を参考にしたロケットを作りましたが、外のロケットはあんな形だったんですか?」
「あんな形かと言われましても私そのロケット見てないんですけど……」
「……では次で」
「……そうですね」
「妖怪とかはまだ厳密には全て幻想郷に来ているわけではないらしいのですが、外には一体どんな妖怪がいたりするんですか?」
「私幻想郷に来るまで妖怪なんて子供を躾ける為に嘯くものだと思ってましたねぇ」
「……つまりは?」
「私は見た事がないです。噂話程度なら沢山聞きましたが。メリーさんとかそんな都市伝説系のを」
「やはりほとんどは既にこっちに来てるんですかねぇ。もしくは勢力が弱まりすぎて表に出られないかのどちらかですか」
 その後も文さんの質問に答え、しばらくして文さんも満足してくれたような顔になってくれました。ふぅ、よかった。
「取材協力ありがとうございました鵠さん。つきましては取材協力のお礼をしたいのですが、お金で構いませんか?」
 文さんの申し入れに私はふと考える。私の生活状況を鑑みればお金で構わないのだが、ふとある事を思いつき、首を横に振る。
「いえ、ちょっと付き合ってもらえませんか?」
「構いませんが……何にですか?」
「大丈夫ですよぉ」
 首をかしげる文さんを引き連れ、私は里の住宅地へと向かう。文さんは割と里にも顔を出すことが多いので、里の人たちも別段慌てることなく普段通りにしている。私たちはそんな人たちを素通りし、目標の家の前に到着する。
「それで鵠さん? 結局何をするんですか?」
「そうですねぇ……本能に基づく行為でしょうか?」
「はい?」
 首をかしげる文さんを引き連れ目標の家に入る。階段もごく普通に歩いて登り、扉も普通に開けて目標の部屋に入る。そこには静かに眠り赤ん坊が一人いる。
「鵠さんさっきから何気なく音も立てずに歩いたり、鍵をあっさりと開けないでください。下手すると通報されますよ? って何してるんですかっ!?」
 文さんがびっくりして大声を出そうとして――すぐに赤ん坊がいる事に気付き――口を閉じる。いきなりどうしたのでしょうか?
 私は寝ている赤ん坊を抱き上げ、そのまま玄関まで戻ろうとしたが、文さんに肩を掴まれて止められた。
「どうしたんですか文さん? 戻りますよ?」
「その前にその赤ん坊置いてってください鵠さん。天狗じゃあるまいしこんな所で人の子攫ったら里の守護者に退治されますよ?」
「何言ってるんですか文さん。これは人攫いなんかじゃありませんよ? コウノトリの習性です。後、手伝ってくれるはずですよね?」
「そんな奇特な習性持つ動物はいなかったと思いますが……わかりました。約束ですもんね。手伝いますよ」
「ありがとうございます。では、行きましょうか」
 私は赤ん坊を抱き抱えたまま外に出る。里の人たちは私の手の中の赤ん坊が見えてはいるが決して騒ぎ立てたりはしない。それは私が得た能力に起因します。
 物を運ぶ程度の能力。私が赤ん坊を運んでいるときには他の人に邪魔されずに運ぶ事が出来るとっても便利な能力です。こないだは魔理沙さんに頼まれて一緒に紅魔館の図書館に行って本を運んだら褒められてしまいました。
 余計な事を考えているうちに次の目的地に着きました。この家の夫婦は子供を大層欲しがってはいるものの、夫が不能と言う致命的な欠陥を抱えている家です。こんな時こそ私の出番です。私は再び家に入り、寝室に赤ん坊を寝かしつけ、そしてそのまま出て行きます。
「ふぅ。これで完了ですね。何事も無くてよかったですね」
「……ほんとうですね」
 文さんは何故かぐったりとしていた。私はそれが気になりましたが、文さんが理由を言わないのであれば、無理に聞き出すのも問題だろうと思い、あえて聞かない事にしました。
 その後、文さんとは別れ自宅に戻り、余った時間で機織りをして売り物の数を増やして、その日は平和に終わりました。
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 後日、何故か慧音さんに怒られました。不思議です。
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