ラジオショックのまとめ
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立花 白亜_SS の編集
* SS本文 [#u1eae34e] ■[[僕○第36回]] ---- 「いやああぁぁっ!!」 バサッ 私は自分の声で目が覚めた。得体の知れない怖気に、私は自分で自分を抱きしめる。 「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……。ゆ、夢? いえ、今のは……」 予知夢だ。私――立花白亜の持つ未来視の能力。それが最も強く発現するのが予知夢。私が余計な情報を入手したりしない睡眠時に、夢という形で未来を、いつもよりも細部細かく見せるのだ。 「でも……今のは」 理解できなかった。視えたものが抽象的すぎて、何が起こるのかがわからなかったのである。ただ、予測できることと言えば、 「災厄」 私の未来氏が視ることの九割九部は誰かの災厄。恐らく今回もそうなのだろう。夢で視えた会場。あそこで何かが起こる。それは、想像するだけでも……怖い。いつもとは違う。いつもは何が起こるかわかっていたから、事前に覚悟を決めることが出来た。でも、今回はそれすらわからない。理解できない何かによって死ぬのは……恐い。でも、 「視えた場面に私はいなかった。運が良ければ、私は無事かもしれない。……でも」 私は見えた場面にいた他の妖精のことを思った。今までの記憶から、視えた未来を覆すことが出来ないのは知っている。赤い館の吸血鬼でも無理だった。ただの妖精である自分がどうにかできるとは思っていない。 「……でも」 いつも通りならそうかもしれない。でも、今回は違う。確実な何かによる、確実な死ではない。不確かな何かによる、不確かな何かだ。だから、 「もしかしたら、何とかなるかもしれない」 私は知り合いに連絡を取る。近々、妖精達が会場を使うような大掛かりな何かをしないかと、それはすぐにわかった。 「最強……妖精選手権?」 『そう。最強の妖精を決める大会ね。故あって、私は参加しないけれど』 ということは、恐らく大量の妖精が集まるだろう。妖精なのだから、仮に死んだところで一回休みだが、私には耐えられなかった。 「ねぇ、その大会には参加資格とかあるの?」 『白亜? まさか……参加するの? アレのメインは戦闘よ?』 「気になるの。どうしても……」 『何か視たのね。でも……普段とは違うようね。ん。だったら止めないわ。好きにしなさい』 向こうの声色に諦めの色が混じる。でも、暖かい。私はそっと「ありがとう」と言う。 『いいわよ。で、参加資格だけれど、妖精なら誰だっていいそうよ。ただ、人数が多いようだと、バトルロワイヤルで人数削られるかもしれないから注意しなさい』 「わかった。それじゃあ」 『ええ。くれぐれも、無茶しないようにね』 通信を切る。私はいまだ震える手をぎゅっと握り、いつもの服に着替えて、家から出た。外はまだ薄闇に覆われていたが、もうしばらくすれば朝日も昇るだろう。 「うん。……行こう!」 私は決意を口にして、大会の会場へと足を運んだのだった。 ~
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#contents * SS本文 [#u1eae34e] ■[[僕○第36回]] ---- 「いやああぁぁっ!!」 バサッ 私は自分の声で目が覚めた。得体の知れない怖気に、私は自分で自分を抱きしめる。 「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……。ゆ、夢? いえ、今のは……」 予知夢だ。私――立花白亜の持つ未来視の能力。それが最も強く発現するのが予知夢。私が余計な情報を入手したりしない睡眠時に、夢という形で未来を、いつもよりも細部細かく見せるのだ。 「でも……今のは」 理解できなかった。視えたものが抽象的すぎて、何が起こるのかがわからなかったのである。ただ、予測できることと言えば、 「災厄」 私の未来氏が視ることの九割九部は誰かの災厄。恐らく今回もそうなのだろう。夢で視えた会場。あそこで何かが起こる。それは、想像するだけでも……怖い。いつもとは違う。いつもは何が起こるかわかっていたから、事前に覚悟を決めることが出来た。でも、今回はそれすらわからない。理解できない何かによって死ぬのは……恐い。でも、 「視えた場面に私はいなかった。運が良ければ、私は無事かもしれない。……でも」 私は見えた場面にいた他の妖精のことを思った。今までの記憶から、視えた未来を覆すことが出来ないのは知っている。赤い館の吸血鬼でも無理だった。ただの妖精である自分がどうにかできるとは思っていない。 「……でも」 いつも通りならそうかもしれない。でも、今回は違う。確実な何かによる、確実な死ではない。不確かな何かによる、不確かな何かだ。だから、 「もしかしたら、何とかなるかもしれない」 私は知り合いに連絡を取る。近々、妖精達が会場を使うような大掛かりな何かをしないかと、それはすぐにわかった。 「最強……妖精選手権?」 『そう。最強の妖精を決める大会ね。故あって、私は参加しないけれど』 ということは、恐らく大量の妖精が集まるだろう。妖精なのだから、仮に死んだところで一回休みだが、私には耐えられなかった。 「ねぇ、その大会には参加資格とかあるの?」 『白亜? まさか……参加するの? アレのメインは戦闘よ?』 「気になるの。どうしても……」 『何か視たのね。でも……普段とは違うようね。ん。だったら止めないわ。好きにしなさい』 向こうの声色に諦めの色が混じる。でも、暖かい。私はそっと「ありがとう」と言う。 『いいわよ。で、参加資格だけれど、妖精なら誰だっていいそうよ。ただ、人数が多いようだと、バトルロワイヤルで人数削られるかもしれないから注意しなさい』 「わかった。それじゃあ」 『ええ。くれぐれも、無茶しないようにね』 通信を切る。私はいまだ震える手をぎゅっと握り、いつもの服に着替えて、家から出た。外はまだ薄闇に覆われていたが、もうしばらくすれば朝日も昇るだろう。 「うん。……行こう!」 私は決意を口にして、大会の会場へと足を運んだのだった。 ~ * コメント欄 [#w17d5ed5] #comment()
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