ラジオショックのまとめ
ゆきちゃん_SS をテンプレートにして作成
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* SS本文 [#q442dfb9]
■[[僕○第49回]]
----
ふと外を見ると、空から白い綿のようなものがヒラヒラと舞い...
「雪……」
通りで冷え込むわけだ。あすの朝には積もっている事だろう。
地表をすっかり白く染めていくそれを、私はじっと見つめてし...
毎年の事だ。雪が降るとあの子の事を思いだす。
あの冬に出会った、不思議な女の子の事を――
~
あれは私が八つか九つ位の時だったろうか?
大雪の降った日だった。
大量の雪にうかれた私は遊びながらついはしゃぎすぎていつの...
周りは雪と樹ばかり、しまいには日も傾きかけて心細くなった...
「どうしたのら? 泣いているのら?」
何とも舌っ足らずな声が私にかけられた。びっくりして声の方...
わらで作った雪用の靴を履き、着物をいている。真冬に着るに...
「わかった! 迷子なのらな?」
「う、うん。あなたは?」
「ん? ゆきちゃんのこと? ゆきちゃんは、ゆきちゃんなの...
どうやらこの子の名前は『ゆきちゃん』といい、自分の事も『...
「お家に帰りたいよう……」
「ん! ゆきちゃんに任せるのら」
その時は、ゆきちゃんに手を引かれて家に帰る事が出来た。
体は小さいのに、私の手を引いてぐんぐんと歩く姿はとても頼...
が、その頼もしさとは逆に手がとても冷たかったのを良く覚え...
~
それが、私がゆきちゃんに初めて会った時のことだった。それ...
ゆきちゃんは不思議な子だった。
いつも一緒に遊んでいたのに近所の子では無いらしく、周りの...
一度、「どこに住んでいるの?」と聞いたことがあったが、ゆ...
また、寒いからと温かい食べ物を勧めても絶対に食べてくれる...
助けてもらったときに手が冷たいとは思っていたが、ゆきちゃ...
しかし、幼かった私には、そんなことなどどうでも良かったら...
「ねえ、ゆきちゃん。その首飾りきれいだねぇ」
ある日、いつものようにゆきちゃんと遊んでいた私は、ふと彼...
「銀色に、すごくキラキラしていて。それに面白い形をしてい...
それは六角形の形をしていたが、まるで六枚の花びらを付けた...
「これ? これはね、小さくって普通は見えないんらけど、雪...
「ふうん、雪の形かぁ」
私はそれを聞いてますますその首飾りに興味を持った。
「ねえねえ、その首飾り、私にくれない? だめ? だったら...
そう私が言うと、ゆきちゃんはとても困った顔をして言った。
「ん〜。お友達だから貸してあげたいのは山々なんらけど〜。...
「???」
その首飾りがゆきちゃんそのもの? 私は彼女の言う事がよく...
「ぶう〜、ゆきちゃんのけち〜」
「わわわ、ごめんなのら〜。でも、だめなのら〜」
その後、しばらく私はふくれて『ゆきちゃんのけち〜』を言い...
~
「雪もだいぶ解けてきたね」
雪も解け、春も間近に来ていると感じられるようになってきた...
「ゆきちゃんは春になるとやってくる妖精さんってみた事ある...
今日はゆきちゃんの様子がどうもおかしい。どことなく元気が...
「あのね、お別れしなくちゃいけないのら」
「え!?」
ゆきちゃんは唐突に話を切り出した。私は訳も分からず素っ頓...
「え? なんで? どうして?」
「春になったら、一緒にはいられないのら、ごめんなのら」
「何処かに引っ越しちゃうの? それなら必ず会いに行くから...
ゆきちゃんはうつむいたまま、ゆっくりと首を振った。
「でもね、そんなに悲しい顔しなくてもだいじょうぶらよ」
そう言うと、ゆきちゃんは首にかかっていた首飾りを外して私...
「これ、預かってて欲しいのら」
「え? でもこれ、大切なものなんじゃ?」
「これを持っていてもらえれば必ずまた会えるのら」
にっこりとほほ笑む彼女の眼に一欠けらの嘘も迷いもなかった。
私は恐る恐る手を伸ばし、それを受け取る。
その首飾りは、ゆきちゃんの手のようにとてもひんやりとして...
「この冬は、とってもとっても楽しかったのら……、幸せだった...
私にキチンと向き直り、一呼吸置いてから
「さよなら……なのら……」
とびきりの笑顔で放たれたお別れの言葉。それが、ゆきちゃん...
彼女の体は、一瞬にして真っ白になったかと思うと、次の瞬間...
首飾りを持った手がジンジンと冷たい。
その冷たさに急かされでもするように、私の目からはとめどな...
私はその場に座り込みわんわんと声をあげて泣いた。
ふぅ っと、風が吹き抜ける。
それは紛れもなく春の息吹を含んだ風だった。
~
~
――あれから何年位経っただろうか?
私もすっかり大人になり、結婚をし、娘も出来た。
ゆきちゃんは『また会える』と言ってくれたが、あの日から会...
今思えば、あの子は雪の妖精やら妖怪やらの類の子であったの...
春になれば消えてしまう定めの子だったのだ。
あの首飾りとバケツは今でもひっそりと行李(こうり)の中に...
冬になって雪が降ると、決まってそれらを取り出して眺めては...
明日の朝にでもまた出してみようか。また、一年ぶりに。
~
翌朝、予想通り雪は大分降り積もっていた。雪自体は止んでい...
(これはそうそう解けたりはしないな。根雪になるかも)
そんな事を思いながら、昨日決めた通り首飾りとバケツのしま...
早速開けてみると…
(え!?)
ない。
そこにあるはずの首飾りとバケツが無い。
(そんな。確かにここにしまっておいたはず)
うろたえていると、庭先から娘のキャッキャッという声が聞こ...
その声でハッと我に返る。そして、何やら予感を感じた。
娘の声がする庭先に足早に歩を進める。
娘は今年で六つになる。外見的にはゆきちゃんとちょうど同じ...
庭先に居た娘は、雪だるまを作って遊んでいた。
娘の背丈と同じくらいの雪だるま。とても上手に作れていた。
ただ、私の驚かせたのはその雪だるまが、ゆきちゃんの首飾り...
「その首飾りとバケツは……、勝手に持ち出したの?」
「うん! この雪だるまさんが『着けてくれ』っていうから着...
娘は無邪気に笑いながらそう答える。
「雪だるま……が……?」
私はまるで夢遊病者のようにフラフラとその雪だるまに近づい...
バケツを被り、首飾りを付けたその雪だるまの姿は本当にゆき...
(ゆきちゃん……)
なぜだか、あの日、ゆきちゃんと別れた日に胸に込み上げた思...
その思いとともに込み上げてくるもので少し目を潤ませた、そ...
『ん? また泣いてるのら?』
ゆきちゃんの声が聞こえたような気がした。
いや、それは聞き違いなどでは無かった。
目も前にあったはずのゆきだるまは、今はとても懐かしい姿か...
「どうしたのら? また迷子なのら?」
間違いなく目の前にはゆきちゃんがいた。あの時の姿そのままで
「ゆ…き…ちゃん……」
「ん! ゆきちゃんらよ! 久しぶりなのら」
にっこりと笑うゆきちゃん。
私は泣いていた。そして、思い切りゆきちゃんを抱きしめてい...
ゆきちゃんの昔と変わらない冷たさがとても心地よかった。
そのまま、年甲斐もなくわんわんと泣いた。
「わわわ、あんまりそこで泣かれると解けちゃうかもしれない...
風が吹いていた。冷たい木枯らしだ。
~
今年の冬はまだまだ始まったばかりだ。
~
(了)
~
~
※蛇足的作者後記
一晩で書いたので推敲できてません。さまざまな至らない所に...
ところでこの作品内の『私』は、男の人だと思いますか? 女...
~
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■[[僕○第49回]]
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ふと外を見ると、空から白い綿のようなものがヒラヒラと舞い...
「雪……」
通りで冷え込むわけだ。あすの朝には積もっている事だろう。
地表をすっかり白く染めていくそれを、私はじっと見つめてし...
毎年の事だ。雪が降るとあの子の事を思いだす。
あの冬に出会った、不思議な女の子の事を――
~
あれは私が八つか九つ位の時だったろうか?
大雪の降った日だった。
大量の雪にうかれた私は遊びながらついはしゃぎすぎていつの...
周りは雪と樹ばかり、しまいには日も傾きかけて心細くなった...
「どうしたのら? 泣いているのら?」
何とも舌っ足らずな声が私にかけられた。びっくりして声の方...
わらで作った雪用の靴を履き、着物をいている。真冬に着るに...
「わかった! 迷子なのらな?」
「う、うん。あなたは?」
「ん? ゆきちゃんのこと? ゆきちゃんは、ゆきちゃんなの...
どうやらこの子の名前は『ゆきちゃん』といい、自分の事も『...
「お家に帰りたいよう……」
「ん! ゆきちゃんに任せるのら」
その時は、ゆきちゃんに手を引かれて家に帰る事が出来た。
体は小さいのに、私の手を引いてぐんぐんと歩く姿はとても頼...
が、その頼もしさとは逆に手がとても冷たかったのを良く覚え...
~
それが、私がゆきちゃんに初めて会った時のことだった。それ...
ゆきちゃんは不思議な子だった。
いつも一緒に遊んでいたのに近所の子では無いらしく、周りの...
一度、「どこに住んでいるの?」と聞いたことがあったが、ゆ...
また、寒いからと温かい食べ物を勧めても絶対に食べてくれる...
助けてもらったときに手が冷たいとは思っていたが、ゆきちゃ...
しかし、幼かった私には、そんなことなどどうでも良かったら...
「ねえ、ゆきちゃん。その首飾りきれいだねぇ」
ある日、いつものようにゆきちゃんと遊んでいた私は、ふと彼...
「銀色に、すごくキラキラしていて。それに面白い形をしてい...
それは六角形の形をしていたが、まるで六枚の花びらを付けた...
「これ? これはね、小さくって普通は見えないんらけど、雪...
「ふうん、雪の形かぁ」
私はそれを聞いてますますその首飾りに興味を持った。
「ねえねえ、その首飾り、私にくれない? だめ? だったら...
そう私が言うと、ゆきちゃんはとても困った顔をして言った。
「ん〜。お友達だから貸してあげたいのは山々なんらけど〜。...
「???」
その首飾りがゆきちゃんそのもの? 私は彼女の言う事がよく...
「ぶう〜、ゆきちゃんのけち〜」
「わわわ、ごめんなのら〜。でも、だめなのら〜」
その後、しばらく私はふくれて『ゆきちゃんのけち〜』を言い...
~
「雪もだいぶ解けてきたね」
雪も解け、春も間近に来ていると感じられるようになってきた...
「ゆきちゃんは春になるとやってくる妖精さんってみた事ある...
今日はゆきちゃんの様子がどうもおかしい。どことなく元気が...
「あのね、お別れしなくちゃいけないのら」
「え!?」
ゆきちゃんは唐突に話を切り出した。私は訳も分からず素っ頓...
「え? なんで? どうして?」
「春になったら、一緒にはいられないのら、ごめんなのら」
「何処かに引っ越しちゃうの? それなら必ず会いに行くから...
ゆきちゃんはうつむいたまま、ゆっくりと首を振った。
「でもね、そんなに悲しい顔しなくてもだいじょうぶらよ」
そう言うと、ゆきちゃんは首にかかっていた首飾りを外して私...
「これ、預かってて欲しいのら」
「え? でもこれ、大切なものなんじゃ?」
「これを持っていてもらえれば必ずまた会えるのら」
にっこりとほほ笑む彼女の眼に一欠けらの嘘も迷いもなかった。
私は恐る恐る手を伸ばし、それを受け取る。
その首飾りは、ゆきちゃんの手のようにとてもひんやりとして...
「この冬は、とってもとっても楽しかったのら……、幸せだった...
私にキチンと向き直り、一呼吸置いてから
「さよなら……なのら……」
とびきりの笑顔で放たれたお別れの言葉。それが、ゆきちゃん...
彼女の体は、一瞬にして真っ白になったかと思うと、次の瞬間...
首飾りを持った手がジンジンと冷たい。
その冷たさに急かされでもするように、私の目からはとめどな...
私はその場に座り込みわんわんと声をあげて泣いた。
ふぅ っと、風が吹き抜ける。
それは紛れもなく春の息吹を含んだ風だった。
~
~
――あれから何年位経っただろうか?
私もすっかり大人になり、結婚をし、娘も出来た。
ゆきちゃんは『また会える』と言ってくれたが、あの日から会...
今思えば、あの子は雪の妖精やら妖怪やらの類の子であったの...
春になれば消えてしまう定めの子だったのだ。
あの首飾りとバケツは今でもひっそりと行李(こうり)の中に...
冬になって雪が降ると、決まってそれらを取り出して眺めては...
明日の朝にでもまた出してみようか。また、一年ぶりに。
~
翌朝、予想通り雪は大分降り積もっていた。雪自体は止んでい...
(これはそうそう解けたりはしないな。根雪になるかも)
そんな事を思いながら、昨日決めた通り首飾りとバケツのしま...
早速開けてみると…
(え!?)
ない。
そこにあるはずの首飾りとバケツが無い。
(そんな。確かにここにしまっておいたはず)
うろたえていると、庭先から娘のキャッキャッという声が聞こ...
その声でハッと我に返る。そして、何やら予感を感じた。
娘の声がする庭先に足早に歩を進める。
娘は今年で六つになる。外見的にはゆきちゃんとちょうど同じ...
庭先に居た娘は、雪だるまを作って遊んでいた。
娘の背丈と同じくらいの雪だるま。とても上手に作れていた。
ただ、私の驚かせたのはその雪だるまが、ゆきちゃんの首飾り...
「その首飾りとバケツは……、勝手に持ち出したの?」
「うん! この雪だるまさんが『着けてくれ』っていうから着...
娘は無邪気に笑いながらそう答える。
「雪だるま……が……?」
私はまるで夢遊病者のようにフラフラとその雪だるまに近づい...
バケツを被り、首飾りを付けたその雪だるまの姿は本当にゆき...
(ゆきちゃん……)
なぜだか、あの日、ゆきちゃんと別れた日に胸に込み上げた思...
その思いとともに込み上げてくるもので少し目を潤ませた、そ...
『ん? また泣いてるのら?』
ゆきちゃんの声が聞こえたような気がした。
いや、それは聞き違いなどでは無かった。
目も前にあったはずのゆきだるまは、今はとても懐かしい姿か...
「どうしたのら? また迷子なのら?」
間違いなく目の前にはゆきちゃんがいた。あの時の姿そのままで
「ゆ…き…ちゃん……」
「ん! ゆきちゃんらよ! 久しぶりなのら」
にっこりと笑うゆきちゃん。
私は泣いていた。そして、思い切りゆきちゃんを抱きしめてい...
ゆきちゃんの昔と変わらない冷たさがとても心地よかった。
そのまま、年甲斐もなくわんわんと泣いた。
「わわわ、あんまりそこで泣かれると解けちゃうかもしれない...
風が吹いていた。冷たい木枯らしだ。
~
今年の冬はまだまだ始まったばかりだ。
~
(了)
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※蛇足的作者後記
一晩で書いたので推敲できてません。さまざまな至らない所に...
ところでこの作品内の『私』は、男の人だと思いますか? 女...
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