ラジオショックのまとめ
京都 百合奈,京都 杏子SS をテンプレートにして作成
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* SS本文 [#dc3bcd9e]
迷いの竹林から人里へと続く、荒れた道。そんな、暗い暗い夜...
「しかし、ただの風邪で良かったなぁ。突然高熱出したから何...
「本当ですわね……」
三つの内一番背の高い人影の声に、次に高い人影が答える。一...
「お父しゃん、杏子は治るの?」
「あぁ、治るとも。明日の夜には全快だってお医者様も言って...
答えた大柄な男――おそらく父親だろう――の腕には、幼子が抱き...
「でも……お父様、本当に自警団の方に着いて来てもらわなくて...
男の隣にいた女――つまり、男の妻だ――が、心底心配そうに問い...
男は僅か心配そうな顔をしたが、明るい声で答える。
「大丈夫だよ。もうすぐ里に着くし、それにあっちの急患の方...
彼らが竹林から出て来た直後、一人の女性が子供を抱きかかえ...
「確かに、あのお二人は自警団の方がいないとお医者様のとこ...
そう女が言った時、不意に木々がざわめき始めた。葉が擦れ合...
「お母しゃん、怖いよぉ……」
「そうね、早く帰りま――キャアッ!」
言いかけた女の背中に、突如何かが降って来た。悲鳴を上げ倒...
「どうし――グアッ!」
悲鳴に振り向いた男にも、同様に何かが降り注ぐ。
「お父しゃん!? お母しゃん!?」
驚く少女の目に飛び込んだのは、一瞬前の談笑が嘘のような、...
母親の背中には何者かが覆い被さっていて、その爪が掠めた首...
父親の横に立ち、母親の背中に覆い被さっているのは異形の怪...
どうやら妖怪は二匹だけらしく、幸い少女は無事でいた。が、...
「百合奈!」
男が少女の名を呼ぶ。百合奈と呼ばれた少女は我に返ったよう...
「百合奈! 杏子を連れて早く逃げろ!」
「でも、お父しゃんとお母しゃんが!」
戸惑う百合奈に、男はなお叫ぶ。
「里に帰れば慧音さんがいる、助けを……あいつが動き出す前に...
指差した先には、全力で爪を引き抜こうとする妖怪の姿があっ...
「百合奈、早く!」
「ぅ……うぅ……うわぁぁぁぁん!!」
百合奈は杏子を抱え、計り知れない恐怖に大声で泣き叫びなが...
~
~
~
「うぅぅ……ヒック……」
一体どれくらい走っただろうか。今どこを走っているのか。
そんな事も考えられぬまま、百合奈はひたすらに走り続ける。...
と、その時。
ドカッ!
「キャア!」
「うわっ! ……っと、大丈夫か!?」
前も見えずに走っていた百合奈が、木陰から出て来た女性と衝...
「大丈夫か……って、子供が何故このような時間に?」
女性の当然の疑問に、百合奈はたどたどしく答える。
「妖怪が……ヒック、妖怪に……」
「妖怪に……襲われたのか!?」
女性が顔面蒼白で言う。百合奈は頷き、なおも続けた。
「慧音さんに……助けを呼べって……」
「慧音は私だ。急ごう、案内してくれ!」
慧音と名乗るその女性に抱えられ、百合奈は今来た道を戻った。
~
~
~
「妖気が濃い……ここか!?」
角を曲がって正面を見据えた慧音が、その光景に思わず目を背...
数刻前談笑を交わしていた一家が襲われたその場所には、見る...
辺りに漂う血の臭い。巨大な血溜りが一つと、地面に付いたお...
血溜りの中心にある死体は、半ば原形を留めていなかった。喰...
血糊を辿って行った先にある死体は、まだそれほど喰われては...
慧音をして目を逸らしたくなるほどの凄惨な光景に、しかし百...
父親の、戦慄し苦痛に歪んだ表情をまじまじと眺める。逃げる...
「……アアアアアァァァ!!!」
不意に絶叫し、そして気を失った。
~
~
~
「うぅ……う……ハッ!」
百合奈がガバリと跳ね起きる。心臓は激しく波打ち、体は寝汗...
「ハァ、ハァ……また、この夢……」
あの忌まわしき事件から早十年。十五歳になった百合奈はしか...
あの後、両親を失った二人は、慧音の計らいにより人里であん...
子供の無かった老夫婦は、ひ孫ほども差のある二人の子供を、...
老夫婦には寺子屋に行く金が工面出来なかったが、慧音の取り...
そして百合奈は今、老夫婦のあんみつ屋で手伝いをしながら、...
「……眠れない」
悪夢にうなされたせいで目が冴えてしまった百合奈は、外の空...
「すぅー……はぁー……すぅー……はぁー……」
何度か深呼吸すると動機も収まって来た。涼しい夜風が、寝汗...
「クシュン!……風邪引いちゃうし、もう戻ろうかな……」
そう呟き、踵を返そうとした彼女の目に、一つの人影が飛び込...
それは、一見すれば人里の守護者・上白沢慧音の姿であった。...
いつも着ている紺色の服は、今夜に限って何故か緑色だった。...
半信半疑のまま、百合奈はとりあえず呼びかけて見る事にした。
「慧音先生……?」
その人物は呼びかけに振り向き、呼びかけた百合奈の方へと駆...
「あぁ、やっぱり慧音先生だっ――!?」
何かに安堵して慧音に話しかけようとした百合奈の声が、中途...
「けい……ね、せんせ……」
慧音の頭に付いていたのは、二本の角だった。慧音のお尻に付...
「ゆ、百合奈、違うんだ。これは……」
顔を真っ青にした慧音が百合奈に話しかける、が百合奈はもう...
「う、う、うわああああああ!!!」
深夜の人里に絶叫が響く。走り去る悲鳴に一人取り残された慧...
~
~
~
あんなに優しくしてくれた慧音が、実は妖怪だった。その事実...
いや、それ以上に彼女を傷つけたのは、その驚くべき事実を、...
慧音自身も、老夫婦も、寺子屋の友人たちも、店に来るお客さ...
そんな悲し過ぎる事実に、百合奈は酷く傷つき、そして熱を出...
寝込んでしまった百合奈だったが、老夫婦の看病も、慧音や友...
心を固く閉ざした百合奈に近寄れたのは唯一、妹の杏子だけで...
数日して熱は下がり、普通に食事も出来るようになった。しか...
店に出て来なくなった百合奈を客たちも心配したが、心配や同...
店は活気を失い、伝染するように里全体が活気を失って行く。...
「お姉ちゃん、入るよー?」
杏子が、百合奈の分の夕飯を持って部屋へと訪れた。
「ありがと」
一言で返答する百合奈に、杏子は続ける。
「今日は私もここで食べたいんだけど、いい?」
「……別に、いいわよ」
百合奈は覇気の無い声でそう呟いた。
~
~
~
「……ねぇ、お姉ちゃん?」
「なぁに」
しばらく無言で箸を進めていた二人。先に沈黙を破ったのは杏...
「まだ……怒ってるの?」
「…………」
「本当に、申し訳ないと思ってるって……言ってたよ」
あえて主語を省く杏子にイライラしながら、百合奈は無言を貫...
「確かに慧音先生が……人間じゃなかったって知った時は、私も...
「…………」
なおも無言を貫き続ける百合奈の剣幕に尻すぼみになって行く...
「でも、慧音先生が、私たちを助けてくれた事は変わらないで...
「…………」
必死の訴えにも無反応な百合奈に、杏子のボルテージは上がっ...
「慧音先生は確かに人間じゃなかった、けど……!」
「……じゃあ」
ずっと口を閉ざしていた百合奈が、低い声で呟く。そして立ち...
「じゃあ、何で教えてくれなかったのよ! ずっと優しくして...
百合奈の大声に気圧され、杏子は一気に縮こまる。
「そ、それは……」
「それは……君に嫌われたくなかったからだ」
突然襖の外から声がして、百合奈も杏子も飛び上がった。程な...
「全て、私が悪いんだ……」
そう言って、慧音は話し始めた。立ちあがっていた百合奈も、...
「事件直後の百合奈は、妖怪と言う存在に親を殺され……妖怪を...
百合奈も杏子も、その話に耳を傾ける。
「だから、私は百合奈の心がある程度安定した頃に……寺子屋を...
そこで言葉を一旦切り、そして慧音は、昔の自分を責めるよう...
「それを打ち明けて、君に嫌われたり、怖がられたりするので...
そこでまた言葉を切ると、慧音は百合奈の方をまっすぐ見据え...
「真実を言ってしまったら、今のように心を閉ざしてしまうの...
里のみんなにこの事を伝えるなと言っていたのも私だ。だから...
言いかけた慧音を老夫婦が否定した。
「いえ、我々も結局同じ事を考えていたのですから、慧音様だ...
「とにかく、全てが私の……私達のエゴだ。本当に、済まなかっ...
そう言って、慧音は深々と頭を下げた。後ろでは老夫婦も、同...
「……お姉ちゃん」
杏子がそっと呼びかける。百合奈は溢れ出る涙を拭うと、呟い...
「みんな、私の事考えてくれてたのに……私は……」
「いや、結局は自分の事を――」
「うぅん。それでも、私の事を考えてくれてた……なのに私は」
百合奈は体ごとしっかり慧音たちに向き直ると、立ち上がって...
「本当にごめんなさい……そしてもしよければ、これからもよろ...
老夫婦が涙を零した。慧音もまた頬を伝う涙を拭いながら、言...
「ありがとう……百合奈」
~
~
~
数日後。
「いらっしゃいませ!」
店には、再び活気が戻っていた。言うまでも無く、百合奈が仕...
「杏子ー、特製京あんみつ三つー!」
「おっけー!」
百合奈がどこか楽しげな声で注文を伝える。杏子もいつもの数...
そんな姉妹のやり取りに、客たちも自然と幸せな気持ちになっ...
百合奈の妖怪嫌いが治ったわけではない。だが、慧音が妖怪だ...
慧音も、長きに渡って背負っていた重荷を取り去ることが出来...
百合奈はふと、両親の事を思い出す。それはあまりにも悲しい...
もしあそこで妖怪が私を狙っていたら、父さんが呆然とする私...
そう思い、心の中で小さく、お礼をした百合奈であった。
~
~
~
今日も、百合奈の声が店に響く。この、人里でも最も有名とな...
「いらっしゃいませー!」
~
~
~
~
~
Fin.
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* コメント欄 [#q04c3f70]
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迷いの竹林から人里へと続く、荒れた道。そんな、暗い暗い夜...
「しかし、ただの風邪で良かったなぁ。突然高熱出したから何...
「本当ですわね……」
三つの内一番背の高い人影の声に、次に高い人影が答える。一...
「お父しゃん、杏子は治るの?」
「あぁ、治るとも。明日の夜には全快だってお医者様も言って...
答えた大柄な男――おそらく父親だろう――の腕には、幼子が抱き...
「でも……お父様、本当に自警団の方に着いて来てもらわなくて...
男の隣にいた女――つまり、男の妻だ――が、心底心配そうに問い...
男は僅か心配そうな顔をしたが、明るい声で答える。
「大丈夫だよ。もうすぐ里に着くし、それにあっちの急患の方...
彼らが竹林から出て来た直後、一人の女性が子供を抱きかかえ...
「確かに、あのお二人は自警団の方がいないとお医者様のとこ...
そう女が言った時、不意に木々がざわめき始めた。葉が擦れ合...
「お母しゃん、怖いよぉ……」
「そうね、早く帰りま――キャアッ!」
言いかけた女の背中に、突如何かが降って来た。悲鳴を上げ倒...
「どうし――グアッ!」
悲鳴に振り向いた男にも、同様に何かが降り注ぐ。
「お父しゃん!? お母しゃん!?」
驚く少女の目に飛び込んだのは、一瞬前の談笑が嘘のような、...
母親の背中には何者かが覆い被さっていて、その爪が掠めた首...
父親の横に立ち、母親の背中に覆い被さっているのは異形の怪...
どうやら妖怪は二匹だけらしく、幸い少女は無事でいた。が、...
「百合奈!」
男が少女の名を呼ぶ。百合奈と呼ばれた少女は我に返ったよう...
「百合奈! 杏子を連れて早く逃げろ!」
「でも、お父しゃんとお母しゃんが!」
戸惑う百合奈に、男はなお叫ぶ。
「里に帰れば慧音さんがいる、助けを……あいつが動き出す前に...
指差した先には、全力で爪を引き抜こうとする妖怪の姿があっ...
「百合奈、早く!」
「ぅ……うぅ……うわぁぁぁぁん!!」
百合奈は杏子を抱え、計り知れない恐怖に大声で泣き叫びなが...
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「うぅぅ……ヒック……」
一体どれくらい走っただろうか。今どこを走っているのか。
そんな事も考えられぬまま、百合奈はひたすらに走り続ける。...
と、その時。
ドカッ!
「キャア!」
「うわっ! ……っと、大丈夫か!?」
前も見えずに走っていた百合奈が、木陰から出て来た女性と衝...
「大丈夫か……って、子供が何故このような時間に?」
女性の当然の疑問に、百合奈はたどたどしく答える。
「妖怪が……ヒック、妖怪に……」
「妖怪に……襲われたのか!?」
女性が顔面蒼白で言う。百合奈は頷き、なおも続けた。
「慧音さんに……助けを呼べって……」
「慧音は私だ。急ごう、案内してくれ!」
慧音と名乗るその女性に抱えられ、百合奈は今来た道を戻った。
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「妖気が濃い……ここか!?」
角を曲がって正面を見据えた慧音が、その光景に思わず目を背...
数刻前談笑を交わしていた一家が襲われたその場所には、見る...
辺りに漂う血の臭い。巨大な血溜りが一つと、地面に付いたお...
血溜りの中心にある死体は、半ば原形を留めていなかった。喰...
血糊を辿って行った先にある死体は、まだそれほど喰われては...
慧音をして目を逸らしたくなるほどの凄惨な光景に、しかし百...
父親の、戦慄し苦痛に歪んだ表情をまじまじと眺める。逃げる...
「……アアアアアァァァ!!!」
不意に絶叫し、そして気を失った。
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「うぅ……う……ハッ!」
百合奈がガバリと跳ね起きる。心臓は激しく波打ち、体は寝汗...
「ハァ、ハァ……また、この夢……」
あの忌まわしき事件から早十年。十五歳になった百合奈はしか...
あの後、両親を失った二人は、慧音の計らいにより人里であん...
子供の無かった老夫婦は、ひ孫ほども差のある二人の子供を、...
老夫婦には寺子屋に行く金が工面出来なかったが、慧音の取り...
そして百合奈は今、老夫婦のあんみつ屋で手伝いをしながら、...
「……眠れない」
悪夢にうなされたせいで目が冴えてしまった百合奈は、外の空...
「すぅー……はぁー……すぅー……はぁー……」
何度か深呼吸すると動機も収まって来た。涼しい夜風が、寝汗...
「クシュン!……風邪引いちゃうし、もう戻ろうかな……」
そう呟き、踵を返そうとした彼女の目に、一つの人影が飛び込...
それは、一見すれば人里の守護者・上白沢慧音の姿であった。...
いつも着ている紺色の服は、今夜に限って何故か緑色だった。...
半信半疑のまま、百合奈はとりあえず呼びかけて見る事にした。
「慧音先生……?」
その人物は呼びかけに振り向き、呼びかけた百合奈の方へと駆...
「あぁ、やっぱり慧音先生だっ――!?」
何かに安堵して慧音に話しかけようとした百合奈の声が、中途...
「けい……ね、せんせ……」
慧音の頭に付いていたのは、二本の角だった。慧音のお尻に付...
「ゆ、百合奈、違うんだ。これは……」
顔を真っ青にした慧音が百合奈に話しかける、が百合奈はもう...
「う、う、うわああああああ!!!」
深夜の人里に絶叫が響く。走り去る悲鳴に一人取り残された慧...
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あんなに優しくしてくれた慧音が、実は妖怪だった。その事実...
いや、それ以上に彼女を傷つけたのは、その驚くべき事実を、...
慧音自身も、老夫婦も、寺子屋の友人たちも、店に来るお客さ...
そんな悲し過ぎる事実に、百合奈は酷く傷つき、そして熱を出...
寝込んでしまった百合奈だったが、老夫婦の看病も、慧音や友...
心を固く閉ざした百合奈に近寄れたのは唯一、妹の杏子だけで...
数日して熱は下がり、普通に食事も出来るようになった。しか...
店に出て来なくなった百合奈を客たちも心配したが、心配や同...
店は活気を失い、伝染するように里全体が活気を失って行く。...
「お姉ちゃん、入るよー?」
杏子が、百合奈の分の夕飯を持って部屋へと訪れた。
「ありがと」
一言で返答する百合奈に、杏子は続ける。
「今日は私もここで食べたいんだけど、いい?」
「……別に、いいわよ」
百合奈は覇気の無い声でそう呟いた。
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「……ねぇ、お姉ちゃん?」
「なぁに」
しばらく無言で箸を進めていた二人。先に沈黙を破ったのは杏...
「まだ……怒ってるの?」
「…………」
「本当に、申し訳ないと思ってるって……言ってたよ」
あえて主語を省く杏子にイライラしながら、百合奈は無言を貫...
「確かに慧音先生が……人間じゃなかったって知った時は、私も...
「…………」
なおも無言を貫き続ける百合奈の剣幕に尻すぼみになって行く...
「でも、慧音先生が、私たちを助けてくれた事は変わらないで...
「…………」
必死の訴えにも無反応な百合奈に、杏子のボルテージは上がっ...
「慧音先生は確かに人間じゃなかった、けど……!」
「……じゃあ」
ずっと口を閉ざしていた百合奈が、低い声で呟く。そして立ち...
「じゃあ、何で教えてくれなかったのよ! ずっと優しくして...
百合奈の大声に気圧され、杏子は一気に縮こまる。
「そ、それは……」
「それは……君に嫌われたくなかったからだ」
突然襖の外から声がして、百合奈も杏子も飛び上がった。程な...
「全て、私が悪いんだ……」
そう言って、慧音は話し始めた。立ちあがっていた百合奈も、...
「事件直後の百合奈は、妖怪と言う存在に親を殺され……妖怪を...
百合奈も杏子も、その話に耳を傾ける。
「だから、私は百合奈の心がある程度安定した頃に……寺子屋を...
そこで言葉を一旦切り、そして慧音は、昔の自分を責めるよう...
「それを打ち明けて、君に嫌われたり、怖がられたりするので...
そこでまた言葉を切ると、慧音は百合奈の方をまっすぐ見据え...
「真実を言ってしまったら、今のように心を閉ざしてしまうの...
里のみんなにこの事を伝えるなと言っていたのも私だ。だから...
言いかけた慧音を老夫婦が否定した。
「いえ、我々も結局同じ事を考えていたのですから、慧音様だ...
「とにかく、全てが私の……私達のエゴだ。本当に、済まなかっ...
そう言って、慧音は深々と頭を下げた。後ろでは老夫婦も、同...
「……お姉ちゃん」
杏子がそっと呼びかける。百合奈は溢れ出る涙を拭うと、呟い...
「みんな、私の事考えてくれてたのに……私は……」
「いや、結局は自分の事を――」
「うぅん。それでも、私の事を考えてくれてた……なのに私は」
百合奈は体ごとしっかり慧音たちに向き直ると、立ち上がって...
「本当にごめんなさい……そしてもしよければ、これからもよろ...
老夫婦が涙を零した。慧音もまた頬を伝う涙を拭いながら、言...
「ありがとう……百合奈」
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数日後。
「いらっしゃいませ!」
店には、再び活気が戻っていた。言うまでも無く、百合奈が仕...
「杏子ー、特製京あんみつ三つー!」
「おっけー!」
百合奈がどこか楽しげな声で注文を伝える。杏子もいつもの数...
そんな姉妹のやり取りに、客たちも自然と幸せな気持ちになっ...
百合奈の妖怪嫌いが治ったわけではない。だが、慧音が妖怪だ...
慧音も、長きに渡って背負っていた重荷を取り去ることが出来...
百合奈はふと、両親の事を思い出す。それはあまりにも悲しい...
もしあそこで妖怪が私を狙っていたら、父さんが呆然とする私...
そう思い、心の中で小さく、お礼をした百合奈であった。
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今日も、百合奈の声が店に響く。この、人里でも最も有名とな...
「いらっしゃいませー!」
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