ラジオショックのまとめ
涼風 京香SS をテンプレートにして作成
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* SS本文 [#xd2292f6]
タイトル:向日葵の海に咲く
~
~
目を覚ますと、そこはまるで見覚えの無い場所だった。
「ここは……どこ?」
キョロキョロと周囲を見渡してどこだかを確認しようとするが...
そこで今度は飛び上がって辺りを確認してみたが、やはり自分...
こうしていても仕方ないので、私はここに来る前の事を必死に...
「確か……」
最後に意識があったのは、私がまだ種だった時だ。
栄養をたくさんもらってどんどん大きくなって行った私や、仲...
そろそろ地面に落ちて芽を出そう……って思っていた時に、それ...
突然の強風が、私たちを襲ったのだ。
必死にしがみつき、飛ばされぬよう踏ん張るみんな。でも私は...
その一瞬の内に、私はみんなから離され、勢いよく飛ばされて...
おそらくその時意識を失ったのだが、その間に風に乗ってここ...
「どうしよう……」
みんなのところへ戻ろうと思っても、どこを目指せばいいかわ...
「……やっぱり」
地面を確認して、ため息を一つ。
私は、いや私が宿る種は、既にこの地に根を下ろし、芽を出し...
私にはどうする事も出来ないとわかって、またため息。これ以...
「上手く暮らしていけるかなぁ……」
~
~
~
ここは太陽の畑。幻想郷でも屈指の広さを誇るその草原は、そ...
どこを見渡しても向日葵、向日葵、向日葵。その光景は、空か...
そんな草原のほぼ中心に、ポツンと一つ、小さな小さな芽があ...
そびえ立つ向日葵たちの隙間を縫って芽吹いたばかりであろう...
向日葵以外の種が風に乗ってここに辿り着くことは珍しい話で...
その点で、ここで芽を出したこの植物は、例外中の例外であっ...
この植物――キキョウは、発芽が良く根も強靭としてよく知られ...
そしてそんなキキョウでも、今置かれている状況が厳しい事に...
自然現象には、必ず妖精が宿る。もちろん向日葵の一つ一つに...
総じて太陽と悪戯が大好きな、向日葵の妖精。彼女たちの悪戯...
向日葵の妖精たちは、自らを宿す向日葵の花を動かし、キキョ...
そんな、悪戯と言うより意地悪な行為を受けるその妖精は、太...
「どこから来たのよ、あなた」
「変な色ー」
「早くどっか行ってよね」
向日葵の妖精たちは口々に軽蔑の言葉を京香に浴びせる。
「やめて……意地悪、しないで……」
「意地悪なんかしてないよ、私たちは陽を浴びたいだけだもー...
「そーそー、こんなとこに来るあなたがいけないのよ」
彼女の必死の訴えにも、向日葵の妖精たちは耳を貸さない。
(どうして、こんなところに来ちゃったんだろう……)
気の弱い彼女は、惨めな気持ちで座り込み、空を見上げた。
(帰りたいよ……みんなのところに、帰りたいよぅ……)
太陽の畑を、一人の女性が歩いていた。
真っ赤な服に身を包み、上品な日傘を差した、緑髪の女性。
一見するとただの人間に見える彼女は、しかし人間では無い。
『四季のフラワーマスター』の異名を持つ彼女――風見幽香は、...
幻想郷でも指折りの古参とも言われる彼女は、この太陽の畑に...
何をするでもなく歩いていた幽香が、ふと歩みを止める。その...
気になった幽香が一飛びでその場へ向かうと、そこでは向日葵...
「あなたたち、何してるの?」
幽香がよく通る声でそう言うと、その姿に気づいた黄色い妖精...
一体何が……と怪訝に思った幽香はふと、一人その場に蹲る小さ...
桃色のワンピースを着て、青紫色の髪をしたその妖精。その姿...
妖精の傍には何かの芽が生えていた。当然のように花に詳しい...
何故ここに、と思いながら、彼女は妖精に声をかけた。
「ちょっと、そこのあなた?」
~
~
~
突然後ろから声を掛けられて、蹲っていた私は思わず跳び上が...
恐る恐る振り返ると、そこには一人の女性が立っていた。
「あなた……キキョウの妖精ね?」
女性が私にそう聞いて来たので、私は素直に頷き、名前を名乗...
「はい。私……涼風京香、と言います」
「ふぅん……キキョウ……キキョウねぇ」
返されたその言葉に、私は言い知れぬ恐怖を感じた。やはりこ...
加えて、この人からは底知れぬ力を感じる。ひょっとすると、...
そんな恐怖に再び全身を震わせながら、おずおずと話しかけよ...
「あ、あの……」
そんな私に、
「向日葵の海に咲く一輪のキキョウ……なかなか良さそうじゃな...
「……!」
思いもかけぬ言葉が返ってきて、私はまた驚く事になった。
と、その女性は屈みこみ、私の額に触れて来た。突然間近に顔...
「あら……元気が無いわね。大方、あの子たちに邪魔されたんで...
「ぇと……その……」
「そんなんじゃ、蕾をつける前に枯れちゃうわよ? もっと頑...
言いつつ、女性は私を抱き上げる。直後、抱き上げた指の先か...
「これでとりあえずは大丈夫ね。でも、これからは自分で光を...
そう言われて自信を失くす私だったが、折角助けてもらったん...
「ありがとうございます、えぇと……」
中途、何と呼べばいいのかわからなかった私に、女性は名乗っ...
「あぁ、名乗って無かったわね。私は幽香。風見幽香よ」
「幽香さん、助けてくださってありがとうございます」
「お礼は花を咲かせた時に頂くわ。じゃ、頑張ってね」
そう言って、幽香さんは立ち去って行った。
(もう少し……頑張って、みようかな)
あの人に、綺麗に咲いた私の姿を見て欲しい。無意識の内にそ...
~
~
~
幽香に助けられてから、京香は何とかして太陽の光を浴びよう...
最初の内はそれを邪魔してからかっていた向日葵の妖精たちも...
努力が実ってか、妖精の飽きっぽさが功を奏してか、京香は大...
数日後には小さかった芽が少し大きくなり、数週間後には大き...
その頃になると周りの妖精たちも京香を馬鹿にすることはしな...
数ヶ月も経つと、茎の先には風船にも似た緑色の蕾が出来てい...
そして、夏の日差しが煌々と照りつける、八月のある日。
周りの向日葵たちが次々と咲いて行く中、未だ蕾のままでいた...
「あらあら、随分と綺麗に咲いたわねぇ」
これまでも数え切れない程の花を見てきた幽香をしてそう言わ...
「えへっ、ありがとうございます!」
嬉しそうに笑いながらそう言う京香。幽香も満足げに、咲いた...
「これでこそ、助けた甲斐があったというものね。フフッ」
「あの時は本当に、ありがとうございましたっ」
「いいのよ。こんな綺麗な花が見れたのだから、それで私は満...
京香の礼に、ひらひらと手を振りながら答える幽香。その言葉...
「あの……幽香さん」
「何?」
「ぁ……ぇと……ご、ごめんなさい、何でもないです!」
何かを言いかけて、途中で首を振りながらやめる。当然幽香は...
「え? 何よそれ、気になるじゃない」
「や、本当に、何でもないんですっ!」
珍しく強い口調で言う京香。幽香も深くは追求しなかった。
「そう……まぁいいわ。じゃ、私は行くところがあるから」
「どこへ?」
「神社の宴会に呼ばれてね……地底の妖怪も招いたって言うし、...
「そうですか……行ってらっしゃいませ!」
飛び去る幽香を見送りながら、京香はため息を一つ。
「私ったら……勢いに任せて何を言おうと……」
そんな声は、もちろん幽香には届かない。届かせない。
幽香さんが帰って来たのは、翌日の明け方になった頃だった。
全身に疲れを滲ませ帰って来た幽香さんの顔色が心なしか悪い...
太陽が高く昇った昼、幽香さんは目覚めて私のところに来た。...
「だ、大丈夫ですか?」
「うーん……何だかだるいのよねぇ……二日酔いがまだ抜けないな...
ドサッ、と。
私の目の前で、幽香さんが崩れ落ちた。
~
~
~
このまま陽に照らされては幽香さんが危ない。そう感じた私は...
程なく、幽香さんは意識を取り戻す。さらに悪くなっている顔...
「幽香さん、幽香さん!」
「へ、平気よこれくら……ゲホッ、ゲホッ!」
言葉とは裏腹に激しく咳き込む幽香さん。普段からは考えられ...
「こうなったら……私の力を、使うしか……!」
「あなたの……力?」
怪訝そうに聞く幽香さん。時間が無いとわかりつつも、私は説...
「はい。キキョウに薬効があるのはご存知ですよね? その具...
強力な妖怪をここまで苦しめる病気に効くのかわからない、と...
「そうなの……じゃあ、お願いしようかしらね。あまり苦しいの...
幽香さんに了承を貰うと、私は幽香さんの両手を握った。その...
「じゃあ、行きますよ……ッ!」
そう言って、私は繋いだ手に癒しの力を流し込み始めた。少し...
軽い病気ならすぐ治せていた力の量を流しても、心なしか顔色...
私の力は、もちろん無限ではない。それどころか、全然強い方...
力をたくさん使ったせいで、徐々に息が上がってくる私。幽香...
「京香……? 少し良くなってきたから、ちょっと休憩しても」
「いいえ! 中途半端に治すのが一番危ないんです!」
幽香さんの言葉を強い口調で跳ねのける私。それほどまでに、...
五分も経っただろうか、ふいに幽香さんの手から感じられてい...
「っ……ぅ……えぇいっ!」
繋いでいた手から光が迸り……瘴気が、消えた。
「ハァ、ハァ……」
肩で息をする私に、自力で立ち上がれるほどに回復した幽香さ...
「ありがと……凄いじゃない、あなたにそんな力があったなんて」
「ハァ……ハァ……いえ、これぐらい全然……」
唐突に、幽香さんの顔が揺らぐ。
「……! 京香、あなた……!?」
「ぇへへ……これで、あの時の借りは、返せ、まし、た……よ……」
揺らいでいた幽香さんの顔が、急に下に振れる。直後、後頭部...
「京香! 京香!?」
幽香さんの叫びが遠くに聞こえて……視界が、暗くなって……
~
~
~
目を開けると、そこは真っ暗だった。真っ暗で、目を開けたの...
「そっか……私は」
幽香さんを治すために力を注ぎこみ続けた結果、私の中の力を...
と言う事は、私は。
「もう……幽香さんに、会えないのかな……?」
折角治ってくれたのに。折角恩返しが出来たのに。
無謀な事だとは分かっていた。だから、こうなることも予想し...
「そうだ……治しても、会えないんじゃ……」
もっともっと、幽香さんと一緒にいたかった。もっともっと、...
何よりも辛かったのは、幽香さんが、自分のせいで私が……と悔...
思わず涙が溢れそうになった時、目の前が突然、光った。
ビックリしている間にも、光はどんどん大きくなって行く。本...
重い体を必死に引きずり、光の方へ……
~
~
「京香! 京香しっかりして!」
「……ん……?」
幽香に揺さぶられていた京香が、僅かに声を漏らす。
「京香!」
幽香の声を聞いて、京香がゆっくりと、微笑んだ。
「幽香……さん」
「もう! 無茶して……心配したんだから」
そう言う幽香の手からは、妖気が漏れ出ていた。京香を助ける...
「……助けたつもりだったのに、助けられちゃいましたね」
「本当よ、全く……結局借り一つじゃない」
二人は言い合って、顔を見合わせて……そしてどちらともなく、...
「京香……フフッ、ありがとね」
「幽香さんこそ、ありがとうございました……えへっ」
~
~
~
次の日、元気になった幽香さんと、元気になった私は、私が宿...
「これは……」
「……ちょっと、妖力注ぎ過ぎたかしらねぇ?」
周りの向日葵に隠れる程度の高さだったそのキキョウは、逆に...
だが何より興味深いのは花の数だ。上部で幾重にも枝分かれし...
「まぁ、これはこれで……いいんじゃないかしら?」
「そう……ですね!」
そう言って、私は幽香さんに抱きついた。
「あらっ」
「幽香さん……大好きですよっ」
「あらあら、嬉しい事言ってくれるじゃない。私も大好きよ」
幽香さんは、私の言葉を本気には取っていない。でも……今は、...
私がこの想いを伝えるか、伝えないかは、私が決める事。言え...
でも、昨日みたいな事があると……早めに伝えたくなっちゃうか...
それでもやっぱり恥ずかしいので、せめてもと幽香さんを強く...
(私……ここに生まれて、良かった!)
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~
Fin.
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タイトル:向日葵の海に咲く
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目を覚ますと、そこはまるで見覚えの無い場所だった。
「ここは……どこ?」
キョロキョロと周囲を見渡してどこだかを確認しようとするが...
そこで今度は飛び上がって辺りを確認してみたが、やはり自分...
こうしていても仕方ないので、私はここに来る前の事を必死に...
「確か……」
最後に意識があったのは、私がまだ種だった時だ。
栄養をたくさんもらってどんどん大きくなって行った私や、仲...
そろそろ地面に落ちて芽を出そう……って思っていた時に、それ...
突然の強風が、私たちを襲ったのだ。
必死にしがみつき、飛ばされぬよう踏ん張るみんな。でも私は...
その一瞬の内に、私はみんなから離され、勢いよく飛ばされて...
おそらくその時意識を失ったのだが、その間に風に乗ってここ...
「どうしよう……」
みんなのところへ戻ろうと思っても、どこを目指せばいいかわ...
「……やっぱり」
地面を確認して、ため息を一つ。
私は、いや私が宿る種は、既にこの地に根を下ろし、芽を出し...
私にはどうする事も出来ないとわかって、またため息。これ以...
「上手く暮らしていけるかなぁ……」
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ここは太陽の畑。幻想郷でも屈指の広さを誇るその草原は、そ...
どこを見渡しても向日葵、向日葵、向日葵。その光景は、空か...
そんな草原のほぼ中心に、ポツンと一つ、小さな小さな芽があ...
そびえ立つ向日葵たちの隙間を縫って芽吹いたばかりであろう...
向日葵以外の種が風に乗ってここに辿り着くことは珍しい話で...
その点で、ここで芽を出したこの植物は、例外中の例外であっ...
この植物――キキョウは、発芽が良く根も強靭としてよく知られ...
そしてそんなキキョウでも、今置かれている状況が厳しい事に...
自然現象には、必ず妖精が宿る。もちろん向日葵の一つ一つに...
総じて太陽と悪戯が大好きな、向日葵の妖精。彼女たちの悪戯...
向日葵の妖精たちは、自らを宿す向日葵の花を動かし、キキョ...
そんな、悪戯と言うより意地悪な行為を受けるその妖精は、太...
「どこから来たのよ、あなた」
「変な色ー」
「早くどっか行ってよね」
向日葵の妖精たちは口々に軽蔑の言葉を京香に浴びせる。
「やめて……意地悪、しないで……」
「意地悪なんかしてないよ、私たちは陽を浴びたいだけだもー...
「そーそー、こんなとこに来るあなたがいけないのよ」
彼女の必死の訴えにも、向日葵の妖精たちは耳を貸さない。
(どうして、こんなところに来ちゃったんだろう……)
気の弱い彼女は、惨めな気持ちで座り込み、空を見上げた。
(帰りたいよ……みんなのところに、帰りたいよぅ……)
太陽の畑を、一人の女性が歩いていた。
真っ赤な服に身を包み、上品な日傘を差した、緑髪の女性。
一見するとただの人間に見える彼女は、しかし人間では無い。
『四季のフラワーマスター』の異名を持つ彼女――風見幽香は、...
幻想郷でも指折りの古参とも言われる彼女は、この太陽の畑に...
何をするでもなく歩いていた幽香が、ふと歩みを止める。その...
気になった幽香が一飛びでその場へ向かうと、そこでは向日葵...
「あなたたち、何してるの?」
幽香がよく通る声でそう言うと、その姿に気づいた黄色い妖精...
一体何が……と怪訝に思った幽香はふと、一人その場に蹲る小さ...
桃色のワンピースを着て、青紫色の髪をしたその妖精。その姿...
妖精の傍には何かの芽が生えていた。当然のように花に詳しい...
何故ここに、と思いながら、彼女は妖精に声をかけた。
「ちょっと、そこのあなた?」
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突然後ろから声を掛けられて、蹲っていた私は思わず跳び上が...
恐る恐る振り返ると、そこには一人の女性が立っていた。
「あなた……キキョウの妖精ね?」
女性が私にそう聞いて来たので、私は素直に頷き、名前を名乗...
「はい。私……涼風京香、と言います」
「ふぅん……キキョウ……キキョウねぇ」
返されたその言葉に、私は言い知れぬ恐怖を感じた。やはりこ...
加えて、この人からは底知れぬ力を感じる。ひょっとすると、...
そんな恐怖に再び全身を震わせながら、おずおずと話しかけよ...
「あ、あの……」
そんな私に、
「向日葵の海に咲く一輪のキキョウ……なかなか良さそうじゃな...
「……!」
思いもかけぬ言葉が返ってきて、私はまた驚く事になった。
と、その女性は屈みこみ、私の額に触れて来た。突然間近に顔...
「あら……元気が無いわね。大方、あの子たちに邪魔されたんで...
「ぇと……その……」
「そんなんじゃ、蕾をつける前に枯れちゃうわよ? もっと頑...
言いつつ、女性は私を抱き上げる。直後、抱き上げた指の先か...
「これでとりあえずは大丈夫ね。でも、これからは自分で光を...
そう言われて自信を失くす私だったが、折角助けてもらったん...
「ありがとうございます、えぇと……」
中途、何と呼べばいいのかわからなかった私に、女性は名乗っ...
「あぁ、名乗って無かったわね。私は幽香。風見幽香よ」
「幽香さん、助けてくださってありがとうございます」
「お礼は花を咲かせた時に頂くわ。じゃ、頑張ってね」
そう言って、幽香さんは立ち去って行った。
(もう少し……頑張って、みようかな)
あの人に、綺麗に咲いた私の姿を見て欲しい。無意識の内にそ...
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幽香に助けられてから、京香は何とかして太陽の光を浴びよう...
最初の内はそれを邪魔してからかっていた向日葵の妖精たちも...
努力が実ってか、妖精の飽きっぽさが功を奏してか、京香は大...
数日後には小さかった芽が少し大きくなり、数週間後には大き...
その頃になると周りの妖精たちも京香を馬鹿にすることはしな...
数ヶ月も経つと、茎の先には風船にも似た緑色の蕾が出来てい...
そして、夏の日差しが煌々と照りつける、八月のある日。
周りの向日葵たちが次々と咲いて行く中、未だ蕾のままでいた...
「あらあら、随分と綺麗に咲いたわねぇ」
これまでも数え切れない程の花を見てきた幽香をしてそう言わ...
「えへっ、ありがとうございます!」
嬉しそうに笑いながらそう言う京香。幽香も満足げに、咲いた...
「これでこそ、助けた甲斐があったというものね。フフッ」
「あの時は本当に、ありがとうございましたっ」
「いいのよ。こんな綺麗な花が見れたのだから、それで私は満...
京香の礼に、ひらひらと手を振りながら答える幽香。その言葉...
「あの……幽香さん」
「何?」
「ぁ……ぇと……ご、ごめんなさい、何でもないです!」
何かを言いかけて、途中で首を振りながらやめる。当然幽香は...
「え? 何よそれ、気になるじゃない」
「や、本当に、何でもないんですっ!」
珍しく強い口調で言う京香。幽香も深くは追求しなかった。
「そう……まぁいいわ。じゃ、私は行くところがあるから」
「どこへ?」
「神社の宴会に呼ばれてね……地底の妖怪も招いたって言うし、...
「そうですか……行ってらっしゃいませ!」
飛び去る幽香を見送りながら、京香はため息を一つ。
「私ったら……勢いに任せて何を言おうと……」
そんな声は、もちろん幽香には届かない。届かせない。
幽香さんが帰って来たのは、翌日の明け方になった頃だった。
全身に疲れを滲ませ帰って来た幽香さんの顔色が心なしか悪い...
太陽が高く昇った昼、幽香さんは目覚めて私のところに来た。...
「だ、大丈夫ですか?」
「うーん……何だかだるいのよねぇ……二日酔いがまだ抜けないな...
ドサッ、と。
私の目の前で、幽香さんが崩れ落ちた。
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このまま陽に照らされては幽香さんが危ない。そう感じた私は...
程なく、幽香さんは意識を取り戻す。さらに悪くなっている顔...
「幽香さん、幽香さん!」
「へ、平気よこれくら……ゲホッ、ゲホッ!」
言葉とは裏腹に激しく咳き込む幽香さん。普段からは考えられ...
「こうなったら……私の力を、使うしか……!」
「あなたの……力?」
怪訝そうに聞く幽香さん。時間が無いとわかりつつも、私は説...
「はい。キキョウに薬効があるのはご存知ですよね? その具...
強力な妖怪をここまで苦しめる病気に効くのかわからない、と...
「そうなの……じゃあ、お願いしようかしらね。あまり苦しいの...
幽香さんに了承を貰うと、私は幽香さんの両手を握った。その...
「じゃあ、行きますよ……ッ!」
そう言って、私は繋いだ手に癒しの力を流し込み始めた。少し...
軽い病気ならすぐ治せていた力の量を流しても、心なしか顔色...
私の力は、もちろん無限ではない。それどころか、全然強い方...
力をたくさん使ったせいで、徐々に息が上がってくる私。幽香...
「京香……? 少し良くなってきたから、ちょっと休憩しても」
「いいえ! 中途半端に治すのが一番危ないんです!」
幽香さんの言葉を強い口調で跳ねのける私。それほどまでに、...
五分も経っただろうか、ふいに幽香さんの手から感じられてい...
「っ……ぅ……えぇいっ!」
繋いでいた手から光が迸り……瘴気が、消えた。
「ハァ、ハァ……」
肩で息をする私に、自力で立ち上がれるほどに回復した幽香さ...
「ありがと……凄いじゃない、あなたにそんな力があったなんて」
「ハァ……ハァ……いえ、これぐらい全然……」
唐突に、幽香さんの顔が揺らぐ。
「……! 京香、あなた……!?」
「ぇへへ……これで、あの時の借りは、返せ、まし、た……よ……」
揺らいでいた幽香さんの顔が、急に下に振れる。直後、後頭部...
「京香! 京香!?」
幽香さんの叫びが遠くに聞こえて……視界が、暗くなって……
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目を開けると、そこは真っ暗だった。真っ暗で、目を開けたの...
「そっか……私は」
幽香さんを治すために力を注ぎこみ続けた結果、私の中の力を...
と言う事は、私は。
「もう……幽香さんに、会えないのかな……?」
折角治ってくれたのに。折角恩返しが出来たのに。
無謀な事だとは分かっていた。だから、こうなることも予想し...
「そうだ……治しても、会えないんじゃ……」
もっともっと、幽香さんと一緒にいたかった。もっともっと、...
何よりも辛かったのは、幽香さんが、自分のせいで私が……と悔...
思わず涙が溢れそうになった時、目の前が突然、光った。
ビックリしている間にも、光はどんどん大きくなって行く。本...
重い体を必死に引きずり、光の方へ……
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「京香! 京香しっかりして!」
「……ん……?」
幽香に揺さぶられていた京香が、僅かに声を漏らす。
「京香!」
幽香の声を聞いて、京香がゆっくりと、微笑んだ。
「幽香……さん」
「もう! 無茶して……心配したんだから」
そう言う幽香の手からは、妖気が漏れ出ていた。京香を助ける...
「……助けたつもりだったのに、助けられちゃいましたね」
「本当よ、全く……結局借り一つじゃない」
二人は言い合って、顔を見合わせて……そしてどちらともなく、...
「京香……フフッ、ありがとね」
「幽香さんこそ、ありがとうございました……えへっ」
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次の日、元気になった幽香さんと、元気になった私は、私が宿...
「これは……」
「……ちょっと、妖力注ぎ過ぎたかしらねぇ?」
周りの向日葵に隠れる程度の高さだったそのキキョウは、逆に...
だが何より興味深いのは花の数だ。上部で幾重にも枝分かれし...
「まぁ、これはこれで……いいんじゃないかしら?」
「そう……ですね!」
そう言って、私は幽香さんに抱きついた。
「あらっ」
「幽香さん……大好きですよっ」
「あらあら、嬉しい事言ってくれるじゃない。私も大好きよ」
幽香さんは、私の言葉を本気には取っていない。でも……今は、...
私がこの想いを伝えるか、伝えないかは、私が決める事。言え...
でも、昨日みたいな事があると……早めに伝えたくなっちゃうか...
それでもやっぱり恥ずかしいので、せめてもと幽香さんを強く...
(私……ここに生まれて、良かった!)
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