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佐々木さん_SS

Last-modified: 2010-06-06 (日) 07:33:02 (2544d)

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僕○第96回


 あぁ……どうしてこんなことになったのだろうか? あまりの突拍子のない事態に対して私は思わず現実逃避してしまいたくなる。いやむしろ現実逃避することにした。
 そもそもこうなった原因は数時間前――いや、もっともの根源はいつの間にかいなくなった彼女のせい……ならば根本をただせば彼女に出会った所為ともいえるわね、うん。


 東風谷早苗。色々と謎に満ちた少女。彼女が私を変えた。彼女がいなければ私は今でもつまらない人生を送っていただろう。それについては感謝する……するけど……!!
「さっすがにこれはありえないにゃぁあああああっ!!!!」
 外向けのキャラを想わず続けるぐらいテンパって現実逃避一旦終了。続けて現状把握。ここは山。守矢神社は山奥だからそれはいい。だが……。
「そこな不審な人間! 神妙にお縄につきなさい!」
 ケモ耳。和装のコスプレ娘に追われるのはいただけない。しかも矢鱈切れ味よさそうな刃持ってるとかマジで危険極まりない。
「にゃぁああああっ!! んなもん持ってる奴相手に止まって捕まるわけにゃいだろうがぁあああっ!!!!!」
 私は全力で走る。山を駆け抜ける事は1度や2度ではないので走り方は心得ている。下手に躓いたり、ぶつかったりなどはしない。これは父親の長い転勤の間に山などもいった事があるからだ。ありがとう親父様。だが……。
「山の駆け方は心得ているようですが……惜しむらくは体力ですね」
「にゃふぅ……にゃふぅ……」
 そう。先ほどからの長い追いかけっこで私の体力はすでに限界に近くなっている。これは、途中から人付き合いを面倒くさがってサッカーやらの転校生御用達の触れ合いツール怠った故の体力現象である。怨むぞ過去の私。
 そんな事を考えている内に、ケモ耳コスプレ娘との距離が縮まっていく。あぁ……二次元崇拝の悪影響はこんなところにも表れていたのですね。だが! しかし!!
「諦めてたみゃるかぁああああっ!!!!!」
 私はまだ駆け続ける。なんとかして山を下って警察まだ駆けこめば――いや、その前に人目が多い場所に辿り着ければこのケモ耳コスプレ二次元崇拝刀娘も諦めざるを得ないだろう。私はそう信じて走っていたはず……だった。
「にゃんで私は上に登ってるのにゃっ!?」
「意図して登っていたわけではないようですね。ですが、侵入者は許さぬ命なので」
 どうやら無意識のうちの逃走ルートは偶然にも山を登る形となっていたのだ。それは体力の減りも激しいはずだ。
「にゃふぅ……にゃふぅ……最早ここまでか……。体力の限界ここに極まれりにゃ……」
「人にしてはよく頑張りました。しかし……昨今の人間は変わった語りをするのですね。まるで猫又の様な……」
 後ろからケモ耳コスプレ二次元崇拝刀娘の声が間近に聞こえる。私は残る力を以て獣道を抜け……そこで体力の限界に達し倒れた。最後に見えたのは……見覚えのある神社の姿だった。




 懐かしい夢を見た。東風谷早苗がいなくなる前、私は早苗と神について語らっていた。
「さな吉いいかにゃ? 神はいないにゃ」
「そんなことはありません! 神も奇跡もあります! 佐々木さんも私の御業は御覧になったでしょう?」
 さな吉の御業――風が吹いたり何かすごい事が起こったりするというもの。確かにそれそのものは神の業と称されるに相応しきものだろう……だけれど。
「にゃるほど……でも、それは神の業ではなく、さな吉の業と見られてるにゃ。さな吉の言う神は信仰のもの。これではさな吉の言う神は存在しないにゃ」
 こうは言うものの、私は根本から神の存在を信じてはいない。これらはさな吉の言葉をもとにいっているだけ。だが、それゆえにさな吉にはよくささる。
「それはっ!!」
「八百万の神々とは万物すべてが神足りえるというもの。それは逆を返せば、すべては神足りえないとも言えるにゃ」
 私はそこで一息つく。
「まぁ、これはあくまで私の持論にゃ。私は神を信じない。そしてさな吉の言う様に信仰が神を形作るとすれば……この日本には――少なくともここには神は存在しないにゃ。目に見えぬものを信仰する時代はとうの昔に過ぎていったのにゃ」






「うぅん、ここ……は?」
 私は目を覚ます。どうやら死んではいないようだ。何故なら私は死後の世界なんて信じてないからである。
 周りを見渡す。どうやらここは神社の様だ……神社? そう言えば、気を失う前に……。
「目が覚めましたか?」
「さな……吉……?」
 そこに居たのは紛れもなくさな吉だった。そして私はハッとする。そう言えば私はケモ耳コスプレ二次元崇拝刀娘に追われていたのだった。
「さな吉! ケモ耳コスプレ二次元崇拝刀娘は!? っていうかさな吉はだいじょぶかにゃ!?」
「椛さんの事ですか? 彼女は白狼天狗でこの山の哨戒をしている方です。彼女には私から言っておきました」
「はにゃ? 天狗? って妖怪の?」
「はい。そうですよ」
「まったまた〜。さな吉も冗談きついにゃ~」
 私はからからと笑う。妖怪なんているはずがない。あれは人が未知を恐れるときの詭弁でしかない。さな吉はきっと頭が弱くなったのだ。もしくはあのケモ耳コスプレ二次元崇拝刀娘の設定か。とそう思い〆た時、奥から一人の女性が浮いてきた。
「早苗飯はまだか? ん……ほぉ、懐かしい娘だな」
「加奈子様! すみません。すぐに用意します!!」
「あぁ、ゆっくりで構わんよ。私はこの娘と話でもしているからな」
 さな吉は慌てて奥にいってしまう。残されたのは私と宙に浮いている謎の女性一人……っていうか宙に浮いている? ホログラムか? にしても投影機とかは見当たらないけど……。
「ふむ。相も変わらず神を信じていないようだな」
「にゃ? 急になんにゃ?」
「あの時お前が早苗に言った事は的を射ていた。そして、お前の言葉でこれをする決心がついた」
「さっきから何言ってるのかさっぱりにゃ。もっとわかりやすく言うにゃ」
 年上の相手に対しての言い方ではないとは思うが、現状が不明すぎるので、仕方なく性急に話を薦めることにした。
「あぁ、そうだったな。ふっ、ならば手短に言うとしよう。ここは幻想郷。お前が否定したものが基本の世界だ」
「私が……否定したもの?」
「そうだ。魑魅魍魎が跋扈する世。そして私が神だ」
(にゃ、にゃにを言っているのだこの人は? あぁ、長野のこの地はいつの間に電波系オタクの住まう地になったのにゃ)
「アキバに帰れ」
 思わず地で喋ったがまぁいいだろう。このぐらいはっきりと言わないとこういうのは理解しない。
「くっくっ。やはりお前はよいな。あそこの湖は見えるな?」
「にゃ? あの湖がどうかした…………にゃ?」
 私が湖を見て、女性が手をかざした次の瞬間湖が二つに分かれた。文字通り真っ二つに。水底も見えた。
「さて、お前の言ではこれで私は神だな。今回は早苗ではなく私がやったわけだがな」
「……え~と、もしや……マジ?」
 狼狽した私を見て、その神といった女性はとてもいい笑みを浮かべて言った。
「現実だ」
「にゃんですとぉおおおおおおっ!!!!!!!??」
 こうして、元無神論者だった私は、このハチャメチャな幻想郷での生活に身を投じることとなってしまった。



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