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っぽい第七弾_五面ボス_REDMOON_SS

Last-modified: 2009-08-21 (金) 06:36:04 (5354d)

SS本文

僕○第25回


Stage5  毒電波の夜 chemical good night


「いよいよ神社が見えてきたわね」
「はい! パチュリー様!」
 出店の並ぶ参道を越え、パチュリー達はついに神社の境内にたどり着いた。二人は神社へと足を踏み出そうする。その瞬間、上空から複数の弾幕が二人を襲った。
「小悪魔! 迎撃!」
「了解です!」
 パチュリーは咄嗟に張ったシールドがじわじわと削られていくのを感じた。
(この感覚……ディスペル? でも、こんな妖精が使えるとは思わないけれど……。例の神社の力と言うやつかしら?)
 パチュリーは頭を振り、火の魔法で妖精を撃墜する。横を見ると、ちょうど小悪魔もあらかた蹴散らしたところだった。
「まさか本命は上とはね。神社に気を取られていたら危ないところだったわ。いくわよ」
「はい!」
 二人は並んで飛翔する。奥に進めば進むほど妖精が強くなっていくが、パチュリーの思考はそこにはなかった。
(何? これ? さっきから、変な感覚が思考を阻害する。これじゃあ、単純な魔法を使えても、スペルカード級の使用は少し制限されそうね)
「パチュリー様っ! 前ですっ!!」
「えっ?」
 繁雑に絡む思考から、小悪魔の声で我に帰った時には、眼前の妖精の攻撃を防ぐのも、避けるのも間に合わない状況だった。
「パチュリー様ぁ!!」
 小悪魔が庇おうとしているのがスローモーションのように見える。そして、それが間に合わないことも見て取れた。
(しくじったわね。防御呪式なしで、耐えれればいいんだけど――)
「恋符 『マスタースパーク』!」
 パチュリーの思考は、眼前から遠方までの妖精達を根こそぎ薙ぎ払う魔砲によって中断させられた。そして、パチュリーはすぐさま、その魔砲の放たれた方を見る。
「随分と苦戦してるじゃないか。だが、ここからはこの魔理沙さんの出番だぜ」
「さっきから変な感覚のせいでうまくスペルが使えないのよね。パチュリーは大丈夫?」
 そこにいたのは、魔理沙とアリスだった。アリスは人形を展開し、小悪魔と組んで、討ち漏らした妖精の迎撃に向かった。
「大丈夫よ。確かに、ここ周辺の何かによって、スペカが使いづらいけれど」
「そうか。それは何よりだぜ。そういえば、霊夢を見なかったか? あいつもこの異変の解決に出てる筈だが」
「いえ、見てないわね。今回の参加は3組なのかしら?」
「いや、後妖夢も参加してるらしいぜ。っと、私たちもそろそろ復帰とするか」
「そうね」
 魔理沙とパチュリーも前線に戻る。それに伴い、アリスと小悪魔は補佐の位置にもどり、前衛2、後衛2の4人編成になる。
 迫りくる妖精達を蹴散らしていると、前方に4つの影が見えた。
「きたわね」
 4つの影の一つ、長身のメイド服を着た妖精がそう言った。
「あ、貴女は」
「知ってるのか! パチュリー!?」
「ええ。彼女は紅魔館の非常勤メイド――ブルーマル・オリエントよ」
「パチュリー様でしたか。しかし、誰であれここを通すわけにはいきません」
 ブルーマルは冷たい目でパチュリーを見据える。パチュリーもそれに応えようとしたが、魔理沙に手で制される。
「丁度4対4だ。一人一体ずつ倒せばいいだろう?」
「それは私たちが楽出来ていいわね」
「えぇ! せっかくですからもっと霊夢さんの技術をみたいです!」
「ん? ようやく来たのか。せっかく今回は私が異変を解決してやろうと思ったのにな」
 魔理沙が軽口を叩きながら振り返ると、そこには霊夢と早苗がいた。さらには、
「ここら周囲を覆う異質な何か。ここが異変を中心で間違いないみたいですね」
「少しくらいはさぼってもいいんじゃないかねぇ」
 妖夢と小町もそこにいた。
「そう。じゃあ、各チームが一人ずつって訳ね。私達はブルーマル――あそこのメイドの相手をするわ。いいわね? 小悪魔」
「はい。わかりました。ブルーマルさん、手加減はしかねます。すいません」
 パチュリー達はブルーマルと対峙する。
「じゃあ、私たちはあのワンピースのにするわ。一番楽そうだし」
「では、霊夢さん。お手並み拝見といかせて貰います」
「アンタも働くのよ」
「冗談ですよ」
 そう言い、霊夢たちはワンピースの妖精――プライミッツ・ファーマメントと対峙する。
「それなら私達はそこのを倒すとするぜ」
「それで、先に倒したチームが奥の黒幕の下に行くわけね。いいわよ」
 魔理沙とアリスは一番近くにいた皮ジャンを着た妖精――エスティバル・クリミナルと対峙する。
「ならば、私たちの相手は彼女ですか」
「すぐに倒れるような興醒めは無しにしてほしいね(あたいがさぼるためにさ)」
 妖夢と小町は割烹着を着た妖精――オータムナル・フィートと対峙する。
 対峙したそれぞれの妖精は、されどあたかもそこにいる全員に対して告げるかのように声高々に言の葉をあげる。
「「「「我ら四つの季節を統べるもの!」」」」
「私は四季の春――プライミッツ・ファーマメント」
「私は四季の夏――エスティバル・クリミナル」
「私は四季の秋――オータムナル・フィート」
「私は四季の冬――ブルーマル・オリエント
「「「「我らはこの空を守護する命を受けし者! 何人足りともここを通すわけにはいかぬ!!」」」」
 4人の妖精は自己の紹介を終えると、各々が対峙していた相手との戦闘を開始した。


魔理沙たちの場合
「そらそらっ! 一気に蹴散らして黒幕まで一番乗りだぜっ!!」
 魔理沙の速攻にして、高威力の魔法の乱打は、エスティバルとその周囲にいた妖精の攻撃を打ち払いながらも敵陣に降り注ぎ、大規模な爆発を起こさせた。
「ふぅ。随分楽な相手だったぜ。他の妖精と比べると確かに強かったが、この程度じゃな」
「そうね。他はまだ戦闘中みたいだし、先に行きましょう」
「そうだな。これで一番乗りだがはっ」
 アリスに応え、先に進もうとした魔理沙の背中に炎の弾が被弾した。慌てて振り返ると、そこにはまだ戦闘可能なエスティバルと妖精達が弾幕を放ってきていた。
「おいおい。勝手に終わらすにはちと速すぎやしないか? 私はまだ負けたなんて言ってないぜ!!」
 エスティバルは火炎弾と大弾を連続して放ってくる。アリスは人形でそれらを防ぎながら魔理沙の下に駆けつける。
「大丈夫!?」
「ああ。何とか平気だ。しかし、確かに手ごたえはあったはずなんだが……」
「そう。無茶させられないわね。蓬莱、一気に薙ぎ払うわよ!」
「ホラーイ」
 蓬莱人形を術式媒体とし、高密度魔力砲をエスティバルに向かって放つ。エスティバルは回避が間に合わず、直撃して吹き飛ぶ。だが、
「まだだっ! まだ終わらんよ!」
「どんだけ固いのよ!?」
 エスティバルはすぐさま戦線に復帰した。と、そこで魔理沙とアリスは似たようなのを前に見たことがあったのを思い出す。それは、
「ゾンビフェアリー!? ってことはまさか」
「復帰速度の速さから見て、この妖精の能力は……」
「そう。私の能力は超回復。死ぬがすぐに復活して足止めする。アンタ達はここでゲームオーバーさ!」
 その後、逃げようとしても追いつかれ、倒しても復活され、スペカと魔力切れにより、魔理沙たちはこれ以上進むのを断念した。


魔法使いチーム 満身創痍!


妖夢たちの場合
「緩急差の激しい弾幕。タイミングが合わない!」
 妖夢はオータムナルと周りの妖精の織り成す低速弾と高速弾、更にはレーザーまで混ぜた緩急差の激しい弾幕に翻弄されていた。
「小町さん! 貴方の能力で敵の懐まで潜る道を創ってください!」
「仕方ないねぇ。あたいの声と同時に前に飛びな。1,2,3……いまだ!」
「はぁあああ!!」
 距離を限界まで縮めた最短経路を突っ切り、妖夢は単身で敵陣に乗り込み二刀をもって妖精たち切り穿ち、オータムナルへの距離を詰めた。
「覚悟ッ!」
 妖夢は二刀を正眼に構え、オータムナルに振り下ろしたが、決死の覚悟で突っ込んで来た妖精たちによって防がれた。
「中々に強いわね。私の弾幕じゃ押しきれなそう」
「では、降参しますか?」
「ええ、貴女に」
「!? 何をする気ですか!?」
 妖夢は咄嗟に距離をとる。しかし、オータムナルからの追撃などはなく、訝しむ。
「そのまま詰めればそっちの勝ちだったのに、恐れたわね」
「なっ!? しかし! 今から詰め直せば――」
 とそこまで言ったところで妖夢は自分の言葉に疑問を抱く。何を詰めるのか? 何故前方の妖精を倒さねばならないのか? そもそも何故こんな所にいるのか? ぐるぐるとよくもわからない思考をしていると、前方の妖精が声をかけてくる。
「秋の心は移り気。私の能力は気分や思考を別方向へと移行させる。いわゆる思考誘導。貴女達はもう、奥に行く理由もわからず気分も乗らない」
 オータムナルが言っていることが妖夢には理解できなかった。否、理解しようとしても、すぐに別の処に思考が切り替わるため、深く考えられなくなっているのだ。
 その後、妖夢たちは調査目的の方に思考を向けられなくさせられたため、目的不明のまま彷徨い、そのまま祭りでさぼって、後日叱られた。


冥界チーム 満身創痍!


霊夢たちの場合
「私の相手は貴女達ですか〜。まぁいいです。強化された私の力を見せてあげますよ〜」
 プライミッツは周りの妖精と一緒に弾幕を放つ。それは確かにそこらの妖精に比べると高威力かもしれないが、それでも大した脅威には見えなかった。
「……、前の敵に比べると興醒めですね」
「だから楽な相手だって言ったじゃない」
 霊夢と早苗は会話の片手間で弾幕を防ぎ、迎撃する。プライミッツは、攻撃が防がれているのを見て、さらに火力を挙げるものの、二人がかりの結界を突破することは出来ず、しばらく経つとガス欠になった。
「ぜぇ……ぜぇ……はぁ……はぁ……ど、どうだ、参ったか!」
「参ったかと言われても、こっちは疲弊してないし」
「一方的にそっちが攻撃して疲れているだけですよね?」
「う〜! こうなったら、私の能力を見せてやる〜!」
「何か来るわよ」
「はい。警戒ですね」
 霊夢と早苗は警戒したが、特に何も起こらなかった。何か特殊な弾幕が出たわけでもなく、突然肉体にダメージが出たわけでもなく、精神的には……ちょっと悲しさとやるせなさが感じるが、まさかこれが能力という訳でもないだろう。という訳で二人して悩んでいると、プライミッツが二人を見て叫んでいた。
「どう? これが私の能力。感情の伝播!」
「……」
「……」
 どうやら、さっきの悲しさとやるせなさはプライミッツが抱いていた感情らしかった。
 霊夢と早苗は互いに見つめあって頷き、霊夢は陰陽玉を取り出して投擲、早苗がそれを風で加速させてプライミッツと妖精達を蹴散らした。
「さて、さっさと行くわよ。随分と時間食ったみたいだし」
「そうですね」
 霊夢と早苗はされなる上空へと飛び立った。


パチュリー達の場合
「まさかパチュリー様とこうして相対することになるとは思いませんでしたが、ここを通すわけにはいきません。どうかお引き取りを」
「そういう訳にもいかないわ。貴女達の強化についても気になるわ」
「……どうしてもお引きになられませんか?」
「無理よ。わかっているのでしょう?」
「そうですか。では、参ります!」
 ブルーマルは周りの妖精達と組んで、多種多様な弾幕を放ってくる。パチュリーはその様子を見て思考する。
(連携――にしては精度が高すぎる。そもそも、妖精同士では我が強すぎるために連携自体はほとんど出来ないはず。となると想像できるのは支配ないし操作といったところね。更に、今のブルーマルの姿で一番おかしいところは――頭のアンテナ!!)
 パチュリーは炎弾を立て続けに頭のアンテナに向かって放つ。だが、ブルーマルと妖精達の弾幕によってすべての炎弾は打ち消される。
「やはりそこが弱点みたいね」
「はい。ですが、だからこそここには攻撃を入れさせません」
 パチュリーのブラフに対して、ブルーマルはそれを肯定する。ブルーマルと妖精達の弾幕は威力が高く、パチュリーも少し押され気味になる。防戦一方の最中、パチュリーはブルーマルの後方を見る。そこには、戦闘開始からこっそりと移動していた小悪魔がいる。
 小悪魔は身ぶり手ぶりで準備が整ったことを知らせる。パチュリーはそれに視線で応じ、攻勢に転じる。
「さて、そろそろ終わらせるわ。サマーレッド」
 魔導書から放たれた大型の火球がブルーマルの周りの妖精を薙ぎ払う。そして、その隙をついて小悪魔がブルーマルに接近する。
「ブルーマルさん! 覚悟!」
「気付いているわ」
「へ?」
 小悪魔は魔力を込めた掌底をブルーマルに放ったが、ブルーマルは難なく小悪魔の手首をつかみ取り、パチュリーの方に投げ返した。
「これ以上の長期戦は無意味です。よって、これで決めます。四季『冬は早朝』」
 ブルーマルのスペルカード宣言と同時に、周囲から一切の音が消える。横で小悪魔が何か必死に言っているようだったが、ただの口パクにしか見えない。
「○○、○○○○」
 ブルーマルが何かを言ったと同時に、四方八方から小弾がどこからともなく表れ襲ってくる。
(厄介なスペルね。音がないからどこから弾が来るのか予測できず、仲間と意思疎通も許さず、そして何より、スペルカードの宣言が出来ない。流石に宣言なしで使用するわけにもいかないから、ここは通常の魔法だけで相手をするしかないわね)
 パチュリーはそう自身の行動を決め、防御に徹することにした。小悪魔もその様子を見て、パチュリーの下に戻り、防御呪式のサポートに回る。
 それからしばらくの間は防戦一方だった。だが、それは突如として流れを変えた。スペルカードが維持しきれなくなり、崩壊したのである。
「今よ! 小悪魔!」
「はい! 魔符『リトルリトルデビル』!!」
 無数の蝙蝠を模した弾幕が、誘導しながらブルーマルを襲う。スペル終了局後の隙をつかれたブルーマルは回避も防御も出来ず、全弾被弾して倒れた。
「さて、利きたいことは色々あるけれど、それは後にしておくわ。いくわよ小悪魔」
「はい。パチュリー様」
 小悪魔は倒れたブルーマルの方に一瞬視線を配ったが、すぐにパチュリーについていった。
「パチュリー様。あの、ブルーマルさんは」
「ええ、あれは電波ね。さっきから、妙な邪魔をしてたのも同じものみたいね」
「電波……ですか?」
「それほどおかしな話ではないわよ。必要な所のシグナルを強化したり、意思を込めて伝播させれるなら意思疎通も可能になる。さっきのアンテナは送受信対応型だったわ」
「ふむ。そこまで気付いていたか、知識の魔女よ」
「来たわね。黒幕」
 そこにいたのは全身黒尽くめの女性だった。その女性はパチュリーの言葉に頷き、
「そうだな。何をもって黒幕と呼ぶのかは知らんが、仮にこの祭を引き起こし、人妖問わずにここに引きいれた者――ということならば、確かにこの私、アイソリュート・夏摘・フラムウェルが黒幕といえよう」
「随分と口が軽いのね。その調子で何を企んでいるのかも聞けないかしら?」
「パチュリー様。それは流石に――」
「構わんよ。私の目的はただ実験用の素体を得ることだ。つまり――君達の事だよ」
 アイソリュートは軽く笑いながらそういう。彼女の手に持つアタッシュケースからはガチャガチャと金属がぶつかり合う音がする。
「さて、では君達を屈服させ、実験材料にするとしようか」
「御断りね。魔理沙とかは相手がこんなだとわかったから逃げたのかしら?」
「さぁ? まだ戦ってるんじゃないですか?」
「私たちが倒した時には、他の戦闘は既に終わってたでしょうが」
「話し合いは済んだかね。では、始まりだ」
 アイソリュートは宣言と同時に右手を軽く上げる。すると、辺りから無数の妖精達がアイソリュートの下に集う。
「やっぱりそうだったのね。ブルーマルの周囲の妖精と同じく、いえ、貴女の方が強力に妖精を支配操作できるわけね」
 パチュリーの指摘にアイソリュートは感嘆の声を上げる。
「その通りだ。よく見ている。まぁ、自我の弱い妖精でなければ支配など出来んがね。まぁ、私としてもこの毒電波に簡単に支配されるものになど興味はないが」
 アイソリュートはただ静かに右手を前に降ろす。その動作に反応した妖精達が、一斉に弾幕を放つ。
(それにしても、妖精の数が多すぎる。毒電波といっても、祭のあった参道では特に変な感じはしなかったところを見ると、範囲は神社とその周囲だけ。じゃあ、この妖精の数は? 何かに惹かれている? そう、この異変が気になった最初の理由。あの匂い――!!)
 パチュリーはそこで気付いた。異変の最初に気になった匂いがここにきて強くなっている。そして、それに比例して妖精の数も増えていることに。つまりこれは、
「妖精を引き寄せる匂いを放つ何かがあるの!?」
「ほぅ。よく気付いたな。そうだ。私がこの祭を行う――素体を集める――ために用意したもの。薬符『人寄せの香』だ。まぁ、人妖問わずに引き寄せるがな。さて、そろそろけりをつけようか。これがわかるか?」
 アイソリュートはアタッシュケースから一本のフラスコを取り出して揺らす。しかし、それだけだとさっぱり分からなかったため、小悪魔は問い返す。
「いえ、さっぱりわかりませんがなんですか?」
「うむ。これはだな。薬符『全てを溶かす薬』だ」
「……ってそれのどこがスペルですか!? というより、全てを溶かすならなんでそのフラスコは溶けてないんですか!?」
「ふむ。よい着眼点だ。つまりこのフラスコが「薬では溶けないフラスコ」なのだ」
「矛盾してるわね」
「そうだな。では、これを薬符『薬では溶けないフラスコ以外の全てを溶かす薬』と改名しよう」
「パチュリー様〜。突っ込み所が満載でどうしたらいいかわかりませんよ〜。それと、現状でも、数の差で酷いことになってます」
 そう、現状の戦力比は2対102の超状況だった。更に、パチュリーはアイソリュートの相手で手いっぱいの為、実質小悪魔一人で百一体の妖精の相手をしろという状況になっていた。
「仕方ないわね。アレをいくわよ」
「アレですね。わかりました」
 パチュリーと小悪魔が横一列に並ぶ。それと同時に前方に魔法陣が形成される。
「魔法陣を経由した三点式魔力循環炉構築完了。パチュリー様! すぐにでもいけます!」
「魔界よりいでよ魔の者たちよ。召喚『101匹小悪魔大行進』!」
 次の瞬間、魔法陣からいろんな小悪魔が総勢101匹現れ、妖精達と交戦状態に入った。
「それじゃあ小悪魔。向こうの指揮は任せたわよ」
「了解です! パチュリー様!」
「それじゃあ後は貴女だけね」
「そうだな。だが、それはもとよりこちらも同じことだ」
「それじゃ、いこうかしら? 火水木金土符『賢者の石』」
 パチュリーの周囲に、5つの魔導石が浮かぶ。だが、すぐに金と土の石が砕ける。
「ならば、こちらもこの一撃で決めよう。薬符『全てを溶かす薬』」
 アイソリュートは手に持ったフラスコを全力で投擲する。フラスコは飛翔途中で割れ、その中身はパチュリーに向かって襲い――途中で透明な壁にぶつかって、その面に沿ってしたたり落ちた。
「なっ!? 馬鹿なッ!? 全てを溶かす薬だぞ!? 防ぐことは予見していたが、それはいったい何だ!?」
「決まってるじゃない」
 パチュリーは言葉と同時に火と水と木の石を砕く。それによって放たれた魔法がアイソリュートを穿つ。
「そのフラスコと同じ材質のものを作っただけよ。それは「全てを溶かす薬」じゃなくて、「薬では溶けないフラスコ以外の全てを溶かす薬」なのでしょう」
「そうか、この短期間で材質を見抜き、金と土をもって精製したのか。見事だ」
 アイソリュートが倒れたころには、小悪魔たちは既に妖精を倒し切って魔界に帰っていた。
「パチュリー様! これで異変は解決ですね!」
「……そのはずね」
「パチュリー様? 何か気になる事が?」
「ええ、ちょっと気になる事が――」
 パチュリーの思案の邪魔をするかのように、神社の上空を花火が上がり始める。それは幾重にも咲き、見る者の心を惹き付けるようだった。
「小悪魔! 行くわよ!」
「えっ!? どうしたんですか急に!?」
「何かが引っ掛かるの。何もなければそれでいいのだけれど」
 パチュリーは言葉に出来ない不安を抱いたまま、さらなる上空へと飛び立った。


go to next stage.

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