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っぽい第八弾_ラスボス_REDMOON_SSS

Last-modified: 2009-08-22 (土) 10:05:26 (5360d)

SS本文

僕○第26回


「私ももう長くはないようです。眩識、頼みたいことがあります」
「何事でしょうか? 天四國御魂様」
 四界神社の奥部屋の祭壇の前で二人の神が対面して語り合っていた。片や、四界神社を支えし神霊――天四國御魂。片や、天四國御魂に仕える幻灯機の付喪神である眩識。普通に考えれば立場の差は明確だが、二人の間には、形式としての敬語こそあれ、同じ目線、同じ位置で語り合っていた。
「しかし、神霊である天四國御魂様が長くないとは、いったい何事ですか? ……もしや、あの者たちが?」
 天四國御魂は軽く首を振る。
「いいえ、あの方々ではありません。確かに四界を繋ぐこの四界神社を疎ましく思っている方々は多く、あの方々もそれらの一つではありますが、今回の件にあの方々は関与しておりません」
「では、何事で?」
「ええ、それは――」
「もしや、華夏様ですか?」
 天四國御魂がそれをいう際に、遠い目をしたことに眩識は気付き、もしやと思い口にした。
「ええ、よくわかりましたね。でも、あの子にはそのことは決して話さないようにしてね」
「もうお疲れになられたのですか? 威厳が必要だといったのは天四國御魂様ですよ?」
「もういいわよ。どうせ私ももう長くはないのだから」
 天四國御魂はまたも遠い目をする。だが、今回は予測がつかなかったので、眩識は素直に疑問を口にすることにした。
「それで、華夏様が一体何を?」
「それは、あの子が――」
 天四國御魂はそこで一旦息を吐き、間を取り直してはっきりと続ける。
「私の事を神聖化して崇めすぎたからです」
「……はい?」
 言っている意味はわからないでもなかったが、正直よくわからなかった。だが、そんな眩識の事を気にせず天四國御魂は続ける。
「何かが神聖視され、崇め立つ祀られることによって神になるという話は実際よく聞きます。今回はそれに関連したもので、今までの私は、殆ど忘れ去られてたとはいえ、一応ばかりの妖精達が信仰していたおかげで何とか保てていました」
「ええ。そこはわかります。格言う私も天四國御魂様を信仰していた物の一つでしたから」
 そう。天四國御魂は長い年月の中で人や妖怪からは忘れられてしまっていた。信仰を失った神の末路は死。それは神霊でも変わらぬことだった。
 だが、天四國御魂は消え去らなかった。その理由は当然のことながら信仰が残っていたからである。しかし、その信仰は人からでも妖怪からでもなかった。
 妖精である。また、付喪神でもあった。
 そう。天四國御魂は、人からも妖怪からも信仰されなくなったが、妖精や付喪神――すなわち、自然や物から信仰されて維持されたのである。
「そうでした。でも、今では状況が変わってしまいました。あの子を拾ってから数年。日に日にあの子が私に抱く感情と思いは強くなり、信仰は高まりました。
 しかし!」
 天四國御魂はそこで言葉を止める。そしてワンテンポ置いてから一気に言う。
「あの子の献身的な信仰によって、私は十分なほどの存在を取り戻しました。ただ、それと同時に、突然の向上とかその他諸々のおかげで」
「おかげで?」
「この度成仏することになりました」
「…………」
 眩識は天四國御魂の言葉を反芻する。そして、
「なんですかそれはぁああぁああああ!?」
 絶叫した。それはもう一息で。その様子を見て(何故か)満足した天四國御魂は何度も頷いてからいう。
「という訳で華夏と神社……の事はまぁいいとして、の事を任せたわよ」
「えっ!? ちょっ! 待って!」
 だが、天四國御魂は制止の言葉を聞かずに大気中を滑るように高速で移動しながら離れていく。
「任せましたよ―。任せましたからねー。まーかーせーまーしーたーかーらーねーー」
「待っ――」
 そのまま天四草御魂はドップラー効果を残しながら高速で去って行ってしまった。
「……」
 眩識はどうすればよいかを考えた。色々巫山戯てこそいるものの、彼女とて神霊。自己の発言が何を意味しているかは知っているだろうから、流石に冗談ということはなさそうだ。とりあえず先ずはこの部屋を何とかしなければ――。
コン ココン
「天四國様? いらっしゃいますか?」
「!?」
 外から聞こえてきたのは、先ほど会話に上がって来た拾われた少女。現在では巫女から何まで何でもこなすパーフェクトファイターとなった 華夏だった。
「どどどどうしましょう!? そ、そうだ! こんな時こそ私の能力でっ!」
 眩識が全力全開で生み出したそれは、ほぼ完璧にパーフェクトと言えるようなものだった。外見は当然のことながら、眩識の能力で作った為接触可能。また、自分の事の次の一番知っている相手だったため、能力はほぼ遜色なく使える状態のものだった。ただ一つ、それが動かないという致命的な欠陥を孕んでいることさえ除けば、本当にほぼ完璧なパーフェクトだった。
「天四國様? 入りますよ?」
 華夏が襖に手を掛けたため、眩識は最終手段を使用することにした。
 それは、その天四國御魂の幻灯を、自分に張り付けるのである。それにより、幻灯の持っている能力を眩識が使用することも可能になったということである。
「天四國様? それで、次の神社復興の為の神事についてですが」
「はい。それはこのようにした方が良さそうですね」
 だが、彼女はそんなことなど微塵も考えずに、天四國御魂の姿を借りて、様々な神社再興と華夏の事を考えた神社復興を成し遂げ、多くの信仰を得た。
 その後、その嘘によって起こった戦いと、その信仰によって成された出来事が起きるが、それはまた別のお話。

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