アサノSS
Last-modified: 2009-06-14 (日) 08:38:48 (5423d)
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朝顔の妖精 アサノについて
― 寺子屋勤務 K姉さん(仮名)の証言。
K姉・うん?アサノの事か?
寺子屋には観察用に子供たちが育てている朝顔の鉢が並んでいる場所があるのだが、
先日、朝、その場所に行ってみるとアサノはその鉢と一緒に並んで座っていたんだ。
記者・鉢と並んでですか?
K姉・ああ。しかも体育座りで。そして私を見つけると笑顔でキラキラした瞳をしながらじっと見つめてきたんだ。
今思えば、あの時彼女の能力に引き込まれたのだろう。彼女がどうして欲しいのか何となく伝わってきたんだ。
記者・ほほう?なんと?
K姉・どうやらアサノは他の朝顔同様に『自分も観察して欲しい』と思っていたようで、
『自分の観察日記をつけてほしい』ようだった。乗り気はしなかったが、今にも
泣きそうに瞳をウルウルさせて駄々をこねられてはどうにも断れず、観察日記を付けてあげたよ。
記者・これがその観察日記ですか?へー、なかなか絵がお上手ですね。
K姉・アサノは字なんて読めないようだったが、自分の絵が描いてあるのを見て、喜んで満足したようだった。
その後、どうにも私の後についてくるので教室で授業を受けてもらったよ。
終始、「つまんな〜い」というオーラを浴びせられたが騒ぐことなく聞いていてくれていた。
子ども達とも仲よくしていた用だが、昼過ぎ頃にはいつの間にか居なくなっていたよ。
記者・あれっ?この観察日記、何ページか続いているようですが・・?
K姉・そうなんだ。その後、私の事が気に入ったのか、毎日の様に寺子屋に来るようになってしまって・・。
そのたびに描くようにせがまれて仕方なく・・ね。
記者・そうだったんですか。
K姉・しかし、朝顔の季節が終わる頃、アサノはぴったりとここに来なくなってしまったよ・・、少しさびし気もするな・・
記者・そうですね・・、でもきっとまた来年会えますよ。
K姉・そうだな。最初は少し迷惑にも思ったが、もう私の教え子も同然だ。
きっとまた寺子屋に顔を出すんだぞ、アサノ!
―某日寺子屋にて
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