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エリザベート・ディーヴァSS

Last-modified: 2009-06-23 (火) 23:34:55 (3827d)

SS本文

参ったな……。そう男は思いながら帰りを急いでいた。


日が暮れかけた頃、夕飯の準備をしようとした男は薪が無くなっていることに気がついた。
薪が無くては火もおこせず、当然飯も作れない。
さすがに夕飯を抜くのは辛いし、近所に分けてもらいに行こう。そう考え、しかし僅かばかりの気恥ずかしさが男の心に浮かんだ。
空に目を向けると、太陽はまだ沈むには時間が掛かりそうである。
走れば間に合うかな。そう思った男は、急いで薪を集めに家を出たのである。
しかし思うように数が集まらず、ようやく集め終えたときには既に空には星が瞬いていた。
「こんな事なら素直に分けてもらいにいけば良かったな……」何度目にかになる後悔の言葉をつぶやいた時、林の奥からきれいな歌声が聞こえてきた。
一瞬、人を鳥目にする夜雀が思い浮かんだが、聞こえてくる歌は激しい曲調でなく、静かでゆったりとした心安らぐ歌である。男は帰るのも忘れ、聞こえてくる歌に聴き入った。
遠い異国のことを語るその歌は、男の心の中にその国の情景を鮮明に思い浮かばさせた。歌が終わると、男は手を叩いていた。つい先ほどまで、今日はついてないと思っていたが、
こんなすばらしい歌を聴けるのなら近所に薪を分けてもらいに行かなくてよかった。そう思い始めていた。
その時、空腹に耐えかねた胃がぐぅと鳴り、男は夕飯に使う薪を集めて帰る途中だったことを思い出した。
さっさと家に帰ろう。そして友人を呼んで酒でも酌み交わしながらこの歌の話をしよう。そう思い家に向かって早足で歩き始めたとき、


どくん――。


と自分の心臓の、一際大きな音が耳に届いた。
途端肺を締め付けられるような息苦しさが襲い掛かり、男は胸を押さえその場に倒れこんだ。
倒れた拍子に肺が押され、残っていた酸素が口から吐き出される。急に肺の空気を失った男はパニックになり、空気を求め、喘ぐような呼吸を繰り返した。
すると、無理な呼吸のせいか咳がこみ上げてきて、男はむせる様に肺の空気を外に吐き出した。
だが吐き出したのは空気だけではなかった。


びしゃっ、


という音と共に血が口からこぼれ、地面に撒き散らされる。口の中に鉄の味が広がり、血の匂いが
しかし男はそんな事は気にする余裕も無いのか、懸命に空気を吸い込もうとする。


ひゅー、と肺いっぱいに空気を吸い込み、換気のため空気を吐き出す。と、


びしゃっ、


と再び口から血がこぼれる。しかし男は気にも留めず呼吸を続ける。


ひゅー


と息を吸い、


びしゃっ


と血を吐く。


ひゅー……


びしゃっ……


ひゅー……


びしゃっ……


ひゅー……


……






             ◆






幻想郷の人里から少し離れた林。その近くに霊夢は立っていた。
「この人が今回の被害者みたいね」
そう呟いて霊夢は目の前の死体に目をやる。周囲には男が集めたであろう薪が散乱している。
「確かに外傷もないし……紫の言った通りみたいだけど」
地面に転がった男はたしかに外傷も無く、傍目には寝ているように見える。
唯一死体らしい事と言えば、心臓が動いておらず呼吸もしていない。ただそれだけだった。
「なんだか、地味にめんどくさそうね」
そう言って、霊夢は林の中に歩を進めた。






             ◆






「夜に傍を通ると死ぬ林?」
「ええ、そういう林があるのよ」
神社の境内。いつもの昼下がり、急に紫がやってきた。
「聞いたこと無いわね」
「仕方ないわ。だって、被害にあった者は皆死んでしまっているのだもの」
「なにそれ?」
霊夢はたずねた。
「そのまんまよ。通れば絶対に死ぬ。だから噂も流れない」
「じゃあ何であんたは知ってるのよ」
当然の疑問を霊夢が投げかける。
「偶然生き残った――と言っても即死しなかっただけで、一週間程苦しんで死んだんだけれど――知り合いの妖怪が居たのよ」
そう言うと紫は話し始めた。
なんでも、夜にその林の傍を通りかかったときに歌が聞こえてきたらしい。
その歌があまりにも素晴らしいので、立ち止まって終るまで聞き惚れていたそうだ。
その時は特に何も無かったらしいのだが、家に帰ると急に息苦しくなり血を吐いたそうだ。
「でもね、実際にその妖怪は血なんて吐いてない。ただ其処に倒れていただけなのよ」
「幻覚を見たって事?」
「ええ、死ぬまでの間ずっとね。ある時は得体の知れ無い者に生気を抜かれ、ある時は体が糸になって解けていき……。死ぬ間際には完全に精神を壊されていたわね」
「それで、その原因をどうにかしろって事?」
「ピンポーン! その通り!」
少女のような笑顔で紫が答える。
「そりゃ確かに私の仕事だけれど……」
小さくため息をつき、紫のほうを見る。
「で、何処にあるのよ。その林は」






             ◆






紫との会話を思い出しながら、霊夢は林の中を進んでいた。
なんでも魔声という類の能力を持つ妖怪らしく、その口から発せられる声全てに魔力が宿っている。
魔声自体にも様々な種類があるが基本的に、聞けば誰であれその魔力の影響を受ける。簡単に言えばそんな話だった。
おもむろに耳元に手をやり、前もって掛けておいた魔力避けの結界の調子を見る。どうやら問題は無いみたいだ。
「さて、そろそろ出くわしても良いと思う頃だけど」
既に歩き始めて約20分。大体この林の真ん中辺りまで来ている。
すると周りの木が無くなり、少し開けた場所になっているのを見つけた。その傍に生えた木の上に小屋が作られている。
「どうやらここみたいね」
そう呟くと小屋の中から足音が聞こえてきた。
「お客さん!?」
勢いよく開け放たれた扉から出てきた少女は、開口一番そう叫んだ。
途端、結界越しでもわかる魔力が空気を伝わってきた。どうやら原因はこの少女で間違いないようだ。
「あ、自己紹介しますね。私の名前はエリザベート・ディーヴァ。ここに一人で住んでるんです。あなたのお名前は?」
丁寧な口調で話す少女は、背中に生えた羽根を動かしながら笑顔で話しかけてきた。
「私は博麗霊夢。あなたを退治しに来たんだけど、大人しく退治されてくれる?」
するとエリザベートは不思議な顔をして首をかしげた。
「えっと、どうしてでしょう?」
「あなたが毎夜歌で近くを通った奴を殺してるからに決まってるでしょ?」
そう霊夢が言うと、エリザベートは酷く驚いたような顔をして聞き返してきた。
「私が……人を……?」
途端、見る見る顔が青ざめていく。
「そ、んな。確かに毎夜に歌っていたけど……」
顔を伏せ、手すりに手をかけて震えた声で呟くエリザベート。
「……」
おかしい。そう霊夢は思い始めていた。青ざめた表情も震えた声も演技とは思えず、どう見ても彼女がわざと殺していたとは考えにくい。
もしかすると。そう思い霊夢は一つ質問をしてみた。
「あなた……自分の能力について知ってる?」
「……いいえ」
返ってきた答えは予想通りだった。






             ◆






夕日で赤く染め上げられたエリザベートの家の中。
「魔声ですか……」
「ええ。それがあなたの能力よ」
エリザベートが持ってきた紅茶を飲みながら霊夢はそう答えた。
あの後、エリザベートに自身の能力とそれによって引き起こされた事件について霊夢は一から説明していた。
「あなたの能力は自制する事ができないのよ。歌の時だけ死んでいたのは、たぶん林の外まで響くような歌い方だったからでしょうね」
エリザベートは黙ってそれを聞いていた。
「まぁ、ここで大人しく生活してれば何の問題も無いわ。歌を歌わなきゃ良いだけなんだし」
そう霊夢が言うと、
「それは……今までの罪に目をつぶるって事ですよね……」
エリザベートは静かに言った。
「じゃあ罪を認めるとして、一体どうするって言うの? あなたの能力はどうやっても止められないのに」
するとエリザベートははっきりと、目を見つめて言った。
「声に魔力が宿っているのなら……“話さなければ、言葉を発しなければ良いんです”」
「つまり、これから一生喋らないって事? そんな事できると思ってるの?」
「やらないといけないんです。それが、たぶん私が出来る償いだから……」
はぁ、と霊夢はため息をつきあきれた顔で訊いた。
「仮にそれが出来たとして、何の意味があるの? ここで暮らすぶんにはまったく意味が無いでしょうに」
「はい。だから外……里の方に出向くことにしようと思います。それで、人助けでもしようと……」
「あんた、それ本気で言ってるの?」
エリザベートを睨み付け、冷たく言い放つ霊夢。
その言葉にびくっ、と体を震わせ、しかし、
「はい!」
エリザベートは力強く答えた。
それを聞いて霊夢はふっ、と微笑みこう言った。


「だったら、まず笑いなさい。そんな暗い顔で助けられたって誰も喜びはしないわよ?」






             ◆






その後、人間の里で人助けをする無口で笑顔の鳥の妖怪がスケッチブック片手に現れるようになるのだが、それはまた別のお話。
「(お手伝いいたしましょうか?)」






















あとがき。もしくは例によって作った人の戯言。


時間の使い方の最も下手なものが、 まずその短さについて苦情をいう。 byジャン=ド・ラ・ブリュイエール
壊滅的に時間がねぇ! byソンガ。もしくは世界の誰か


世界ってのはそんなものです。ソンガです。
時間的に間に合わないと思ってたら、延期のおかげで書き上げられましたよ。やったね。
そんなこんなで微グロ注意なんて書かなくて良いSSが書けました。万歳万歳。
今回のキャラのコンセプトは『無意識に行われる言葉の暴力』だったりします。
言葉ってのは他人を癒しますが、傷つける事が圧倒的に多いです。
まぁ、堅苦しく考える事は無いですがー。


そういえば、小説の書き方について講義を受けてきました。
成程と思うところも多く、実に勉強になったわけですが……。
それが生かせるかはまた別問題。ってか、文章の書き方からまずダメな俺に、それ以降の話は効果的では無いとかなんとか。
まぁ、そんなこんなで生きてます。
あ、そうそう。まとめwikiの自分の項目にあった
「ダンガさんではない」
に全力で吹かせていただきました。書いた人GJ!
そういうわけで、楽しかったら笑ってください。つまんなかったら笑ってください。とか言うとアレですが。著作権的に。しにがみのバラッド。おもしろいです。
あ、nenecoさん感想ありがとです。
なんでこんなとこに書くのかって、俺ってばシャイボーイ。感謝の言葉とか凄く簡潔にしか言えないので。
あぁ、すみません。でもちゃんと読んでます。個人的にはネガネガしたのが聞きたいなーと思いまs(ry
まぁ、心に思ったことを言葉にして具現化するのは難しいです。心の空想を文字にするぐらいに。
そんなこんなでこれにてお開き!ここまで読んでいただきありがとうございました。
あなたの声が魔声となって誰かを殺しませんように。








































これ以上下がると色々後悔するかも知れません。
それでもあなたは下がりますか?


    【 Yes / No 】






































【Yes】
いいでしょう。いろいろと後悔してカオスになってください。
まぁ……勿体つけるほどのものでは全く無いわけですがー。


























え、これは何かって?
ネタだよネタ。SNS。ショートネタストーリー。
あと、冗長な元ネタ解説だよ。いってみればチラシの裏だよ。


あとがきでコンセプトの話をしましたが、他にも色々と伝承から引っ張ってきたりしてます。
声を聞くと死ぬ。は小夜啼鳥の別名墓場鳥や、死の連想との結びつきから。
オッドアイはグリム童話『夜うぐいすとめくらとかげ』から。
名前のエリザベートは20世紀を代表するソプラノ歌手エリザベート・シュヴァルツコップから。ディーバはまんま歌姫ですね。
実はマリアと悩んだんですが、それだとカラスの妖怪じゃねぇかと思って却下に。
あと名前案には「クレーネ・ナハティア」(小夜曲『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』から)とか在ったりしました。
素直にナハティガル(小夜啼鳥のドイツ語)を名字にしても良かったのかもしれないんだけど、ひねくれ者なので。


全部解った人とか居るんだろうか。いないか。


実は爆撃機Ar234B-2/Nとも絡めようとかしてました。ええ絡めるわけ無かったですが。




……さて、それじゃあSNSの始まりだよ!期待しないで読めば良いよ!
ってか、ショートどころじゃないよ。短すぎだよ!




「暇いー。うぁー、世界滅びろー」
1人でうだってると急に背後から声がした。
「見つけた!」
後ろを向くと見知らぬ男がこちらを見つめていた。
まぁ、無視だ。俺に話しかけてはいないさ。気のせい気のせい。
「え、無視? こっち向いておいて無視?」
どうやら本当に自分に話しかけていたらしい。
「えーっと、どちらさん?」
見知らぬ人から見つけた!などと言われては返事をしないわけにはいかない。何か届け物があるのかも知れないし。
「ふふ、俺はね」
そういうと男はこちらの目を見て話し出した。
「SとDが隣り合った悲劇だとかホラータイムだとか世界の意思だとかスタンド攻撃だとかパソコンに嫌われたからとかでつまる所、アンタの生き別れの弟のダンガだよ!」
「な、なんだと……」
まさかの悲劇だ。衝撃の展開だ。これが小説なら読者が置いてけぼりになるぞ。いやしかしそんな事よりもっと重要なのは……!!
「まぁ、驚くのも無理は無理な」
「ちくしょう!実弟どころか生き別れまで弟だと!妹何処行った!俺の妹は!ざけんなファッキンクライスト!コレはあれか、神から俺に対する反逆か!
はーっはっはっは!ふざけるなよカミサマ風情が!それがこの世界のシステムだってんなら、まずはその幻想をぶち殺す!我々は生きている!復讐するは我にあり!俺が天に背こうとも天が俺に背くことは許さん!
さぁ、さっさと妹をよこすんだ!現実的に実は不可能でも義理ならいけるだろうが!実、生き別れと来たら次こそ義妹!さぁ!ハリーハリーハリー!!!」
「いや、意味がわかんないよ!」
生き別れの弟がなにやら言っている。めんどくさい。弟なんてもういらない。妹ギブミー。
「じゃあ聞くけど、ダンガって名前の妹欲しい?」
―――――――――――。
「世界って、厳しいね」
「意味わかんないよ。ってか義妹プリーズって大佐のヘンゼルとグレーテルかよ」
「アレってさ、窓に手形がいっぱい付いたり、ロッカーから赤ん坊があふれ出たりする話だっけ?」
「どこの悪夢だよ!? そんな話には絶対ならないよ!」
「家に帰れなかったグレーテルは魔女になって森の中に住むのです。別のヘンゼルとグレーテルがやってくるまで」
「つれて帰ってやろうよヘンゼル!ってか、このネタ解る人此処にはいないって!」
「ははは、此処を読んでる奴がまず居ないさ」
しかし、この弟は随分テンションが高い。薬でもやってるのだろうか。
「ついさっき変な妄想大声で垂れ流して他の誰だよ!アンタこそ薬やってそうだよ!」
おかしな事を言う。
「あんなの普通だろ。年下万歳。ロリコンじゃないよ。ペドはもっと違うよ」
「意味わかんないって!」
「ってか、さっきから頭の中読むなよ。怖いって」
よくよく考えたら、口に出してないのに返答されていたのに気付く。テレパシーかよ。少女じゃないのに。
「もういい加減そっちから離れてよ!」
と、気付いた疑問を投げかけてみる。何か言ってた気がするが気にしない。ゴーイングでマイウエイだ。
「で、SとDは傍にあっても、OとAは隣じゃないよな?」
「知らないよ!ってか、今更だよ!」


終われ!
「終った!?」

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