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スケッチ・カラーSS

Last-modified: 2009-06-14 (日) 12:56:41 (3720d)

SS本文

【ある晴れた日のお絵かきで】


 よく晴れた日のお昼前。レミリアお嬢様が眠りについた頃。
 紅魔館のベランダでは、妖精メイドたちがせっせと洗濯物を干していた。


「よいしょ……っと。これで最後ー」
 そう言って、スケッチ・カラーは、運んできた洗濯物をまだ干されていない山に積み上げた。
「ふぅ。なんだか今日は多いねー」
 ベランダは干している洗濯物でいっぱいで、お茶を飲むための小さなテーブルを置くスペースすらない。
「ベッドのシーツなんかもあるからね」
 洗濯物を干しながら同僚の妖精が答えた。
 なるほど、確かに大きな布がいくつも見える。
「でもさ、真っ白なキャンバスが広がってるみたいで、気持ちいいよね」
 同僚はそう楽しそうに笑うと、残りの洗濯物を抱えていった。


「キャンバスかぁ」
 スケッチの前には、特別大きなベッドシーツが広がっていた。
「うーん……」
 そして、エプロンドレスの胸元に両手を突っ込む。
「真っ白なキャンバスなんて、つまんないよ」
 引き抜いた両手にはたくさんのペン。
「だって、キャンバスって絵を描くものだもんね」
 きゅぽきゅぽとキャップを抜いて、準備完了。
「うふふふふー。それじゃぁ早速ー。
 ――彩色『色とりどりのサインペン(顔料)』!!」(※顔料インク:水で洗っても落ちません!)
 小さな身体で飛び回り、両手に持ったペンを器用に使って、大きな布地いっぱいに絵を描く。
「おじょお〜さーまは〜♪ ひるは〜おーねむ〜♪ おやつできても〜♪ お茶をいれても〜♪ おーねぼうさん〜♪」
 変な歌を歌いながら上機嫌のスケッチ。大きなキャンバスは、確かに気持ちがいい。
 見る見るうちに、シーツの上にレミリアお嬢様の姿が浮かび上がる。
「ん……っと、完成ー!」
 キュっとキャップを締めて振り返ると、
「はぁ……。あなたはこれまで使ったシーツの枚数を覚えているのかしら?」
「うあ。メイド長……」
 咲夜が立っていた。


「それで私のベッドのシーツがない、と」
 報告は聞いたが、レミリアにとってはさして興味のないことだった。
「はい。本来なら今夜お取替えしようと思っていたのですが……」
 真面目に咲夜が続ける。
 スケッチは、その咲夜に引き連れられてレミリアの私室にいた。
「それじゃあ、わたしはどこで寝ればいいのかしら?」
 シーツが使えなくなったことは些細なことだが、寝心地が変わるのはいい気がしない。
「ええ、それですが……。
 お嬢様には私のシーツをお使いいただいて、私はお嬢様とご一緒させていただこうと考えています」
 真面目なまま咲夜が続ける。
「そう。……まぁいいわ」
「……っし!!」
「メイド長?」
 グッとこぶしを握る咲夜を見て、スケッチが不思議そうな顔をする。
「いえ、なんでもありませんわ(普段ぼーっとしているのに鋭いですわね…)」
「それで、そのシーツはどうしたの? 私の絵が描いてあるんでしょう?」
 あのシーツは咲夜の指示ですぐに取り込んだあと――そういえばどこに行ったのだろう?
「あれはもう使えませんので、私が保管しております」
 真面目かどうかはわからないが、咲夜は抜け目がない。
 いやそんなことよりも、
「使えないことなんてない!」
 使えないといわれたことがスケッチには心外だった。
「シーツの肌触りは変わってないし、濡れても落ちないインクで描いたもん!」
 色落ちしないなら、上で寝ても平気だ。スケッチはそう主張する。
「洗っても落ちないから、ダメなんでしょ……」
 もっとも、咲夜は洗い落とすつもりはないのだが。
「ふむ……」
 それを聞いて、レミリアは思案する。
「なるほど。それは悪くない……いえ、いい考えだわ」
 レミリアの目が紅くきらきらと輝く。
 悪い兆候だ。
「咲夜、新しいシーツはもう注文しているのかしら?」
「はい」
「いいわ。それじゃあスケッチ、新しいシーツが届いたら、
 そのシーツに霊夢の絵を描きなさい」


「――へ?」
「――は?」
 しばらく間を置いて、スケッチと咲夜が間抜けな声を出す。


「色落ちせずにそのまま使えるのでしょう?」
「う、うん……」
 詰め寄るレミリアと引くスケッチ。
「霊夢の顔を見ながら寝るなんていいと思わない? 添い寝してる気分だわ」
「あの、お嬢様、添い寝でしたら私が――」
「咲夜は咲夜。霊夢は霊夢」
「あぅぅ……」
 咲夜がヨヨヨと泣き崩れるが、レミリアは気にしない。
「いい、スケッチ、ちゃんと等身大で描くのよ? そうね、顔が少し赤くなっているといいわね。あ、服は少しはだけて――」
「えっと、えっと……」
 やけに細かいレミリアの要望を慌ててメモするスケッチ。


 その後、紅魔館で等身大イラスト入りのベッドシーツが流行る事になった――。

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