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ナイト&ソドムSS

Last-modified: 2009-06-14 (日) 08:41:02 (3631d)

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「このままじゃ駄目だと思うのよ!!」
 太陽の畑の一角にて、白色のアフタヌーンドレスを身に纏った妖精が大声を上げる。
「急にどうしたのソドム?」
 それに答えるのは黒色のイブニングドレスを着た妖精。ソドムと呼ばれた妖精はそんな気の無い返事に苛立つように、
「どうしたのじゃない! 最近は人里に向かおうにもなぜか巫女がいるし、湖の処の氷精には何度戦っても勝てないし! ナイト!! このままじゃ私たちは幻想郷の中で幻想入りしちゃうわ!」
 ソドムはいろいろと憤慨しながらナイトに対してそう言う。ナイトはため息をつきながら、
「巫女の方は知らないけれど、湖の氷精――チルノに勝てないのは仕方ないでしょ? あれは私たち妖精の中で最も力を持っていて、一時期は妖怪とまで揶揄されてたくらいだもの。それに出る杭は打たれる。私たち力の無い妖精が無理して何かする必要なんてないと思うけれど?」
「私が退屈で死んじゃうの! う〜、私にもあの氷精ばりのスペックさえあれば〜」
「それだと私が抑えきれなくなるわね。次から一人で頑張る?」
 ナイトがあさっての方向を見ながらそう嘆息する。すると、ソドムが慌ててナイトにしがみつく。
「じょ、冗談だよ!? 私たちずっと一緒だよね!? ナイトいきなりどこかにいなくならないよね!?」
 慌てふためくソドムの様子を見てナイトは微笑む。
「当然じゃない。この世に生まれた時からずっと一緒だったのよ? 今更別れるつもりはないわ。……それにしてもチルノのスペックねぇ。そもそも妖精なのにスペルカードを使える時点で規格外でしょ。一緒にいる大妖精でもスペルカードは持ってないんだから」
「それでも何とかして勝ちたいの! 持てる全ての力を使ってでも!!」
 ソドムが必死になって考えている姿を見て、ナイトは『まぁ何とかしてあげたいわねぇ』とは思う。故にいろいろ考えて……、
「そうね。いっその事全部使ってみようかしら?」
 そんなことを呟いていた。突然のナイトの呟きにソドムは頭の上に?マークを複数浮かべながら尋ねた。
「使うって……何を?」
「これよ」
 ナイトはそう言って胸元から『1up』と書かれた四角い物体を取りだした。それを見たソドムは「これ?」といいながらポケットから『B』と書かれた四角い物体を取りだす。
「そうよ。これらを持てるだけ持てばそれなりの火力と耐久力を得れるんじゃないかしら?」
「なるほど! その発想はなかったわ! これだったらあの氷精も倒せるわね!!」
「まぁ、勝てるかどうかは置いといて、まずは実際にできるかどうかを試しましょ」
 二人は急ぎ足で住処に戻り持てる限りの1upとボムを手にして太陽の畑の一角に戻った。
「……これは正直予想外ね」
「やったぁ!! 力がみなぎってくるよ! 今なら巫女にだって勝てちゃうかな!?」
「いえ、それは無理でしょ。にしても今の私たちなら全盛期のリリーや、Extra中ボス前の妖精に引けを取らない火力を期待できるわね。勝つのは無理でもボムくらいは強制出来るかもしれないわ」
「それでも十分よ!! 今までの私たちは扱いが道中の乱数で落とすアイテムの変わる妖精だったし……」
「でも、これでちゃんとした戦闘を行うことができそうね。体力も複数本あるし、後は……」
「スペルカード! 何とかして私たちの能力を活用したスペルがほしい!!」
「そうねぇ。素材となるボムはたくさんあるから後はそれらしく製作するだけだけど……、正直他の妖怪とかはどういった風にスペルカードを作るのかしら?」
「う”っ。私知らない」
「私も知らないわよ。スペカ持ってるのって当然のように持ってるから、どういう風に創るのかって正直考えたことなかったわね。まぁとりあえず適当に試してみましょ」
「うん! そうしよう!!」


〜少女達努力中〜


「……さっきも言ったような気がするけど……これは正直予想外ね」
「流石に私もびっくりだよ。まさか練習開始数分で完成するなんて」
 二人は手に持つ一枚のカードを見ながらそう呟く。
「まぁ……、それでいい気になってその後数時間も試したけど一回も成功しなかったのにも逆にびっくりしたけどね」
「残念だよね。でもでも! スペルカードを作れた時点で私たち凄いよね!!」
「そうね。さて、この状態がいつまで続くかわからないからそろそろ行動した方がいいと思うけど?」
「よし! それじゃあ氷精に目に物見せてやるわ!」
「結局相手はチルノなのね。まぁ他を考えたら一番安全なんでしょうけど」
 二人は新たに手に入れた力に胸をはせながら、霧の湖に向かって飛んで行った。


 霧の湖では、今日も今日とてチルノに勝負を挑む妖精が無残にも敗北していた。
「あたいったら最強ね!」
 チルノは胸を張ってそう言う。負けた妖精は「次こそ〜」と言いながら帰っていく。その様子を見届けていたナイトとソドムはまず作戦会議を行う。
「やっぱりいつ見てもあの火力は私たちにとっては危険ね」
「うん。いつも受けてる私もそれは認めるよ。だからこそ! 新たな力を得た今! ここで! あの氷精を倒すの!!」
「そうね。それはいいとしても……、ソドムはやっぱり何も考えなくてもいいわ。作戦云々は全部私がやるから」
「うん! ナイトに全部任すわ!!」
 ソドムの――いくらナイトの提案とはいえ完璧に作戦云々を丸投げしている――そんな姿を見てナイトが『可愛いのはわかるけどもう少し頭とか使わせるべきかしら? でもこんなソドムが可愛いわけだし……』などと考えていると、
「ねえねえナイト! 私たちの容姿をちょっと変えてみない? 私たち扱える能力の幅も広がっていろいろと出来るようになったし」
「? 別にいいんじゃない? ……ソドム。貴女そんなに胸がコンプレックスだったの?」
「そ、そんなことないよ!? 偶然だよ! っていうかなんで身長も伸ばしたのに胸を増やしたことがすぐにわかるの!?」
 ソドムはそう言うが、元々がほとんどないに等しかったのが突然増えれば誰でも気づくような気がする。ナイトもソドムと同じ身長まで外見をいじくり、いよいよチルノのもとに向かう。
「ここであったが……何日目だか忘れたけど! 今までの借りをここで返すわ!!」
 ソドムが意気揚々とチルノのもとに赴きそう言い放つ。しかし、
「誰よアンタ達。アンタ達みたいのと戦った覚えはないわよ?」
「まぁ、姿に偽りを混ぜた状態で来ればそうなるわよね。でもあなたは知ってる筈よ。私はナイトシェード。偽る夜の花」
 ナイトがそれっぽい口上を述べたのでソドムも慌ててそれに便乗する。
「え、ええと、そうよ! わ、私はソドムアップル。偽る昼の花よ」
 二人のそれっぽい口上にチルノが激しく反応する。
「な、何よボスみたいな口上を上げて! でもソドムって言ったらあたいに何度も負けてる妖精じゃない。すぐに返り討ちにしてあげるわ!!」
「そうね。でも今の私たちは違うわ。今の私たちは二人で一つ。偽る双樹の連花。貴女に倒せるかしら?」
 ナイトは言葉巧みにチルノを挑発する。そして単純なチルノはすぐに載せられる。
「むきー! いいわ! 今すぐここで氷漬けにしてあげるわ!!」
妖精同士の戦闘が始まる。しかし、妖精最強のチルノと火力を無理やり強化したナイトとソドムの戦闘はすでに妖怪同士の弾幕ごっこばりの戦闘風景を醸し出していた。
「なっ? 流石あたいに喧嘩売るだけあってそこそこの威力はあるようね」
 さしもの妖精最強のチルノでも、強化された二人分の弾幕を一人で受け切れる訳ではなかった。
「でも一気に薙ぎ払うわよ!雹符『ヘイルストーム』!!」
 凍てつく嵐が二人の放つ弾幕を薙ぎ払う。さらに、薙ぎ払ってもまだ消えぬ余力が二人を襲う。
「全く。どれだけの威力を孕んでいるのよ。ソドム! 上方に避けるわよ!」
「りょ、りょーかい!!」
 二人は必死に効果範囲から離脱する。だが、それをみすみす見逃すチルノではなかった。
「逃がさないわよ! 凍符『パーフェクトフリーズ』!!」
 チルノは凍てつく氷弾を二人に向けてばらまく。圧倒的な冷気を孕んだ氷弾は並みの妖精では近づくだけで体力が奪われて墜とされるほどの威力を持つ。それが二人に向かって大量に迫ってくる。
「ソドム! 迂闊に動かないようにね! あの氷弾はじきに停まるから! 次の動きに警戒して!」
「う、うん!! それにしてもなんで今回はこんなにもスペルを連続して使ってくるのよ〜!?」
「ああ、それは多分開幕に私が全力で挑発したからじゃないかしら? チルノは単純なところがあるからそれで早めに体力減らそうと思ったんだけど」
「先にこっちが墜とされちゃうよ〜」
「そうねぇ。少し早計だったわ」
 二人がそう言っている間に氷弾は二人の周囲を囲むように配置された後完全に動きを止めた。だが、現在は動きが止まっているが、この氷弾はチルノの意思で多少ばかりは自在に動かせるのである。このままでは袋の鼠。墜とされるのも時間の問題である。
「ふふん。どうやらここまでのようね


「…………」
「これで終わりよっ!!」
 チルノが叫ぶと同時に周囲の氷弾が二人に直撃する。冷気によって発生した霧が晴れた後にはなにも残っていなかった。
「最初の弾幕には少し驚いたけれど、あたいの敵じゃなかったわね!」
 チルノは胸を張ってそう言う。その様子を見たナイトは冷ややかに言う。
「私たちの花言葉は欺瞞。馬鹿正直にまっすぐ見ると痛い目を見るわよ。いくわよソドム!」
「こっちはいつでもいけるよ!」
 突然の声にチルノが驚いて後ろを向いた時にはもう遅い。二人は、二人で一枚のスペルカードを手に叫んでいた。
「「偽称! 『信じる者は掬われる』!!」」
 たくさんの小粒玉がそこそこの隙間を持ちながらチルノを襲う。チルノは最初は驚いていたが、小粒玉の間にある隙間を見て、「その程度の隙間をあたいが抜けないと思ったら大間違いよ!」と言って突っ込んでくる。
 だが、それこそが偽称。一見小粒玉に見えるそれは大玉。正しく見ると弾同士の間はほとんどあってないようなものである。だが、それに気づかずに突っ込んだチルノは全弾命中して湖に落ちる。
「やった……のかしら?」
 ナイトは自信なさそうに言う。ソドムも同意見らしく何も言わずにチルノが沈んだ湖を見ていた。
「……いっその事今からばっくれましょうか? 何故かそうした方がいい気がします」
「き、奇遇だねナイト! そうだね! 今すぐ逃げよ――」
 ソドムがそこまで言った辺りでチルノが沈んだあたりの湖が凍りつく。ナイトもソドムも頭の中では逃げようと思ってはいるものの身体が動かない。そんなこんなで立ち止っているうちに湖からチルノが這いあがってくる。
「……潰ス」
「何か今チルノから聞いたことの無い声と単語が聞こえたような気が……」
「……どうしよう」
 この時点ですでに二人の頭の中には逃げるという選択肢がなくなっていた。いや、より正確に言うならば逃げられないと頭のどこか深い場所が言いきってしまったのだった。
「雪符『ダイヤモンドブリザード』」


この後、二人がどうなったのかは知らないが、以降ナイトとソドムは複数のアイテムを手にしながら戦闘を行うことはなくなったらしい。二人とも今まで通りに人間に悪戯したりするだけにとどめたという。


結論「妖精がちょっと力が強くなったからって調子に乗ると死ぬ」

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