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ビーネSS

Last-modified: 2009-06-14 (日) 00:04:30 (3835d)

SS本文

紅魔館の新人門番隊隊員である妖精ビーネは悩んでいた。
「何か、あたし・・役立たず?」
ここ紅魔館にきてはや数ヶ月、隊員召集がかかる小規模な戦闘も何度か体験した。が、そのいずれでも弾幕戦が始まると「あばばばばばばば」と叫び声をあげて逃げ回るばかり、足手まとい以外の何物でもなかった。
「まあ、新人さんですからね、仕方ないですよ。これから頑張ってください。」
門番長さんはそう言って励ましてくれたが、正直不甲斐ない。
「う〜ん、何とか役に立てないかなぁ?かといって戦闘は苦手だし・・」
日勤部隊の仕事が終わって夜。そんな事を悩んでいたら眠れなくなり、気晴らしにと紅魔館の中を当てもなくふらついていた。
「あれ?ここは・・地下・・」
ビーネはいつの間にか地下図書館に迷い込んでしまっていた。考え事をしながら歩くのはよろしくないな。そう思いながら出口を探そうと思った時、急に声をかけられた。
「あら、貴女、門番隊の妖精さん?門番隊の方がこんなところにいらっしゃるなんて珍しいですわね」
見てみるとそこには小悪魔がいた。だが、その小悪魔はビーネが見たことのあるどの小悪魔とも一致しなかった。頭の羽や司書服っぽい服装は確かに小悪魔なのだが、そのひと小悪魔の髪は深い蒼色をしていた。確か、小悪魔の皆さんは紅い髪をしていたはずだが・・
「私の髪が気になりますか?」
その小悪魔は右目に付けた片眼鏡のずれを直す仕草をしながらそう聞いてきた。ビーネはよほど髪を見て不思議そうな顔をしていたようだ。
「ま、そんな事はどうでもよろしいのですが、見たところ貴女は大分悩み事がおありの
様子。よろしければ聞かせていただけませんか?よい暇つぶしになる・・じゃありませんわ、何か協力できるかもしれませんので、ホホホ」
「?」
少し気になる発言があったような気もするが、話せばすっきりするかもしれない。
そう思いビーネは悩んでいたことや自分の能力のことなどをその小悪魔に話して聞かせた。話を聞いたかのじょ小悪魔はしばらく目を閉じて考え事をしていたかと思うと急に立ち上がって
「戦闘で役に立たないのでしたら、その能力を使って別の面で役に立てばよいのです。
参考になりそうな本をご用意いたしましょう。あとはご自分でお考えなさい。


「はい、えっ!?」
そういうとその小悪魔は一瞬で目の前からいなくなった。
あとには呆然と立ち尽くす妖精が一人。
「あ、あれ?あたし、こんなところで何してたんだっけ?誰かと話をしていたような気もするけど・・思い出せない・・」
記憶が曖昧なのは今出会っていた小悪魔のせいなのだがそんな事は知る由もない。
「ん?こんな本いつの間に?」
ビーネは自分がいつの間にか一冊の本を抱えているのに気がついた。
その本の表紙には大きくこう書かれていた
『モールス信号入門』


数日後、
「ぽ、『ぽんぽん信号』ですか?」
「はい!そうです!」
ビーネはあの夜に手にした本を何気なく読んでみたのだが、文字もほとんど読めないので、難しすぎてよく理解できなかった。しかし、つまりは遠く離れた人への何かを伝えるための手段である事は何となく理解できた。そこで思いついたのが自分の能力を通信手段として利用することであった。その利用法を今、門番長に話しているところであった。
「あたしの能力は、自分が思い出すことの出来る場所でなら音を作り出すことが出来ます。ですから、あたしが何か異変を見つけたらすぐに門の近くで音を鳴らしてお知らせします。そうしたら門番長は周囲を警戒して下さい。どうです、いい案でしょう?」
「それが『ぽんぽん信号』ですか」
「はいっ!!名づけて『ぽんぽん信号』です!!」
門番長はこの『ぽんぽん信号』にいかほどの実用性があるのか疑問でならなかったが、こんなに目をキラキラさせて提案されては無下にするのも気がひけた。
「わ、わかりました。機会があれば使ってみて下さい」
「はい、ありがとうございます!」
その日からビーネは湖見回り班の仕事を自ら買って出ていた。
(なるべく遠くから迫る危険を伝えられた方が役に立っていることになるよね)


そんな思いからだった。
そして、『ぽんぽん信号』の試用機会は思ったよりも早くやってきた。
その日、湖見回り班がちょうど館の対岸についた時だった。昼間の霧の湖にしては珍しく霧が晴れ、上空が見渡せていた。今日もいい天気だな、ビーネがそんな事を思いながら空を見上げた時、それが目に飛び込んできた。紅魔館に向って一直線に高速で飛んでいく物体を。
(あれは、森の魔法使い!?性懲りもなくまたお屋敷に忍び込もうという気ね)
他の隊員たちもそれに気付き慌てふためき始める。
(今こそ『ぽんぽん信号』の出番だわ、よ〜し!)
能力の使用のために集中を始めるビーネ
(気が付くようになるべく大きな音の方がいいよね。え〜と、門番長へ〜、大きな音〜、
門番長へ〜、大きな音〜、門番長へ〜、大きな音〜、門番長へ〜、大きな音〜!!)
最後に「やぁ!!」と、ひと際大きい念をこめてビーネは能力を発動させた。
「ふひぃぃ〜」
大きく息を吐き、能力使用の疲労の為にその場に倒れこむ。
(門番長、気が付いてくれたかな?あれだけ力を込めたんだから結構大きな音が出せたはず。うん、きっと大丈夫だよ。うふふ、役に立ったから誉めてもらえたりして。)
ビーネは疲労感と達成感をたっぷりと感じながら、青い吸い込まれそうな空をみていた。




この後の事を少しだけ語ろう。
ビーネの『ぽんぽん信号』は確かに門番長の元へ届いていた。今までにないくらい
大きな音を立てて。その点では頑張ったといえよう。
しかし、それは門番長の顔面で炸裂した。
どうやら、ビーネは音の発生地点を思い描いた時に思いっきり門番長の顔のみを想像
していたようで、結果、不意に破裂音を顔面に浴びた門番長はそのまま気絶。
結局、魔法使いの侵入を許してしまい大目玉を食らうこととなる。


・・・新人門番隊員ビーネの眠れない夜はまだまだ続きそうである。


〜了〜

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