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金城 鷺SS

Last-modified: 2009-06-17 (水) 21:45:56 (3804d)

SS本文

「私が先に見つけたんですよ、あの現場は!」
「何をー! 見つけたのはあ・た・し・だ!」
博麗神社の上空に、凄まじい衝突音が響く。
「……っさいわねぇ、人ん家の上で何してんのよアンタらは」
耐えかねて境内から出て来た霊夢が不機嫌そうに呟く。彼女が見上げる先では、二人の天狗が激しく戦っていた。
「おぉ霊夢、こいつは一体何の騒ぎだ?」
遊びに来た魔理沙が、霊夢とは対照的に楽しげな声を上げる。
「知らないわよ。直接あいつらに聞いて頂戴」
「あーほら、カリカリすんなって。さぁて、というわけでお前ら何で戦ってんだー?」
投げやりに言う霊夢を宥めながら、魔理沙が大声で呼び掛ける。
「あっ魔理沙さん霊夢さん! ちょっと聞いてくださいよ、実はですね――」
言いかける鴉天狗・射命丸文を遮って、もう一人の天狗が大きく叫んだ。
「あたしが先に見つけた事件を文さんが横取りしようとして来たもんで、阻止すべく戦ってんだよー!」
「なっ、横取りして来たのはあなたの方でしょう!? デタラメもほどほどにしなさい!」
「デタラメ言ってんのはどっちよ!」
文が激怒して叫び返す。もう一人の天狗も負けじと応酬する。そこに霊夢がイライラと口を挟んだ。
「あぁもう、別にどっちだっていいわよそんなの。それよりアンタ、誰?」
問いを向けられた文で無い天狗の方が、あぁ、と思い出したような顔になり、そして言った。
「そう言えば名乗って無かったわね。あたしは鷺、金城鷺よ。『鷺鴉新聞』っていう、妖怪の山一の新聞の記者――」
「――になろうと躍起になってる、二流記者の子ですよ、霊夢さん、魔理沙さん」
文が横槍を入れる。緩めていた表情に再び青筋を浮かべると、鷺はたっぷりの皮肉を込め言った。
「あーら、三流記者の文さんには言われたくないわねぇ」
「四流記者の分際でどんな口を……」
「口が過ぎてるわよ、五流記者……」
言われ、眉間に皺を寄せた文が辛辣な言葉を言い放ち、それを聞いた鷺もまた嫌みたっぷりに言葉を投げ返し――
「うるさぁいっ!! 喧嘩ならアンタらの山でやりなさいよね!」
堪忍袋の緒が切れた霊夢が怒声を張り上げた。隣にいた魔理沙が文字通り飛び上がるほどの大音声に、しかし二人の天狗は耳を貸さない。互いにスペルカードを構えると、同時にそれを発動した。
「私に挑んだ事を後悔しなさい! 風神『風神一扇』!」
「ハッ、笑わせるんじゃないわよ! 風符『巻き起こる大風』!」
二人の放った猛烈な風が空中でぶつかり合う。互いに一歩も譲らぬ力を受け、およそ二人の中間で激しく拮抗する風。巻き起こされる風が次々にそこへと殺到し、強大な力がその場に生み出される。
やがて、集まり過ぎた力はついにその均衡を破り、逃げ場を求め上下へと爆裂した。
地上へと邁進した風は霊夢の目の前の地面に直撃し、弾き返された風は再び上空へと跳ね上がる。
勢いよく跳ね上がり空を目指す風が、その道中にある霊夢のスカートを一気にめくり上げ――


「シャッタァー!」「チャーンスッ!」


そして二人の天狗が、戦闘を一瞬で放棄してその場面を撮影した。
文と鷺は共に勝ち誇ったように被写体を改めて眺め……その歓喜に満ちた表情があっという間に失望へと変わった。
「うわ……そう来ますか……」「……フィルム無駄にしたな……」
呟く二人の視線の先には、驚きと羞恥で顔を真っ赤にした霊夢がいた。そのめくり上がったスカートの中にあったのは、燦然と白く輝くドロワーズ。そう、ドロワーズであった。
「うー、まぁ霊夢さんならドロワ穿いてるだろうと思ってましたけどねー……」
「わかってるなら何故撮りに来たんだ?」
「いや、反射的に体が……でも鷺さんだってそうでしょう?」
「まぁ確かに……何にせよ、またつまらぬ物を撮ってしまったな……」
憑かれたように会話する二人の目には、霊夢の顔から血の気が引いて行く様も、表情が恐るべき笑みに変わっている事も、まるで映っていなかった。
「ウフフ……ウフフフフ……」
やがて霊夢が気味の悪い声で笑い始めた。ハッとして見上げる二人の目に、満面の笑みを浮かべた霊夢が飛び込んだ。
「ぇと……なんかヤバめな雰囲気だねぇ……」
「あ……霊夢、さん……?」
「ドロワ穿いてて……つまらなくって……」


「悪かったわねぇっ!!」


特大の夢想封印が、色々な意味で哀れな二人の天狗を遥か彼方へと吹き飛ばした。






「おぉー……よく飛んだなぁ。隠れてて正解だったぜ」
いつの間に隠れていたのか、木陰から出てきた魔理沙が空を見上げながら暢気に言った。
「ハァー、ハァー……アイツら……!」
物凄い勢いでスペルを放ったせいで肩で息をする霊夢は、なおも怒りが収まらない様子で恨み節を吐いた。
「まぁまぁ霊夢、落ち着け落ち着けって。魔理沙さんが特別にお茶入れてやるからさ」
「……お願いするわ」

翌日発行予定だった文々。新聞と鷺鴉新聞は、「記者の健康上の理由により」臨時休刊となったそうな。

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