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博麗 言璃SS_ソンガ

Last-modified: 2009-07-05 (日) 10:42:53 (3761d)

SS本文

博麗の巫女の代替わり。
それは人間にとっては、護ってくれる者が変わるということ。
博麗の巫女の代替わり。
それは妖怪にとっては、今後戦う相手が変わるということ。
しかし、妖怪にとってはもう一つ意味があった。
それは、元博麗の巫女「博麗霊夢」を殺さない理由が無くなったということ。






まばゆい閃光。それと共に起こる轟音。
霊撃によって引き起こされた衝撃の中心には、博麗霊夢がいた。
「まったく……今日はずいぶんと多いわね」
いまの一撃でかなりの数を吹き飛ばしたが、周りを囲む妖怪の気配はほとんど変化が無い。
数刻前、里から神社に続く道で襲撃を受け、いまや森の奥まで入り込んでしまった。
空を飛んで無理やり抜けようともしたが、待っていたとばかりに一斉射撃を受けた。
その時はギリギリ回避したお陰で生きているが、魔理沙や文のようにハイスピードで飛べない以上、空を飛んで逃げるのはほぼ不可能だろう。
「私の勘も鈍ったかな」
出かける時に娘に止められた。今日は大人しくしているように、と。
私はしかし、最近口うるさくなってきた娘の忠告を笑って流し、そのまま出かけたのだ。
明るいうちに戻るつもりだったし、襲われても対処できるつもりだった。
だが辺りは既に暗く、太陽は山の向こうに沈もうとしていた。そうなれば今より攻撃は苛烈する。
夜は妖怪の世界なのだから。
――夜は怖い。
これまで里の人間に何度もそう忠告してきた。
しかし、自分がそう感じるのは初めてだった。
霊撃のストックはまだある。大勢で向かってきたところをまとめて吹き飛ばしていけば何とかなるだろう。
ところが、先ほどから妖怪たちの攻撃は勢いが弱まってきた。
諦めたわけではないだろう。周囲からは殺意のこもった気配が感じられる。
様子を見ているのか、何かを待っているのか、それとも罠か。落ち着こうにも焦りがつのる。
霊夢の霊力自体は全盛期から衰えたわけではないが、体力はそうもいかない。
このまま戦闘が長引けば不利になる。かといってこちらが動き回っても結果は同じだ。
にらみ合いが続く。
こんな時、昔の霊夢なら自分から仕掛けに行っただろう。待つのは性に合わない。しかし今はそうもいかない。
敵が攻撃を仕掛けてこない間に、僅かでも体力を回復させておきたい。
「昔、か――」
ずっと昔、もう20年になるだろうか。霊夢は母から博麗の巫女を引き継いだ。
その数日後、母は霊夢の前から姿を消した。今と同じくらいの季節だった。
 ――これから妖怪退治に出かけるわ
確か母さんはそんな事を言っていた。その言葉に対して、妖怪退治は博麗の巫女を継いだ私の仕事だと。そういった気がする。もう母さんが戦う理由などないと。
 ――これが最後よ。これは……私が片付けないといけないの
優しい笑顔だった。そして、有無を言わせない笑顔だった。
 ――きっと長くなるわ。だから霊夢?これからは1人でがんばるのよ
そう言って出かけた母は、結局帰ってこなかった。
「母さんも同じだったのね」
思えば霊夢は母から、先々代のことを聞いたことが無かった。
おそらく歴代の博麗の巫女がずっと繰り返してきたことなのだろう。自分の後継者に博麗の巫女を継がせ、そして殺されていく。
妖怪の目的は分からない。復讐か、名声か。巫女の血肉に特別な力があると考えているかもしれない。
とはいえ、ここで素直に殺されてやるつもりなどない。
数は多いが、周囲には力の強い妖怪の気配は無い。神社までたどり着けば、それ以上は追ってこないだろう。
これならまだ突破できる。霊夢はそう思った。
これ以上強い妖怪が現れる前ならば、突破できる。






             ◆






太陽が地平に沈み、夜の時間が始まった。
そして、ここ紅魔館では館の主である吸血鬼、レミリア・スカーレットが目を覚ました。
「おはようございます。お嬢様」
傍らに控えていたメイド長が、目を覚ましたレミリアに始まりの挨拶をおくる。
「おはよう」
そう返事をし、レミリアは体を起こした。そして窓の外に視線を移し、
「いや、少し遅かったようね」
「はい」
律儀に返すメイド長に苦笑しつつ、着替えを済ませる。今日は外出用のドレスだ。これから血に濡れるのが少々惜しい。
「まだ生きてるかしら」
レミリアはそうたずねた。自分が着く前にパーティーが終ってしまっては意味が無い。
「10分ほど前の報告では生きているとのことです」
銀色の懐中時計で時刻を確認しながらメイド長は答えた。
「そう」
空を見上げる。満月でないのが残念だった。吸血鬼の戦いには血のように紅い満月こそ良く似合う。
「行ってくる。きっと長くなるから後を頼むわ……美鈴」
「はい。お嬢様」
深く頭を下げる赤毛のメイド長を残し、レミリアは夜空に向かって飛翔した。






マヨヒガのスキマ妖怪も動いた。
「藍!ら〜ん!」
「お呼びですか?紫様」
呼び出しに応じ、式が姿を現す。
「これから出かけるわ」
用件は簡潔。紫がいないときに藍がやるべき事は、全て式に刻まれている。
「わかりました。どちらに行かれるのですか?」
はぐらかされる事が多いが、一応尋ねる。
「ちょっと神社にね」
不気味な笑みを浮かべ紫が答える。ゾッとする笑顔だ。こういう時の紫はこの上なく機嫌が良いか、それとも……この上なく機嫌が悪いかのどちらかだ。
「神社ですか……。そういえば巫女の代替わりがあったとか」
「ええ。でも用があるのは昔の巫女。今の巫女は後で良いわ」
「昔の……博麗霊夢ですか?」
「ええ……そろそろ終らせようと思ってね」
紫の笑みがさらに深まる。藍の妖獣としての本能が、これ以上は命に関わると告げる。
「わかりました。お気をつけて。あとはお任せください」
どんな時でも定型文句をスムーズに言えるのは式の便利なところだ。
「任せたわ。それじゃあ」
軽く手を振り、紫がスキマに消えた。






             ◆






あれからどれ程の時間が経過したのか。どのくらい進んだのか。もう霊夢には分からなくなっていた。
ずいぶん進んだ気もするが、方角が合っているかわからない。もしかすると、ジグザグに進んだせいでかなり進んだ気になっているのかもしれない。
今は息を潜めながら空の見えるところを探していた。月と星が見えれば、その位置で方角を知ることが出来る。
やがて、木々の切れ目から月明かりが差し込む場所を見つけた。
攻撃を警戒しながら少しずつ近づき、そして空を見上げる。
そこにあったのは僅かに欠けた
「紅い、月――」
空に浮かぶつきの色は、血で染め上げたような紅。霊夢の背中に嫌な汗が流れる。
そして、紅い月を背に蝙蝠の羽を広げて飛ぶ吸血鬼と目が合った。
 ――こんなにも月が紅いから本気で殺すわよ
あの時、彼女はそう言った。その後は親しい仲になったが、彼女がいつも仕返しを考えていた事は知っている。
「レミリア……」
声が震える。それは疲弊のせいだけではなかった。
「こんばんは、霊夢。ずいぶん探したわ」
紅い月よりも更に紅い目が笑みの形を作る。
霊夢は今では、“弾幕勝負なら”レミリアにそう負けはしない。霊撃の残りは少ないが、十分勝てる相手が・
だが、単純な“殺し合いなら”……。夜の吸血鬼に人間が勝てる見込みなど、ましてや疲弊した人間が勝てる見込みなどありはしない。
「紅茶が飲みたいわ。霊夢、あなたの紅茶が」
そういいながらレミリアは魔力を編み上げる。光と共に手に現れたのは神槍グングニル。
「あなたの運命を少し見させてもらったわ」
運命を操るというレミリアの能力。それを防ぐ手段などあるのだろうか。
「でも、どうやら私が操る必要もなさそうね。私がここに来たせいで、あなたの運命が変わってしまったのかもしれないけど」
レミリアは紅く染まった月を見上げる。気のせいだろうか、鉄くさい血の臭いがする。まるで血の海に居るかのように……。
「さぁ霊夢。こんなにも月が紅いのに――」
「楽しい夜を邪魔にしにきたわ」
声と共に月が裂けた。






「よいしょっと。はい、こんばんは」
裂けた月から現れたのは八雲紫だった。
「……なにしにきたのよ」
霊夢は苦りきった様子で尋ねた。
「茶番を終らせにきたのよ」
紫は笑顔を浮かべる。
嫌なときに現れる奴――それが紫に対する霊夢の認識だった。それは何年経っても変わらない。
「この状況でまだ戦う意思があるなんてね。さすが博麗に巫女と言ったところかしら?」
紫のからかう様な言い方が気に障る。
「もう巫女じゃないわ」
強気に言う霊夢を見て、紫はうれしそうな顔をする。
「そうね。だからこそこの状況がある。でも――いい加減終らせましょう?役目を終えた巫女は戦う必要は無いわ」
紫がスキマから傘を取り出し、開く。
小さな、しかし耳にしっかり届く音が響く。
それが合図となった。
霊夢の周囲を囲む妖怪から一斉に攻撃が放たれる。
ほんの少し遅れてレミリアも、そして紫も動いた。


『神槍 スピア・ザ・グングニル』
『境符 四重結界』


レミリアが巨大な槍を振るい、紫が結界を展開する。






あぁ、死んだな。と霊夢は他人事のように思った。
死ぬ前は世界がゆっくり進んで見えると聞いたことがあるが、本当にそうみたいだった。
目の前にはゆっくりと弾幕が迫ってくる。上を見ればレミリアが槍を振り上げこちらに飛んできていた。紫も結界を展開しようとしている。
残念ね。レミリア、紫。その速さじゃ届かないわよ?
そんな事を考えていた。どうせ殺されるなら、雑魚なんかに殺されたくは無かったが、これはこれで良いのかもしれない。
少なくとも、レミリアや紫に……友人に殺されるよりはずっと良い。
頭の中には今までの出来事が走馬灯のように流れていく。
楽しかった思い出も、悲しかった思い出も、何もかもが流れていく。
母もそうだったのだろうか。私と同じ光景を見て、同じように友人に襲われて……。
目の前には弾幕が迫っていた。もう手を伸ばせば届きそうだ。
それに手を伸ばそうとした瞬間。それは視界から急に消え去った。
途端に時間の流れが速く、いや元に戻る。
飛来した弾幕をレミリアが薙ぎ払う。
残りの弾も紫の結界が阻む。
霊夢に届く攻撃は、ただの一つも無い。






「「「え――?」」」
三人の口から、同時に間抜けな声が漏れる。
レミリアは空にいる紫を見、紫もレミリアを見る。
僅かな静寂、先に口を開いたのは紫の方だった。
「私は上空、貴女は地上」
「スキマの指示は受けないわ」
文句を言いながらもレミリアは霊夢の前に立つ。
「レミ、リア……」
「紅茶が飲みたいわ。霊夢」
「っ……ケーキは無いわよ」
「辛くなければなんでも良い」
「……おせんべいで、いい?」
「ええ」
それだけ交わして、レミリアは茂みの中に飛び込んだ。紅き魔槍による一閃。
触れた妖怪が恐ろしい声をあげ、灰となって崩れ落ちた。
「さあ、かかってこい。レミリア・スカーレットの手にかかって死ぬ栄誉をその身に与えよう!」
紅い凶暴な光が闇を払い、周囲の木ごと妖怪を切り裂いた。






「まるで悪役の台詞ねぇ」
上空では紫がスキマや結界を展開し、様々なものを引き出していた。
「私も何か台詞を考えておくべきだったかしら」
紫はゆっくりと漂う。そこには何も無い。何も存在できない空間。弾幕も妖怪も、近付くだけで消えてゆく。
「今日は機嫌が良いわ。だから……そうね、私の所までたどり着けたら、命は助けてあげましょう?」
たどり着けたら……ね。そう呟くと紫の顔に笑顔が浮かぶ。ゾッとする笑顔だった。






霊夢はうつむいたまま木に背を向けた。
やはり自分の勘は鈍ってしまっていたみたいだ。
あの2人を敵だと思うなんて……どうかしている。
「ふふ……っ」
自分もずいぶんと歳を取ったものだ。
こんなにも、涙もろくなるなんて――。






             ◆






「くっ、吸血鬼が人間の見方とはな!」
レミリアと対峙した三つ目の妖怪が吐き捨てる。
「昔はあれだけの騒動を起こしたくせに、随分としおらしくなったもんだな。牙でも抜かれたか?」
それを聞いて周囲の妖怪が卑下た笑い声を上げる。
「うるさい雑魚だ。喚くのは死ぬ時だけにしろ」
レミリアが言い返す。
周囲の妖怪が笑うのを止める、しかし三つ目妖怪は気にも留めず続ける。
「それともアレか?お前の所にいたメイドの……なんていったか?」
それを聞いてレミリアの顔が変わる。
「アイツも人間だったなぁ。そういや“死んだんだって?”可哀想になぁ」
「なにが言いたい……」
怒気を含んだ声で、唸るようにレミリアは言う。
その背後には、気配を殺して妖怪たちが近づいていた。
「いやぁ、別に。ただ“残念だったねぇ”と思っただけさ」
途端にレミリアの顔が怒りに染まり、それと同時にレミリアの背後に居た妖怪たちが一斉に襲い掛かった。
全ての攻撃がレミリアに直撃し土煙をあげる。
「ははっ!いくら吸血鬼だからと言ってもこれじゃあ……」
その言葉を遮るようにレミリアに攻撃を仕掛けた妖怪が絶叫を上げる。
土煙が消えるとレミリアが妖怪の体を槍で貫いていた。
貫かれた体からは噴水のように血が吹き出している。飛び散った血がレミリアの頬に付く。
それを指ですくい、口に運ぶ。
「不味い血だ。とても飲めたものじゃないわね」
そういって口に含んだ血を吐き捨てる。
「馬鹿な!いくら吸血鬼だからとは言っても、あれだけの攻撃を直撃して……」
三つ目妖怪が言い終わる前にレミリアが目の前まで移動し、頭を掴んで地面に叩きつける。
衝撃で肺から空気が漏れ、小さく呻く。目を開けると空に上がったレミリアが巨大な槍を構えている。
「失せろ。下種共」
そう言うと、レミリアは巨大な槍を三つ目妖怪に投げつけた。
高速で飛来する魔槍は三つ目妖怪を貫き、しかしそのまま止まらず地面を抉り、爆音と共に森の半分ほどが光に包まれる。
光が消え去ると、下にあった木は妖怪ごと消失していた。
荒野となった地面にレミリアは降り立つ。それはさながら、悪魔によって消された町に降り立つ天使のように。
「地上の妖怪はもう居ないみたいね。さて、霊夢は何処かしら」
そう言ってレミリアは歩きはじめた。






「どういう事だ紫!」
背中に鳥の羽根の生えた耳の尖った妖怪が激昂して叫ぶ。
「なんのことかしら」
紫は空に浮いたまま飄々とした態度で答える。
「いままでも引継ぎを終えた博霊の巫女は殺されてきた。貴様もそれに関して口を出さなかった。何故今になって邪魔をする!」
「今まで口を出さなかったからと言って、それは認めているというわけでは無いでしょう?」
「ぐっ」
耳の尖った妖怪が低く呻く。
「でも、理由をつけるとすれば……そうね。終らせようと思ったのよ。いい加減に。この下らない行事を」
あまりにも身勝手な理由に耳の尖った妖怪は叫んだ。
「っ!ふざけるなよ年増が!」
その言葉に紫の眉がぴくりと動く。
「今……なにか言った?」
耳の尖った妖怪がしまった、という顔をする。しかし、口から出た言葉は戻らない。
瞬間、あたりの妖気の濃度が上がる。針で皮膚を刺すような痛みを伴うほどの妖気。
「ッ!くそったれ、やってられるか!」
羽を羽ばたかせ、耳の尖った妖怪が逃げようとする。しかし体が動かない。
「何処へ行くつもりかしら……」
紫が言う。細められた目は視線だけで人を殺せるほどの恐怖を感じさせる。
「ま、待て!降参だ!逃げるものに追い討ちをかけるのはルール違反だろう!?」
耳の尖った妖怪は必死に訴える。しかし、
「それは弾幕勝負。スペルカードルールのものでしょう?」
そう言って、手に持った扇子を向ける。
すると耳の尖った妖怪を中心に巨大な四面体が出現する。それは森の半分を覆うほどに巨大な結界だった。
「目障りよ。失せなさい」
そう一言呟くと、四面体が中身ごと急激に収縮する。
耳の尖った妖怪がなにやら喚いているが、音が遮断されているのか声は聞こえてこない。
そのまま四面体は収縮していき、ぽんっ、と軽い音を立てて消滅した。
辺りを見回すと、木が切り株だけを残して完全に消失していた。
「空にはもう居ないみたいね。さて、霊夢はどこかしらね」
そう言うと紫は空を飛び始めた。






数刻後。
森は荒野になっていた。
動く影は3人分。
「やりすぎよ……」
霊夢はあきれる様に良い、
「そうかしら?」
紫は首をかしげてとぼけ、
「そうみたいよ」
レミリアは何故か誇らしげに胸を張った。
「まったく、少しは加減しなさいよ。見つかったらなんて説明する気よ」
霊夢は頭を抱える。どう説明すれば穏便に済ませられるだろうか。紫なら森ぐらい直せるだろうが……。
だが、どうやら間に合わなかったようだ。
神社のある方角から厄介な相手が飛んでくる。
「そこの人、あなたたちが犯人ね!」
いきなり決め付ける紅白の巫女。もっとも、犯人というのは間違ってはいないが。
「森を吹き飛ばしたのはあっち」
「空間ごと削り取ったのはそいつ」
紫とレミリアが互いに相手を指差し、擦り付け合いを始める。
「え、紫さんにレミリアさん!? それに……ちょっと母さん、どこ行くの!」
「いや、早く帰らないと娘が心配するかと思って」
「その娘ならここにいます!それで、どうして森がなくなったの?」
小さな巫女が霊夢に詰め寄る。
「えっと、妖怪退治?」
「妖怪退治ね」
「ええ、妖怪退治よ」
視線をそらして言う霊夢に、レミリアと紫も同意する。
しかし、周囲の様子はどう見ても普通の妖怪退治ではない。
森を1つ潰しているのだ。しかも、所々に原形不明な死体や足だけが転がっている。軽く猟奇作品に出てきそうだ。
弾幕勝負でならこんなことになるはずが無い。
「はぁ……まあいいわ。事情は後で聞きます。ひとまず神社に帰りましょう、母さん」
「そうね、さすがにちょっと疲れたわ」
娘に手を引かれる霊夢に、レミリアと紫も続く。
「霊夢、紅茶をよろしく」
「私はお酒がいいわね」
「疲れたって言ったでしょう……」
遠慮のない友人達だった。






             ◆






レミリアと紫は神社の縁側に並んで座り、それぞれ紅茶と酒を飲んでいた。
二人の間にあるせんべいは、お茶請け兼つまみ。この場にいない霊夢は、事情を知った娘に説教を受けていた。
「貴女はもう、人間には関わらないと思っていたわ」
空になった自分の杯に酒を注ぎながら、紫はレミリアに言った。あの人間のメイドを失った時、この幼い吸血鬼はひどく荒れていたのだ。
「……そんなことはない」
かつてレミリアに仕えていた十六夜咲夜は、今はもういない。病が原因で数年前に他界してしまった
咲夜は、病を患っていることを周囲に気づかせないようにしていた。そして誰も気が付かなかった。
それに気付いたときには、もうすでに手の施しようがなかった。どれだけの知識も、万能の薬師も手が出せないぐらいに。
咲夜が倒れてわずか1ヶ月。咲夜はこの世を去った。
あの時、レミリアは初めて、人間の命の脆さを知った。人間の命は短い。それは知識としてはあった。しかし、あれほど簡単に失われるものだとは思っていなかった。
咲夜は最期に、それを教えてくれたのだ。
「スカーレットには、後悔があってはいけないのよ」
レミリアは手の中のカップを口に運ぶ。口を潤す紅茶は、まだ暖かい。
「ようやく人の死を受け入れた?」
「いや、あんな後悔は、もう二度とあってはならないってことよ」
空になったカップを見ながら言うレミリアの口調は強い。受け入れることなどできない。ならばせめて抗い続けよう、と。
「そう、ね」
何度も同じ後悔を繰り返してばかりいる紫は、それだけ言ってコップに残る酒を飲み干した。






会話も途切れ静かになったところに、這い出るように霊夢がやってきた。
「はぁ〜、やっと開放されたわ。まったくあの子は親を何だと思ってるのかしら」
肩をまわしながら深いため息をつく。
縁側に腰を落とすと空いてる杯を手に取り紫に向ける。注げということだろう。
「親に似ず、しっかりした子ね」
霊夢に酒を注ぎながら紫がひどいことを言う。
「霊夢がずぼらなだけよ」
それに追い討ちをかけるレミリア。
友人達が娘と仲がいいのは良いことだが、どうにも彼女達は娘の肩ばかり持つ。自分の扱いはずいぶんと雑だ。それが霊夢には面白くない。
だが助けてもらった手前、素面では文句を言いづらい。酒が回った後でぶつけることにしよう。
「いいけどね……。ところでレミリア。あんた、私の運命を見たとか言ってたわね」
「言ったかしら?」
「言ったわ。いったい何を見たの?」
未来のことをすぐに気にするのは、実に人間らしい。レミリアはそんなことを思った。
「大したことじゃないわ。来年の春、またいつも通りのことが起こるだけ」
「いつも通り?」
「そう。私達が集まって、霊夢が調子に乗りすぎて、それでいつも通り叱られる」
今年もそうだったし、去年もそうだった。きっとこれからも……。
「うぇ、私またあの子に怒られるの……」
げんなりした様子で霊夢は酒を口に運んだ。
「嫌なら母親らしい態度を取ったら?」
このところレミリアが神社に来ると、いつも霊夢は叱られていた。紫もあきれるように肩をすくませている。
「そんな事いわれても、“母親らしい”なんてわからないわ。いいのよ、あの子ももう一人前――」
「母さん!」
霊夢の言葉をさえぎって、後ろから大声が上がった。
「きついとか疲れたとか言ってたから、寝るものだと思って寝室に様子を見に行ったら……どうしてここでお酒を飲んでるの!」
「なに言ってるのよ。疲れたから飲んでるの」
紫に酒をまた注いでもらいながら霊夢は答える。
「ダメです! 今日は早く寝てください!もう、紫さんもレミリアさんも、あまり母さんを甘やかさないでください」
その様子を見て紫が笑いながら言う。
「ここにいると、親と子の境界がわからなくなるわねぇ」
娘から逃げるようにして酒を飲む霊夢の姿は、とても親のものには見えない。
「ちょっと紫! アンタ変なことしてないでしょうね!?」
「してないわよ?」
「ほら、母さん! 杯を放しなさい!」
「嫌ー!」
霊夢は杯を取られないようにともがく。十分元気そうだ。
「諦めて寝たら? 霊夢」
かるく笑みを浮かべ、その様子を見ていたレミリアが言う。
「だったらあんたも寝なさいよ!」
「吸血鬼に夜寝ろだなんて、非常識ね」
「昼も出歩いてるあんたが言うな!」
「もう母さん! あんまり騒ぐと近所迷惑です!」
「近所なんてないわ!」
娘の言葉に霊夢が反論する。
「ないわね」
「遠くても近所というのかしら」
紫とレミリアもそれに同調する。
「う……」
いっせいに指摘されてひるむ娘をみて、霊夢は勝ち誇った顔をする。
「だから、もーちょっと飲むわね〜」
「だ、だめです! 母さんの“ちょっと”はちょっとじゃないんだから!」
今夜は、いつもより少しにぎやかな夜だった。












【あとがき。もしくはアレンジした人の戯れ言】
ソ「結局お前は誰なんだよ。俺の反存在かなんか?」
ダ「いい加減このネタ引っ張るの止めろよ」




さてはて、いろいろあってやってしまいました。
アレンジと言っても原文どおりの箇所が多くあります。ってか、かなり多いです。会話なんかは基本的に同じですし。
まぁ、その辺はこの際置いときましょう。
こうしてこの話のアレンジを書くキッカケはやはり、あの掛け合いです。
「私は上空、貴女は地上」
「スキマの指示は受けないわ」
すごい好きです。素直にカッコいいです。今読んでも鳥肌です。絵も描くぐらいに。
そうゆうわけで、こうしてアレンジを書いてしまったわけですよ。感想ベタなんで掲示板には書きませんが。
ただまぁ、出来たのを自分で読んでみて「なんだかなぁ」と。
先にも述べたとおり原文どおりの箇所がかなり多いなぁ。とか、戦闘シーンは冗長だったかなぁ。とか、原文どおり段落ごとに下げればよかったかな。とか。
それでもまぁ、やりたい事がやれてよかったです。


最後に、この大元である博麗 言璃のSSを書き、更にはこのアレンジの提出許可をくれたnenecoさんに万の感謝を。
いつもSSの感想いただき感謝です。
さて、それでは今回はこの辺で。
いい加減レポート書かないと単位落としそうなソンガでした!


壊滅的に時間が足りない!




ダ「感想ベタって言うが、レポートは書評と論文の感想だったよな」
ソ「やー。思い出したないー!」

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