Top > 八紀原 公乏_SS

八紀原 公乏_SS

Last-modified: 2010-05-01 (土) 22:28:40 (3515d)

SS本文

僕○第68回


 知識の半獣が守護する人里にて、今宵も悪鬼羅刹が駆け回る。
「悪い子はいねぇがぁ! 泣く子はいねぇがぁ!!」
 此度闇夜を駆けるは白の髪靡かせ、大鉈を携える大柄なる女性。その身を使われた子供は今にも泣きそうな顔で言葉にもならない言葉を上げている。
「あ、あぁ……いぅ」
「おめは悪い子がぁ!? 泣く子がぁ!?」
 だが、白髪の女性は子供の言葉にならぬ言葉を一蹴し、明確な言葉を求める。その威圧についぞ子供は泣き始める。
「ひぅ……うわぁぁあん!! 僕悪い子ですぅ! ごべんなざいぃぃ!!」
「うむ! ならばこれからもそうであるといい!」
 涙声で泣き崩れ己が罪を告白する子供を女性は鉈を持たざる左手で軽く叩き激励する。そして、呆気にとられる子供をその場に捨て置き、次の獲物を求め闇夜を駆ける。
「ふむ。次なる獲物はあやつにするか」
 女性の目に映っていたのは、仕事帰りの男性だった。見るからに――自分の正義を持っている――いい獲物だった。女性は音もなく闇夜を駆け、一足で男性までの距離を詰める。
「悪い奴ぁいねぇがぁ! 泣く奴ぁいねぇがぁ!!」
「な、なんだ!? って、妖怪!?」
 男性は咄嗟の事に驚いたようだが、すぐに女性の言葉を反芻して理解をしたのか、吐き捨てる。
「真坂妖怪に悪か問われることになるとはな。お前たちにも思う事があるかも知れんが、俺は俺達の行動が間違っているとは思わん。…………ん?」
 男性はふと言ってから思う。果たして力の無い自分が、武器を持っている――まぁ持ってなくても勝てるとは思わんが――妖怪相手に異を唱えてしまってよかったものかと。そしてその答えはすぐに明かされる。女性の解答を以て。
「ふふふ、そうか。お前は正しい。正しいとも。故に……死ねぇ!!」
「やっぱりかぁ!」
 男性は逃げようとするが、女性の力は圧倒的で、逃げる事が叶わない。最早これまでかと思ったその時――。
「その手を離せ! 国符「三種の神器 剣」!!」
「むっ! 慧音かっ!」
 女性は咄嗟に男性を掴んでいた手を離し、繰り出された斬撃を回避する。そして現れた乱入者――上白沢慧音を睨みつける。
「ここは私に任せて逃げてくれ。……公乏。まだお前はこのような事をするのか」
「慧音……。幼き私を匿い生きさせてくれた事は感謝する。本来なら迷惑はかけたくはないと私も思う。だが! これが私の目的、使命とあらば!! 心苦しくとも行わなければならんだろう!!?」
「よくもそのような口歯の浮くような嘘を平然とっ!!」
「それは我が母に言え慧音! この騙りは母譲りでなッ!」
 両者は語り合いながらもその戦闘を激しくさせていく。公乏の頑強なる身体、その腕力を振るいて慧音の剣を防ぎ、反撃を交わす。対する慧音の様々な攻撃、正道不意問わずに放たれる攻撃は公乏を追い詰める。
「クハッ! やはり慧音には甘言苦言で惑わすは無理か。ならば、やはり鬼らしく、頼るはこの力にするかっ!」
「公乏! どうしてもその目的を捨てる気にはならないのかっ!?」
「愚問! 他の者はいざ知らず! 慧音ならば理解してくれると思っていたのだがなッ! 同じく半分で目的を持つ者として!」
「くっ!?」
 慧音は同意こそは出来なかったものの否定も出来なかった。気持ちは理解できなかったわけではないのだ。ただ、それが慧音の目的と相反するだけで。故に止めねばならないだけで。
「ふふっ。案ずるな慧音。手心などいらん。ただ、私を否定さえしてくれぬのであれば、どれだけ邪魔をしてくれても構わん。一向に構わんとも!!」
「わかった。私は私の使命の為に……止めさせてもらう」
「うむ! さあ来るがよい!!」
 二つの信念がぶつかり合う。譲り合えぬ思いを抱いて、まだ戦いは続いて行く

コメント欄


URL B I U SIZE Black Maroon Green Olive Navy Purple Teal Gray Silver Red Lime Yellow Blue Fuchsia Aqua White