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名無し花妖精_壁SS

Last-modified: 2009-06-14 (日) 08:43:31 (3626d)

SS本文

勇敢なる戦士達へ。






――――――――――その花は、一体何を見てきたのだろう






「ソレ」は、突然その姿を現す。
広い広い幻想郷の、あまり人が好んで入っていくような所ではないであろう森。
更に奥へ進んでいくと突如として現れる野原と呼ぶには少々狭いであろう花畑。その中心部に「ソレ」は存在していた。
そして、その小さな花畑に彼女たちは居るのだ。


普通の妖精のあり方というのは、特に当てもなくフワフワと飛び回り、そして特に理由もなく悪戯をしてまわるというものであろう。
しかし、彼女たちはそのあり方には当てはまらない。明確な「意志」を持って、その周囲にとどまっているのだ。


まるで「ソレ」を守っているかのように。
まるで「誰か」の帰りを待つかのように…。








――――――――――その花は、一体何を思ったのだろう








「ソレ
は、元が一体何だったのかはよくわかっていない。わからないが、1つ言えることは、それは「外から来た」ものだということである、
「ソレ
が、何に使われていたものなのかもあまりハッキリとしていない。やはりわからないが、これも1つ言えることは「外の世界では忘れられ始めている」ものだということである。幻想郷に来るものは、大抵そういったものだからだ。


そして、彼女たちは何故そこに居るのか、何故「ソレ
を守り続けているのか。
…それは、彼女たちですらハッキリとはしていないのだ。


なぜなら、それは幻想郷の外でのお話。誰も知ることはないのだから。








――――――――――その花は、一体何時からそこに咲いていたのだろう








その花は、飛び立つ彼らへの最後の贈りものだった。


彼らは、最愛の家族のもとへと手を振る。もしかすれば、その中には恋人もいるのかもしれない。生まれたばかりの我が子がいるのかもしれない。彼にも、つい最近結婚の約束をした恋人がいた。


人々は口々にこう言うのだ、「オクニノタメダ」…と。
果たして、一体何人の人が心からそう思っていたのだろうか、今はもう知るよしもない。


飛び立つ時を今か今かと待つ彼の手の中にあるのは、夏の季節を表すかのような立派な一輪の花。
まるで太陽を象徴しているかのような、小柄ながらも向日葵にも負けず劣らずな花だった。


操縦桿を強く握り、最後に彼女の顔を見る。―――彼女は、泣いていた。


その後の彼らを知る者はいない。それを知るのは、ただ一輪の花のみなのかもしれない。








――――――――――その花は、一体何故そこに咲いていたのだろう








「ソレ」が動くことは二度と無い。しかし、
それでも彼女たちはそこを離れることはない。
…ただ、


「遊ばないの?」と、1人の要請が声をかける。
「いや、遠慮しておくよ」と、やんわりと断る。


――じゃぁ、しばらくここに居ても良い?


――いいよ。


――あなたたちは、他の場所には行かないの?


――うん。


――それは、どうして?


――私たちは、ここを守らなくてはいけないからね。


――なんで?


――わからない。


苦笑して答える。怪訝そうな顔をされてしまったが、本当にハッキリとはわからないのだから、答えようがないのだ。
…それでも、


――じゃぁ、明日も来てもいい?


――ん、構わないよ。


この毎日に飽きることも、寂しさを感じることも特にない。
こうやって、これからも彼女たちはこの場を守り続ける。








――――――――――その花は、これからもそこに咲き続けているだろう








種名、テンニンギク。
季節、初夏〜夏にかけて。
花言葉、協力・団結。


別名、…特攻花。

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