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六道 夏月SS_天神楽

Last-modified: 2009-08-31 (月) 10:03:25 (3698d)

SS本文


「夏月、来週の日曜日に二人でピクニックに行こうか」
大好きな華夏お姉ちゃんが約束してくれたから、私はその日を心待ちにしていた。怒られて外出禁止にならないようにずっとよい子にしていた。だってずっと離れ離れだったお姉ちゃんとまた一緒に遊べるんだもん。そのためならどんなことだってできる。うん絶対に。
そう、私はお姉ちゃんとのピクニックを楽しみにしていたんだ。なのに……。




「申し訳ありませんが華夏様は風邪をこじらせてしまい、外出はできません」
ピクニックの日、華夏お姉ちゃんが住み込んでいる四界神社を訪ねた私を待っていたのはお姉ちゃんの笑顔じゃなくてこの神社の神―眩識が告げた言葉だった。……うそ、なんで?
「なんでお姉ちゃんが風邪をひいてるの!?」
「落ち着いてください夏月様!華夏様は先日川に溺れた村の子供を助けるために生身で川に……」
落ち着けと言われても落ち着けるはずがない。それに……
「お姉ちゃんには折神があるじゃない!わざわざ川に飛び込む必要なんてないよ!」
そう、華夏お姉ちゃんには折紙に神を憑けて操る折神という凄い力がある。だから危険な場所には折神を使うはずだ。なのに風邪をひいただなんて……。
「そっか、眩識は私がお姉ちゃんと一緒にピクニックに行くのが気に入らないんだ……」
そうだ、そうにきまっている。眩識はお姉ちゃんを渡したくないから嘘をついているんだ。だったら……。
「……あの、夏月様?華夏様はその時折神を切らしていて……夏月様?」
ダッタラコンナヤツナンテツブレテシマエバイイ
私は怪訝なフリをしている眩識に右手をかざし、
「ぐちゃぐちゃになっちゃえ」
力を放つ。直後、ガラクタと化した眩識が目の前を転がるはずなのに……


私の身体は横から飛んできた拳によって宙を舞っていた。




目前の危機は回避した。四界神社の兵器の付喪神、No.443-況拭縦名離轡轡澆魯蹈吋奪肇僖鵐舛魏鷦しながらそう判断する。異常空間の出現を探知したため境内まで確認したところ華夏の妹の夏月が歪みの力を解放するところだった。もしあの力が解き放たれていたら……
「間違いなく本殿が破壊されてしまうところでした」
本殿が破壊されてしまったら華夏だけではなく自身を含む付喪神達の住まいが失われてしまう。そして何よりも自身が修復に駆り出されてしまう。故にロケットパンチを放ち夏月の行動を妨害した。結果は本殿破壊を完全に阻止したもので
「……状況完了。ふぅ、いい仕事をしました」
「いい仕事じゃありませんよシシミ様!夏月様が大怪我をしたらどうするんですか!」
「……眩識、私は考えられうる最善手を撃ちました。それにより危機回避に成功したのだから間違いなくこれはいい仕事です」
「ですけれど……」
眩識が何やら文句を言おうとしつつ夏月の方を振り向いた瞬間息をのむ。
「あはは、そっかシシミまで邪魔をするんだ」
そこには虚ろな瞳でこちらを見ている夏月がこちらに右手を向けているのが確認出来る。
……状況は更に悪化、対象六道夏月のこちらに対する敵対意思を確認。現状打破の為の最適解、それは……
「対象六道夏月を敵性個体と認定。威力制圧を行います」
「シシミ様いけません!これ以上夏月様を刺激させてしまえば最悪……」
眩識が自身の判断に異議を唱えようとする。だが戦闘準備は解除しない。なぜなら……
「眩識、残念ながら貴女は私の行動を制限する権限を有していない。現状私に対して命令できるのは華夏だけ」
頭を抱えている眩識を横目で見流し、自身の兵装を夏月に向けて展開する。対する夏月が腕を振り被る動きを見せたその瞬間、
「状況、再開します」
夏月に右腕部装備のガトリング砲を全自動で放った。




「……あぁ、一体どうしたら」
華夏様が風邪を引いてしまっただけでも大変なのにそのうえ夏月様とシシミ様までもが喧嘩……いえ死闘を始めてしまった。シシミ様の火器の嵐は夏月様の歪みによって叩き潰され、夏月様の歪みは高機動で飛翔するシシミ様には届かない。現状は膠着状態が続いているものの、下手をすればここ一帯が焦土と化する危険性があるのだ。一応幻灯の障壁で周囲の被害を防いでいるものの、
「あははははは、みんな潰れちゃえ!!」
「第一リミッター解除、幻想兵装解放、発射!!」
双方とも攻撃が激しくなっていく。このままではまず間違いなくこの障壁は砕けてしまうだろう。
「う〜ん、一応この状況を打破する手はある事にはあるんですが……」
だがこれは夏月様の肉体だけではなく心を傷つけてしまう可能性がある。あと私もかなり痛い。だから出来ることならこの手は使いたくないのですが……
「私とお姉ちゃんの邪魔をする奴は……、皆潰れちゃえ―――――!!」
「幻想空間解放!妹達機動!敵性の殲滅を開始します!『編隊 ジェットなんとかアタック』!!」
…………ふぅ。
そろそろ本気で幻想郷が吹っ飛びそうな気がするので『最終手段』を取る事にした。




「二人ともやめなさい!」
鋭い声に反応して両者は動きを止め、声の響いた方を向く。そこには黒のコルセットと白のベストを合わせて巫子装束風に纏ったセミロングの女性が腰に手を当てて二人を見上げていた。
「お姉ちゃん!」
「華夏!」
両者はその女性―華夏の下に降りてくる。
「全く、二人ともどうして暴れたりしたの?」
「だって眩識が……」
「夏月が私に対して敵対意識を持っていたためです」
「それはシシミが私を殴るから……」
「それならば夏月が破壊活動を……」
華夏の問いに対し、両者は互いに自身の正当性を訴えてくる。華夏は頷きながら、
「はい、わかったから二人ともこっちに来なさい」
両手で手招きをする。そしてバツが悪そうな顔をして近づいてきた二人を両手でかかえるように包み、
「申し訳ありません夏月様、シシミ様」
とその謝罪の言葉に両者が疑問を覚えるより早く華夏―の幻灯で爆発弾幕を纏った自身を偽装した眩識が弾幕を起爆させる。


その結果、四界神社の本殿にド派手な爆発が巻き起こった。当然三者は爆発の直撃をまともに受けてしまい三者とも意識を失ってしまった。




「はぁ、全く世話が焼けるのだから……」
「……申し訳ありません華夏様」
「……面目ないです」
三人が並んで寝ている様子を見て華夏は溜息をついた。なにしろ祈願成就用の折鶴を使って何とか風邪を治し、さぁいざ出かけようと境内に出てみれば、何と見知った三人が黒こげで倒れているではないか。驚いた華夏はまず三人を部屋まで運び、そして……
「全く、噂に聞く八汰烏が襲って来たのかと思いました」
「ですが苦情を言いに地底にまで行ったのは流石に行動力がありすぎるのでは?」
「そんなことはないわ。あ、これ御土産ね。地獄温泉卵」
つい先ほどまで地霊殿の主に文句を言っていたというのだから驚きである。
「……さて」
華夏は一番奥―頭から布団を被っている夏月の方を振り向く。華夏の視線を感じたのか夏月は布団から顔を出し、
「お姉ちゃん、御免なさい」
申し訳なさそうな顔で頭を下げる。対する華夏は厳しい表情で問いかける。
「夏月、貴女がどうして謝るのか、その理由は自分でわかってる?」
「……だって私が眩識やシシミに迷惑をかけたから……」
そう呟く夏月を見て華夏は表情を和らげる。
「だったら他にもすることがあるでしょ?」
「他にも?……あっ」
夏月はふと何かに気付いた様子で立ち上がり、
「眩識、シシミ御免なさい」
眩識とNo.443-況燭妨かって頭を下げた。そしてそのまま頭を上げようとしない。だから眩識は起き上がって夏月に向かって微笑み、許しの言葉を放。
「いいのですよ夏月様。間違いは誰にでもあります。それに私も夏月様を騙してしまいましたから」
「ううん、でも元々は私が眩識を疑ったりしたから……」
「夏月、貴女は確かに間違ったことをしました」
夏月の言葉を遮るように放たれるNo.443-況燭慮斥佞鵬瞳遒良従陲賄爐蠅弔。眩識が何かを言いたそうな目でNo.443-況燭鮓るが彼女は構わず話し続ける。
「ですが、私達も貴女に間違ったことをしました。だからおあいこです」
夏月を許す言葉を。
それを聞いた夏月は両の目じりを潤ませ、
「御免なさい、御免なさい、御免なさい。皆、本当に御免なさい!」
と謝罪の言葉とともに泣き叫ぶ。そんな夏月を華夏は抱き寄せてあやしてくれた。




結局夏月は一日を四界神社で寝て過ごし、華夏と二人でピクニックに行くことは出来なかった。しかし夏月の心は不思議と曇る事はなかった。それは華夏の想いにふれることができたからなのか。それとも夏月の心に巣食っていた歪みが一つ解けたからなのか。その答えは夏月にはわからない。
ただ一つわかる事、それは彼女達姉妹がお互いにお互いのことを大切に思っているということ。そのことを心に刻み、夏月は暖かな気持ちで眠りについた。


終わり

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