クレア・ソノ・アルテノイツ_SS
Last-modified: 2010-01-31 (日) 20:18:11 (5197d)
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■僕○第64回
「パチュリー様。パチュリー様」
紅魔館の図書館にて、今日も元気な小悪魔が、己が主パチュリー・ノーレッジの下に駆け寄る。
「どうしたの小悪魔?」
小悪魔は手にした赤いアミュレットをかざしながら、パチュリーに問う。
「昔このアミュレットに封じられた吸血鬼と戦ったって聞きました! 一体どんな戦いだったんですか!? わくわく」
「そう……あれは80年前……」
それは実にあっけない最期だった。血霧の吸血鬼クレア・ソノ・アルテノイツは哀れパチュリーに不意をつかれ一瞬の隙を見せたかと思えば、レミリア・スカーレットの連撃によって肉片一つ残すことなく無残に挽き殺され、偶々路上に落ちていたアミュレットを媒介にしてパチュリーに封じられたのだった。
終わり
「えっ? そんなにあっけなかったんですか?」
小悪魔の疑問はもっともではあったが、実際にこんなものだったのである。ただ、縮尺と時間の都合により一部省力されている部分はあるものの、大まかな戦闘の部分は外してはいない。
「私達が戦った時点であの吸血鬼はすでに全盛期の力を失っていたからというのが大きな理由ね」
「そうなんですか」
「ええ。後、それには残留思念とかが詰まっているから、下手すると乗り移られるから注意してね」
「はい! ところで……」
「どうしたの?」
「私が衰え故に人間の身体を流用してたから出来た奇策や、様々な罠を弄した戦術が割愛されているのはなぜですか?」
小悪魔の瞳には、見慣れぬ朱色が灯っていた。随分昔に見た朱色。それの持ち主は小悪魔の持つアミュレットの中身。クレアの色。
「なんでわざわざ失敗談を小悪魔に教えなきゃいけないのよ」
「あの時とは随分な変化ね。いい変化だけどむかつくわ。殺る?」
小悪魔(INクレア)の目には十二分な闘志が備わっていた。はぐらかすのは難しいだろう。故に、
「いいわよ。でもここは幻想郷。ここでのルールに従ってもらうわよ?」
「構わないわ。アミュレットの中からも外が見れないわけでもなし。この悪魔の知識もあり。ルールは理解してるわ」
互いは言葉も交わさずに距離を取り始める。そして――。
「日符『ロイヤルフレア』」
「ぎゃあぁぁあぁぁあああ!!!!!」
決着は一瞬で付いた。小悪魔のスペックと、吸血鬼としての特性ゆえによる日符の威力増加は耐えきれるものではなく、小悪魔は一瞬で戦闘不能となった。
パチュリーはしばし思案をしたのち、
「咲夜」
「何でしょうかパチュリー様?」
どこからともなく表れた咲夜に驚くことなく、小悪魔の手からアミュレットを取り上げ、咲夜に渡し、
「処分しておいて」
「わかりました」
その後、咲夜によって処分されたアミュレットは、サニーに拾われ、チルノに奪われ、霊夢に拾われ、ツケの代わりに香霖堂に質入れされ、今は香霖堂の店内に並んでいる。
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