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ディア・ナーメンロース_SS

Last-modified: 2009-11-15 (日) 13:31:56 (3683d)

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僕○第47回


「小悪魔? いるかしら?」
「どうしました? パチュリー様」
魔導図書館にて書物の整理中に、ディア・ナーメンロースは図書館の主の声に呼ばれたので、すぐにはせ参じた。
「あら、貴女じゃなかったのだけれど……まぁいいわ。貴女をここに残すのも問題だし」
「……つまり、パチュリー様は今から外出するにあたり、付き添いを所望したわけですか」
「そういうことよ。本当は小悪魔を連れていこうとしたんだけれど……貴女も小悪魔だったのよね」
 パチュリーが間違えたのも無理はない。ディア・ナーメンロースは、外見は魔導図書館の司書と全く同じ姿をしている。しかし、その実態は魔導図書館に封印されていた禁書「薔薇十字の小剣」である。うっかり開けてしまった小悪魔の情報を基に体を構成したのである。そして今は……なぜか小悪魔と一緒に司書の仕事をしているのである。
「私の事はナーメンロースと呼ぶように言いましたが、有事の際のことを考え、小悪魔でも反応するようにしております。あと、小悪魔が手が足りなくなったため、新しい仕事手して、小悪魔を召喚しようとしてましたから、今後はさらに混乱すると思いますよ」
 ナーメンロースの言葉にパチュリーは額に手を当てる。だが、当のナーメンロースは気にもせずに、パチュリーに対して問う。
「それで、一体何の用で外出なさるのですか? パチュリー様が外出なされるというだけで驚愕なのですが、白黒の始末でしたら全力を持って当たらせていただきます」
「そんな些事ではないわ。でも、魔理沙とは一悶着はあるかもしれないわね」
「と、言いますと?」
 パチュリーは扉に向かいながらただ一言「魔導書」とだけ言った。ナーメンロースも、すぐにその意を理解し、それ以上は問わずパチュリーに付き従い紅魔館から外に出た。




「予想道理の展開ね。日符『ロイアルフレア』」
 全てを焼き尽す光熱が周囲を覆い尽くす。だが……、
「無駄だぜっ! いつまでも使い古しのスペルじゃあこの魔理沙さんは捕まらないぜ! 魔符『スターダストカーテン』!!」
 魔理沙の周りを覆い尽くす星のカーテンが光熱を遮断する。さらに、カーテンの内から無数のレーザーがパチュリーを狙い打つ。
「これでチェックだぜ。パチュリー!」
「させるか! ブラオゼンヴィント! リヒトケーリッヒ!」
 逆巻く風が襲い来るレーザーを阻み、幾重にも反射する光線が光の檻となり、魔理沙の移動を制限する。
「なっ!? っと、今回は小悪魔もいたのか……しかも、こないだの好戦的なやつか。だがッ! 例え2対1でもこれを諦めるつもりはないぜ。先に見つけたのは私だ。譲ってやる道理はないからな」
 魔理沙は手の内の魔導書を片手で弄びながらパチュリー達を見降ろす。
「そうね。道理はないわ。だから……今回は奪いにきたのよ。魔理沙。行くわよ、小悪魔」
「了解です。いつもいつも図書館の本を無断で持っていくネズミをここで始末します。あれは……私の――モノ(食料)だ!!」
「ふんっ。勘違いはよくないぜ。あれは――私の物だッ!! 恋符『ノンディレクショナルレーザー』!!」
「ここで沈めっ!! 白黒ぉおおおおおおおーーーー!! 報復『レヴェンシェネーゲル』!!!」
 魔理沙の放った無指向性のレーザーをナーメンロースの魔力の爪が切り裂いていく。2撃、3撃と繰り返していくうちに、少しずつ魔理沙が押し込まれていく。
「ちっ! なかなかやるな! だったら! 光符――」
「させるかぁあああぁぁあああーーーー!!!!」
 魔理沙がスペルを発動させる前に、ナーメンロースの爪がスペルカードを打ち払う。弾かれたスペルカードは空中で霧散したが、魔理沙が一瞬にやりと笑ったのをパチュリーは見た。
(スペルが中断されたのにあの表情? ……まさか!?)
 パチュリーがとある可能性に気づいたのと同時、ナーメンロースは魔理沙の止めの一撃を入れようとしていた。
「万策尽きたようですね。苦しまないように一撃で決めてあげます。幻想郷に散ってください!!」
「待って小悪魔! 罠よ!!」
「えっ?」
「遅いぜ! 『アースライトレイ』!!」
 パチュリーが止めた時には既に遅かった。魔理沙が行ったのは時限式スペル。宣言後、一定時間経ったら発動するというトリッキーな使用法である。
 そうして放たれた無数の光条がナーメンロースを襲う。パチュリーはとっさに間に入り込み防壁を張ったが、二人とも吹き飛ばされた。何とか、致命傷は負わなかったものの、二人ともほぼ満身創痍となってしまった。
「形勢逆転だな。その傷じゃあ、これ以上は無理だろう。私は行かせてもらうぜ」
 魔理沙がそう言ってしまうほどに、二人は満身創痍だった。特に、ナーメンロースを庇ったパチュリーに至っては、すでに意識を失っていた。しかし、
「どこに行くつもりですか? いえ、行くのは結構ですが、置いてかなければならない物がありますよね」
「ほぅ。まだ立ち上がるとは大した小悪魔だぜ。まだやるのか?」
 ナーメンロースは、負傷した左肩を腕で抱き、右足を引き摺りながらも、決して衰えぬ闘志がたゆたう瞳で魔理沙を見据えながら「当然です」と擦れた声で言った。
 それが――その一言が――闘争の幕を再び引き上げた。
「その気概は買ってやるぜ! だが! これで終わりだぜ! 恋符『マスタースパーク』!!」
 満身創痍で立ち上がるだけが限界な小悪魔に前方から放たれる魔砲を防ぐすべはなく、これで決着がつく。そう魔理沙は思っていた。だが、魔理沙は見た。小悪魔の笑いを。まるで、先ほどの自分の鏡映しのような笑みを!
「パチュリー様の意識も失っている。まぁ、知られて困るでもなし。もらうぞ、お前の魔力を!! ツァオバーバイセン!!」
 魔理沙は驚愕した。マスタースパークが無力化されたこと――ではない。それは、容易ではないだけで、過去にされたことがある。だが、目の前の小悪魔は、喰らったのだ。マスタースパークを。その魔砲に込められた魔力を、一遍も残すことなく、喰らい尽くして自らに補填した。
「何だ? 何なんだ! それは――いや、お前はなんだ!?」
 魔理沙には目の前で起きたことを認めることができなかった。何故なら――それを認めてしまえば、魔力を喰らい、奪うことができることを認めてしまえば、魔理沙はこれに勝つことができないと認めてしまうことになるからである。
 そして、ナーメンロースが答えた。
「私か? 私は禁書「薔薇十字の小剣」。察しの通り、私は対魔法使い用の魔導書だ。でも、安心してください。今回は、パチュリー様の命を果たすための緊急手段ですから、普段は使いませんよ」
 ナーメンロースは、茫然自失している魔理沙から、今回の目的である魔導書を取り、倒れているパチュリーを抱き上げ紅魔館へ飛び立った。




「で、結局何の魔導書だったんですか?」
 目的を果たし、魔導図書館に戻ったナーメンロースはパチュリーにそう尋ねた。
「ん。無機物に対して意思を与える式とか、そんなのよ」
「それは……そういうことでしたか」
「貴女が考えているようなことはないわよ。それと、今日の分よ。貴女のせいで、余分な行動が増えたわ」
「あ。ありがとうございます」
 ナーメンロースは魔導書を受け取る。ただし、これは今日入手したものではなく、そこらの魔導書をパチュリーが写した写本である。そしてこれは、ナーメンロースの晩御飯である。
「では、いただきます。さすがパチュリー様の魔力の籠った魔導書は、一味違いますね」
 ナーメンロースは項を一枚一枚ゆっくりと咀嚼する。
「毎度のことだから慣れたけれど、これって実際には魔力を食べてるのと同義よね。まだまだよくわかないことが多いわね。貴女は」
「そうですね。でも、ただの紙でも食べれることは食べれますから、魔力はおまけみたいなものですかね。欲しいですけど」
 ナーメンロースは晩御飯をもしゃもしゃと食べながら、今後のことを考えていた。
 元々彼女は、小悪魔がうっかり開けてしまったため、封印が解除されたせいで、目的らしい目的を持たずに解放されてしまった。故に、好きな本に囲まれ、平穏に過ごしていくことを目的とした。
 自身が特殊な魔導書であることを知った魔理沙がどう出るかや、幻想郷には平穏な日々などないことを、封印が解かれて浅い彼女は知りもしなかった。

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