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ネシア・アスラピスクSS

Last-modified: 2009-06-23 (火) 23:31:44 (3624d)

SS本文

(注意!) このお話にはREDMOONさんが第3回目放送の時に書いた河童のトリス=リア=ベルニクスが出てきます。以上です。では本文をお楽しみくださいですよ〜。




「……ここは……、どこだ?」
 我――ネシア・アスラピスクは見覚えの無い土地で意識を戻した。周囲を見渡せども覚えのあるものは存在しない。さらに、外気すらも違うと肌が訴えてくる。
「思い出せ。我は確か――」
 我は太陽神にして軍神であるウィツィロポチトリに仕える部族の武人にしてウィツィロポチトリに血肉を分け与えられ眷族となった者。
 此度は闇の神テスカトリポカとその眷族どもとの最後の戦いの最中、無数の眷族どもを屠っていたのだが、何やら不可思議な光を受け、気がつけばこのようなところにいた。
「記憶に問題はないようだな。ウィツィロポチトリに意見を乞おう」
 我が半身はウィツィロポチトリの血肉。そこにはウィツィロポチトリと繋がるリンクとウィツィロポチトリの意識の一部が備わっている。我はこの多重思考により、他の武人を遥かに超える功績を残してきた。
 我は血肉に意識を凝らし、ウィツィロポチトリに意見を乞おうとする。しかし、リンクが途中で途切れる。否、何かによってウィツィロポチトリとの繋がりが絶たれ、逆探知もできないようになっている。
「……まさかここは異界の内。何者が行ったかはわからんが、このままでは……」
 我が体内の内でウィツィロポチトリの血肉が暴れる。元々、我ではウィツィロポチトリの血肉を完全に制御することはできなかった。故に、普段はウィツィロポチトリが我が身の内の血肉を抑え込んでいたのだが、リンクが絶たれたことにより、制御が効かず、血肉が暴走を始めたのだ。
「ぐぅっ! このままでは、我が意識が……呑ま……れる……」
 血肉が我の意識を乗っ取る。されど我が意識が完全に失われたわけではなく、制御権が奪われる――すなわち、普段と逆になっただけのようだった。
 しかし、我の意思で肉体を動かせない事実は変わらず、血肉は我が槍と盾を持って、獲物を求めさまよい始める。
「闇ニ連ナルモノ共ヨ、ワガ槍ノ前ニ悉ク散ルガヨイ」
 血肉は夜を生きる者たちを我が愛槍「トラゾティテオトル=ミナ」を以て悉く斬り伏せる。我はその姿に疑問を覚える。ウィツィロポチトリは闇に連なるものを快くは思っていなかったが、「それもまた世界の在るべき姿故」と言いその存在を認めていた。だがしかし、今のこの姿は闇に連なるものを完全に敵視し、その存在ごと屠らんとしている。
 我がそんな疑問を抱いた時、血肉の思考が我に流れこんで来た。
(ワレハ軍神ニシテ狩猟神、故ニ狩ラナクテハナラン。太陽神故ニ闇ノ眷族ヲ、闇ニ連ナルモノ共ヲ、万物悉ク殺ス殺ス殺ス殺ス殺シ殺シ殺シ殺殺殺殺殺――――!!!!)
 我は気付いた。我が身にある血肉とその意識はウィツィロポチトリのものではある。だがしかし、それはあくまで一部分。我が身にあったのは軍神にして狩猟神の意識。そしてさらにそれが暴走の際に変質を遂げてしまったのだ。
 今の血肉の意識は闇に連なる者の滅殺を基本として動いているのだろう。ある意味それは太陽神としても間違った行動ではない。テスカトリポカとの戦いも、闇の神を退け、地上に陽光を与えるといったものなのだから。
 しばし、血肉が闇に連なるモノ共を蹴散らしていたが、突如我に意識が戻った。身体を見るが血肉は落ち着いており、先ほどの暴走時のような感じは見られず、むしろウィツィロポチトリが御していたころのような落ち着きがあった。
「……それにしても、この地がどのような所かはまだわからんな」
 血肉が闇に連なるモノ共を屠っていた間、我は意識を周囲に向けて調べていたが、わかったことは、ここが我のいた土地ではないということだけだった。
「ふむ。見知らぬ者だな。盟友……ではないようだが、困ったことがあるなら聞くぞ?」
 我がそうして悩んでいると、見知らぬ者が我に対し語りかけてきた。
「何者だ?」
「自己紹介が遅れたか。私はトリス・リア・ベルニクス、しがないエンジニアさ。さて、こっちは名乗った。次はそっちの番だ」
 トリスの名乗った者は我に対しそう言う。我はしばし悩んだ後、
「呪術的な警戒のため真名は明かせぬが、我はウィツィロポチトリに連なる眷族。故にその名からポチと呼ぶといい」
 我の答えにトリスと名乗った者はしばし呆け、次に笑いだした。
「そうかそうか! ポチか! くくくっ、随分と面白い奴だ。にしても眷族か、それならば先ほど勘違いしたのも頷けるな。ウィチ? 何とかについては私は知らんが」
「ウィツィロポチトリだ。我らが崇める神を侮辱するならば容赦はせんぞ」
「ああ、すまんな。それにしても、私が言えた義理ではないが、もう少しまともな衣装を身に纏った方がいいぞ。そそられてしまうではないか」
 トリスは私の姿を見てそう言う。今の私は皮の胸当てと腰に一枚布を巻いただけの状態だが、特に問題があるとは思わなかった。
「動きやすければ問題ない。無駄な重装はその身を遅くするだけだ。異人どもはそれを知らないからこそ我らに狩られた」
「ふむ。もしやお前は外から来たのか? 言葉の端々を取るとそう取れるが?」
 トリスは外と言った。すなわち、ここは異界の内で間違いないのだろう。故に我は頷いた。
「そうだ。我は気がつけばこの異界にいた。ここは一体何なのだ?」
「ここは幻想郷。詳しい説明もしてやるから私の家まで来い。ついでに服と……そうだな、あの試作品、お前にちょうど合うかもしれんな」
「? よくわからんがそちらの寝屋まで行こう。どこだ?」
 我はトリスに従い付いていこうとしたが、トリスはこちらを見上げ、
「まあ待て、私は100m走れば死ぬ。故に持って運んでくれ」
「……それは武人としてはどうなのだ?」
「私はエンジニアであって武人ではない。なぁに、体力以外だったら他は補って見せるさ。それこそ火力、武力であってもな」
 我はそういうトリスを摘み上げ、トリスの示した方向に移動を始めた。そして、日が昇るころにはトリスの寝屋までたどり着いていた。


「ここが主(ぬし)の寝屋か」
「そうだな。一応ここが私の家兼研究所だ。適当に服を見繕ってやるからちょっと待っていろ」
 トリスはそう言って奥へと行く。許可なく奥に行くのも辺りを見渡すのも無礼と思い我はその場でまっていると、トリスは見たこともない布で出来た何かを持ってくる。
「……何だ……? ……それは……?」
「ん? なんだってこれは服だが? まぁ確かにニッカボッカは珍しいかも知れんが、ただの通気性のいいズボンだ。動きやすい服装ならばいいんだろう?」
「これは……衣装……なのか。主がそう言うのなら信じよう」
「そうするといい。後、主とか堅苦しい呼び方はいい。トリスと呼べ」
 トリスの言葉に我は考えたが、すぐに頭を振り、
「そうだな。主は我の敵ではなさそうだ。トリス、よろしく頼む」
「ああ。うむ、私の見繕いでは少々心配だったが、問題はなさそうだな。ああ、そうだ。ちょっと待っていろ。渡したい物がある」
「渡したい物だと?」
「ああ、そうだ。恐らくお前ならば使いこなせると思う」
 トリスはそう言い、奥から一つの物体を持ち出す。異人が用いてたのとは違う金属で出来た、特異な形状のした物体。
「トリス、これは何だ?」
 我の問いにトリスは胸を張り応えた。
「ガンランスだ」
「…………何だそれは?」
「ふむ。姿や物言いなどから恐らくは知らんと思ったが、まあいい。お前にわかりやすく言うならば槍と銃を足したものだ」
 銃。確か異人が使っていたものだ。鉛の玉を火薬で高速で射出する武具。それはわかる。だが、
「槍だと? こんな形状の槍などあるものか!」
「落ち着け、槍と言ってもお前が持っているような軽歩兵用の槍ではなく。重歩兵・騎兵用の槍――即ちランスだ。と言っても理解できんだろうから。そこらは省くが、ランスの用途についてだ……」
 それからしばらく、我はトリスからランスと言う物の用途なりを聞いた。
「なるほど、そう言ったものも存在したのか。この異界に来てから我の知らぬことばかりで驚かされるな」
「異界ではなく幻想郷と呼べ。まぁ外から来た者にとっては変わらんのだろうが、私たちが気にする」
「む、そうか、すまん」
「さて、話を戻すぞ。そう言う訳でこのガンランスだが、まずは通常のランスと同じ用途、次に六連リボルバー弾装の射撃――と言っても、別に込めれればなんでも撃てる。ただの鉄の塊を突っ込んでも内部機構で加速射撃が可能だ。
 そして最後に、火力重視の一撃必殺兵器「龍激砲」だ。内部に搭載されている宝玉が云々(中略)と言う訳で放熱、チャージ分合わせて一回使用ごとに3時間の間を置く必要があるが、非常に強力な武装だ。私の趣味でもある。とまぁ、このガンランスの機能についてはこんなところか。何か質問はあるか?」
「用途はわかった。それでこの武具の名は?」
「ん? 名前か? 型番と機構名はBsp-21 G-Lance「ニル・ホーネット」とあるが、ふむ。銘は付いてなかったな。なんならお前がつけてくれないか?」
 我は、ガンランスを見て思う。もし、我がこれを使うのであれば、これもまたウィツィロポチトリの加護を得るのだろう。ならば、それに相応しき名を与えよう。
「決まったぞ。これの名は「ウィツィルン=カマトルヤカトリ」だ」
「「ウィツィルン=カマトルヤカトリ」か。聞いたことの無い言葉だな。何という意味なんだ?」
「我らの言葉で「蜂鳥の嘴」を意味する言葉だ。我は蜂鳥、故の名だ」
「そうか、そのような名を与えられたのならそれも本望だろう。しかし、蜂鳥の妖怪か。ついぞ聞いたことの無いものだな。聞いたことの無い言葉を介すし、お前は一体どこの妖怪だ?」
「どこ……か、我らは一つの土地に定住し、他との関わりを持たなかった故、その場を名称する必要を持たなかった。故にわからん。すまないな」
「ふむ、そうか。まぁいい。また何か困ったことがあればここに来い。出来ることぐらいはしてやろう」
「世話になった。トリス、感謝する」
 我はそう言い、山を下った。山を下る際、複数の警戒する視線を受けたが、あらかじめトリスから事情を聴いていたため、我は迎撃に出ず、向こうも手は下さずにそのまま山を下る事が出来た。


その後、我は幻想郷を彷徨い続け、様々な出会いと、新たに知識を得ることもあり、それらはまた別に語ることとして、我が幻想郷に来た当初の出来事の語りをここで終わりとする。


End.


おまけ とある夜雀との会話


ネシア、ミスティアのいる屋台に現れる。
ネシア「ミスティア、すまんがハツを頼む」
ミスティア、驚く。その後、怒る。
ミスティア「またそれを言うの!? うちはヤツメウナギ扱ってるんだから、ウナギ頼みなさい!」
ネシア、弁明する。
ネシア「そうは言うが、我は供物としての心臓を捕食せねばならんのでな。なんならミスティアのでも構わんが」
ミスティア、諦める。溜息を吐きながら屋台裏からハツを取り出し焼き始める。
ミスティア「あ〜、もうっ! わかったわよっ! 全くあんたが来てからウナギ以外を目当てにした客というか、内をホルモン屋と勘違いした客が来て困るんだけどね。はい、ハツよ」
ネシア、ハツを食す。その後、語りだす。
ネシア「助かる。ここでは人を狩るのも一苦労だな。供物としては人の心臓が一番好ましいのだが……、まぁ無理をして巫女や白沢に襲われるのは面倒だしな。ミスティアには感謝している。今度暇があれば一緒に歌うか?」
ミスティア、疑うような顔をする。
ミスティア「それは構わないけれど、変な踊りはやめてね。客が逃げるから」
ネシア、弁明する。
ネシア「心得ている。この間は死者の鎮魂歌を歌ったから。今度は英霊の歌でも諳んじるか」
ミスティア、納得する。その後、思案を始める。
ミスティア「そういうのだったら大歓迎よ。じゃあ私もそれに合わせたものを考えないとね」
ネシア、席を立つ。
ネシア「ではな。私は今から暫く狩りにいってくる。歌は戻った時にしよう」
ミスティア、思案をやめる。
ミスティア「気をつけてね。ここ最近の夜は物騒だし」
ネシア、軽く笑う。
ネシア「その物騒なのを相手にするのだ。そしてその物騒の中には我もいる。心配するな。今日は血肉も静やかだ。これならば我を失うこともないだろう」
ミスティア、微笑む。
ミスティア「そうね。それじゃあ頑張ってきてね」
ネシア、そのまま店から離れる。
ネシア「うむ、行ってくる」
ミスティア、見送る。


End.

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